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182話:ペース走

アオちゃん、ユッチ、サツキの3連コンボにとことんまでへこまされて、ちょっと暗い気分。

ウララ先生がやってきた後、ポンポコさん、ゴーヤ先輩、キビ先輩と言った残りの女子陸上部も到着。


まずはちょっとしたミーティング。


「さて、来週はとうとう新人戦です。ユッチは部活禁止期間、少しは走れてた?」


「なんとか……1時間くらいは時間見つけて走ってました」


へー、部活禁止期間でも練習してたんか。よく走る暇があったなあ。


「ユッチとアオちゃん、ヤスにとっては高校初めての大会だからね。アオちゃんとヤスは本当の初めてだから緊張しちゃうと思うけど、気楽に行きましょう」


「はい、わかりました」


「ユッチは中学の時に試合経験はある。でも、高校初って事は変わりないからね。気負いすぎないように」


「はい」


「個人種目でも、リレーでも、練習してきた事をそのままだせばそれでいいから……ちゃんとした陸上競技場で練習ができるのは今日で最後だからね。がんばりましょう!」


『はい!』


さ、頑張ろ。







「ポンポコさん、いろいろ聞いていいかい?」


「ん? 何だ?」


「まず1つ目、女子メンバーって誰が何に出場すんの?」


「何を今更……と、ヤスは聞いてないんだったか? 本人達からも聞いてないのか?」


「いや、聞いてない。俺が知ってんのはケンの種目だけ」


ケンが出るのは400mとマイル。

100とか200とかに出ると思ってたんだが……予想大はずれ。

長めの距離のが得意なんだな。


「まず、全員出場が決定しているのがリレーだな」


そりゃそうか、女子4人しかいないし。


「4継とマイル……分かるか?」


「4×100リレーと4×400リレーの事だろ? 分かるよ」


以前、アオちゃんから教えてもらった。何となく覚えてる。


「4継の走順もマイルの走順もキビ先輩、ユッチ、アオちゃん、ゴーヤ先輩だ」


ふむふむ、そうなんか。


「個人種目はゴーヤ先輩が400m。一本に絞った」


へえ、そうなんだ。

前回の大会では怪我で途中で断念になったからな。リベンジだ。


「キビ先輩が100mハードルと400mハードル。400mハードルの方がメインだな」


ふむ、ハードル種目2つか。

前回は……400mハードルは失格になったんだったな。キビ先輩もリベンジだ。


「アオちゃんは400mオンリー。リレーのみにしようかと言う話もあったが、個人種目にも経験として出ておくべきだと言う結論になった」


「何でリレーのみにしようかって案になったのさ?」


個人でもそりゃ出たいもんな。


「リレーが2種目とも決勝に行くとすると、4継の予選、決勝、マイルの予選、決勝。この時点で4回走っている。まだ始めて5ヶ月のアオちゃんがさらに個人競技で走って体力が持つかが疑問だ」


なるほど……。


「後はユッチか。ユッチは100mと200mに出場だ」


そっか。頑張って欲しい。


「聞きたいのはそんなところか?」


「ん、後今日のメニュー」


「……そうだな……ペース走をやってみるか。ペース走と言うのは分かるか?」


「……わかりません」


知識、全然増えねえなあ。


「……ペース走と言うのはだな、決められたペースで一定の距離を走る練習方法だ。有酸素運動で、持久力を高めるのはもちろんだが、決められたペースで走る事で、自分の体にペースを覚えさせると言う目的もある」


「えっと、どういう事?」


「例えば、メニューが1キロmを3分40秒のペースで16キロ走る、だとする。こういう練習を続けていけば1キロ3分40秒のペースというのが大体どれくらいと言うのが分かるだろ?」


「ふむふむ」


「それを覚える事で、試合等で、今自分が走っているペースはどのくらいなのか、と言う事が分かってくる。一流のランナーは時計を見なくても大体のタイムは分かると言うぞ」


「そうなんか……で、今日のメニューって1キロ3分40秒、16キロ?」


1キロ3分40秒って事は……5キロを18分20秒……めっちゃ速いやん。


「今のは一例だ、今日は1キロ4分、10キロで行こう」


「……できるか?」


それでも速い気がする……。


「まあ、試しにやってみよう。やってみなければ出来るか出来ないかも分からないぞ」


確かに、そりゃそうだ。


「今9時5分だから……9時40分スタートでいこうか。タイム、読み上げようか?」


「んー……一応時計あるけど、お願いしよっかな」


「了解した。アップはきちんとしとけよ」


了解っす。









体操、ジョグ、ストレッチ、流しをやって、400mのスタートラインへ。


「最初は特にタイムがずれやすいからな。200mの時点で一旦自分の時計でタイムを見てみたほうがいいぞ。1キロ4分と言う事は400m96秒、200m48秒だ」


「了解っす」


「あと、1キロごとのラップ、自分の時計でも計っておくといいぞ。私も見ておくが200m地点はちょっと遠くて大体のタイムしか計れない」


1キロ地点と2キロ地点は場所が違うもんな。

確かにこっから200メートル地点は遠いから、正確なタイム知りたいんだったら自分で計った方が良さげだな。


「それでは行くぞ。ヨーイ」


パン!


腕時計のストップウォッチを入れて、スタート。

前回のタイムトライアルでは、最初にのんびり行き過ぎて失敗したからな。今回は最初ちょっと速めに入ろう。

タッタッと一定のリズムで走る。腕の振りもちょっと強めにして……。

……今、200m。タイムはっと……45秒か。

ちょっとはええな。少しだけ落として走るか。

一旦腕をだらんとして、腕の振りをさっきよりちょっと小さめにする。

……しかし、まだ10時前のくせに、あっちいなあ……。


おし、400mを通過。タイムはどんなもんなんだろ。


「93秒! ちょっと速いぞ、少し落として行こう!」


93ー45=48……おし、この200は48で走れてる。いい感じのペースじゃないっすか。

このままのペースでっと……。



もうすぐ800m通過。さっき600mで時計をちらっと見たけど、400から600の200mは47秒で通過してた。

まだまだこのペースでいけそうだ。

いま、800メートル通過。


「95秒! いいペースで走れてるぞ! ヤス!」


おしおし。

こういうセリフ、ポンポコさんから聞けるとすっごい嬉しい。





1キロ通過。現在のタイムはっと……3分54秒か。

1キロ4分以内で走れてる。いい感じだ。








今、2キロ。まだまだ足も軽いし、腕もつらくない。

まだまだいけそうだ。


「ヤス、96秒! いいペースだぞ!」


おし、ナイスペース。

今回の1キロはと……3分59秒か。

めっちゃいい感じやん。











ふう、4キロだ。

さっきの3キロの通過は4分1秒。ちょっと遅れたけど、まだまだ大丈夫な範囲なはずだ。


「97秒! ヤス、給水だ。飲め」


了解、ポンポコさん。

ポンポコさんからペットボトルを受け取る。一気飲みすると腹痛くなるので、ちょっとだけ口に含む。

残りの水は頭からぶっかけ、ペットボトルは他の利用者の邪魔にならないように内側へ投げ捨てとこう。


「ヤス、投げすぎだ!」


あら……ポンポコさん、走って俺の放ったペットボトル、取りにいってる……。

ごめん、ポンポコさん。








今6キロ。4、5キロ地点ではラップタイム押すのを忘れてしまった。


「98秒! もう半分切ってる、頑張れ!」


サンクス、ポンポコさん。

6キロの通過は……24分5秒。3キロから6キロのラップが12分11秒か……ちょっと落ちてんな。

少し息も切れ始めてるけど……足はまだ重くない。腕も重くない。首も曲がらない。

今日はまだまだいけそうだ。ちょっと腕振り強くしてみるか。


「ヤス、力む必要はない! むしろ一旦腕をだらんとさせろ!」


ラジャ……一旦手を下ろして、ブラブラッと……少し楽になったな。

おし、腕をあげてさっきと同じように振る。


「このままファイトだ、ヤス!」








9キロ、後1キロだ。

7キロの地点でも一旦給水。暑くてほてってた体には気持ちよかった。

息もかなり切れてて、つらいけどもう残り1キロと思えばまだいける。


9キロの通過……36分6秒。7キロの通過は4分2秒、8キロの通過は4分ジャスト、この1キロは3分58秒だった。

残りを3分53秒で走れば40分切れるのか。


……切ってみてえ。


「ヤス兄、ファイトー!」


「ヤス、ファイトだあ!」


ありがと、サツキ、ユッチ。

9200m。残りは後800mだ。


「ヤス! 95秒! そのペースで走りきれ!」


……ラジャ。

スピードあげたいけど、残り200あたりまで我慢。

その辺りからならスピードをあげてもいいだろ。






9600m通過。

ラスト400m!


「92秒! いい感じだぞ! 残り400だ!」


お、ペースあがってきてるじゃん!

まだいけそうだし、あと少し行ったらもうちょっとペースあげてみよか。



9800m、後200。もうゴールは目の前だ。

腕を大きく振って、ペースアップ。


「ラストだ! 頑張れヤス!」


おう、頑張ります!


「39分51、52、53、54、55、56」


ゴール!

おし! 40分切れた!


……お? 今日はタイムトライアルしたときみたいにぶっ倒れないな。

このままジョグしにいく事も出来そうだ……行くか。


テッテケテッテケとジョグ開始。

……まだ短距離は練習中か。

これからリレーのバトン練習っぽい。


「ヤス、お疲れさまあ。前より速くなったねえ」


「お……ユッチ、それほんと?」


「ほんとだよお」


「うわ、めっちゃ嬉しいっす。ありがと!」


練習の成果ってやつ? ホント嬉し。









3周ほどダウンジョグをしてポンポコさんの元へ。

そのままその場でストレッチ開始。


「ヤス、お疲れ。調子はどうだ?」


「余裕って訳じゃないけど、まだまだいけそう」


「……それを余裕と言うのではないか?」


……確かに。


「10キロの正式タイムは39分57秒。1キロごとは3分54、3分59、4分1、4分4、4分4、4分4、4分2、4分ジャスト、3分59、3分50だ」


おお、ラストあがってんなあ。


「中盤ちょっと中だるみしたが、今日の段階では上出来だろう……ここまで出来るとも思ってなかったしな」


……何かボソッとひどい事言った。


「ってか、タイムトライアル5000mの時よりめっちゃタイムのびたな」


あの時は5000mを21分57秒。×2したら43分54秒。単純計算でも4分速くなってる。

タイムって言う数字が出ると実感が湧くなあ。


「まあ、あの日はすごく暑く、最初に突っ込みすぎてばててたというのもあるが……それでもヤスの実力は伸びてると思うぞ」


「まじ!?」


ポンポコさんから直接そんなセリフが聞けるとは……。


「夏休み期間中、かなりの距離を走り込んだからな。8月だけでも300キロくらいは走ったのではないか?」


「ええと……多分そんくらい」


もうちょっと走った気もするけど。

ポンポコさんからメニューを教えてもらうようになったのがちょうどその頃かな。


「それだけ走れば地力もついてくる。今後ももっと走るぞ」


なんか、生き生きしてんなあ。ポンポコさん。


「まあ、まだまだ他のランナーと争えるレベルには達していないがな。ようやくスタート地点に立ったところか」


……褒めて落とすのやめようよ。ポンポコさん。


「スタートが遅くても、頑張れば他の選手にも追いつき、勝てるようになる。頑張ろう、ヤス」


「おお、頑張ります」


おし、頑張ろう。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
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