表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/442

189話:調整いいの?

9月11日木曜日、部活前。


「ユッチユッチ、今日はちょっとしたびっくりがあるぞ?」


「何さあ、エロス」


……なんかすごい言葉を言われた気がしてしょうがないんだが……聞き間違いか?


「ユッチ、よく聞こえなかった。もう1回言って?」


「何さあ、エロス」


……なんなんだろう。ユッチが何かに目覚めた?


「……ユッチ、その発言は何だ?」


「エロいヤスを省略してエロスだあ! エロスにはぴったりだろお?」


……ものすごい不名誉なあだ名だな。

ユッチには俺=エロって言う方程式ができちゃったのか。 嫌やなあ……。


「ユッチ、そのあだ名やめね? エロスという字を1文字変えてメロスにしようよ」


「なんでえ? メロスってあれだろ? 走れメロスだろ?」


お、ユッチちゃんと読んでんじゃん。


「あんなかっこいい人はヤスには似合わないんだあ! エロスがいいんだあ!」


メロスは確かに分不相応だけどさあ……エロスはやめようよ。

俺が嫌なのもあるんだけどさあ……。


「エロス、エロス、エロス、エロスう!」


……いろいろと気付け、ユッチ。


「ユッチ、ちらっと後ろ見てみ?」


「ええ? 後ろお? ……あれえ、サツキちゃん!?」


「こんにちはユッチ先輩! 合宿以来です!」


「お久しぶりい……でも、なんでここにいるんだあ?」


「今日から部活、一緒に練習させていただくんですよ。よろしくお願いします」


「ウララ先生にもOKもらってるし。ちょっとびっくりだっただろ?」


「うん、びっくりしたあ……よろしく! サツキちゃん!」


「ユッチ、先輩らしく頑張れよ」


「うん、頑張るう! サツキちゃん、みんなが来るより先に練習始めよっかあ!」


ユッチ、めっちゃやる気になってるやん、頑張れ。

……んじゃサツキの挨拶も終わった事だし、俺も負けずに頑張ろかあ。


「ところでユッチ先輩、欲求不満ですか?」


「はあ!? サツキちゃん、何言ってるんだあ?」


「だって『エロス、エロス』って叫んでたじゃないですか? 何かあったのかなって」


「ちちち、違うよお! ボクじゃなくてヤスの事だよお!」


「ヤス兄? ヤス兄、確かに変態ですけど……さっきのはどっちかって言うとユッチ先輩が欲求不満に見えましたよ」


「それ、ほんとお!?」


「ええ、ものすごく」


「……エロスってあだ名やめるう……」


……ナイスサツキ。











ジョグが終わって現在ストレッチ中。

お、ポンポコさんもようやく来た。


「ポンポコさん、こんちは」


「すまない、ホームルームが長引いてな」


別に俺に謝る事じゃないけど。


「ポンポコさん、今日はメニュー何やろ?」


昨日は1時間半ジョグ。合宿中、いろんな所を走り回ってた時は長く感じなかったけど、学校の周りを淡々と90分回るって飽きる……。

やっぱり真面目に練習する誰かと一緒に走りてえなあ……そうすりゃ楽しくできるだろうに。


「そうだな、今日は12キロ走ろう。学校周りは坂があるから、スピードは1キロ4分40でいこう……いけるな?」


「1周820メートルで、1キロ280秒だから……1周あたり230秒か」


以前、1キロ4分で10キロ走ったんだからいけるだろう。

けど……。


「1つ質問よいでしょうか? ポンポコさん」


「ん、なんだ?」


「試合前って調整しないの? 試合に疲れを持ったまんま挑むってあんまりよろしくないのではと……」


「短距離で練習量を減らしている人はいるか?」


「短距離男子メンバー、ほとんどの人が明らかに練習量落としてる」


一緒に練習してない俺でもそう思う。きっと一緒に練習するともっと感じるんだろう。

女子メンバーはむしろ増えてる感じもする。今日サツキが練習に来て、明らかにユッチがやる気になってるから、さらに練習量、増えるんじゃないかな。


「……」


ポンポコさん、話の持っていき方を間違えたな。続けようが無くなってる。


「……まあいい。短距離の話は置いておこう」


あ、逃げた。


「今のヤス、自分で考えてみて調整をしただけで地区大会を勝ち抜いて県大会に出れる実力がついていると思うか?」


「……まだ無理かな」


「ならば、大会の事は考えずどんどん練習した方が強くなれると思わないか? 新人戦は練習の1つだと思っておいた方が気楽に走れるだろう?」


「……だな。その通りかも」


「そもそも地区予選ぐらいで調整なんぞ考えるな。ヤスの目標はどこだったか思い出せ」


……ええと、最初に決めた時は東海大会出場だったと思ってるんだけど。


「全国出場?」


「何故疑問系なんだ? 疑念を持つな。はっきりくっきりすっきりかっきり宣言しろ」


「……イエッサー」


もう何も言うまい。


「……そうだな、昼休みに屋上で叫ぼうと言っていて忘れていた。そのせいで初心を忘れたのかもしれん。明日から叫ぼうか」


「ええ!? まじでやんの!?」


「もちろんだ」


……やめよと言ってもやるのだろう。


「せめて来週からにしない? ほら、明日金曜日だし何か区切り悪いじゃん。月曜日からの方がタイミングがいいっしょ?」


「ヤス、アオちゃんの『あるある川柳』、なんだったか覚えているか?」


「覚えてない。『人間とは忘れる生き物』だよ。ポンポコさん」


合宿なんて昔の事、忘れるさ。

全部覚えてたら頭パンクしちゃうし。


「……『あしたやろ あしたになった あしたやろ』だ。その通りだと思う。きっと先延ばしにすればするほどやらなくなるものなんだ。『思い立ったが吉日』だぞ。タイミングなんて考えないで明日からやろう」


「……了解っす」


んじゃ明日から叫びますかあ……とりあえずケンとユッチは巻き込もう。


「では、短距離のサポートがあるから行く。練習頑張ってくれ」


「アイサー。ポンポコさん、毎度いろいろ教えてくれてありがと!」


うし、12キロ頑張ろ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ