181話:ゴロゴロ
今日は9月6日土曜日、快晴だ。
昨日あのままケンは泊まってった。今日はそのまま兄貴のアパートへ行くらしい。
俺はと言うと、サツキと陸上競技場へ部活。
「ヤス兄、タータントラックの陸上競技場で走るのと土のグラウンドで走るのってそんなに違う?」
あ、そっか。サツキはまだタータントラックで走った事無いんだっけ。
合宿はタータントラックで練習する日にどしゃ降りだったからなあ。
「んー……俺はそんなに実感はわかないけど……ユッチいわく、すごい変わる。特にスパイクを履いて走ると本当に違うって言ってたぞ」
俺はあんまり分かんないんだけど……短距離の方がタータントラックの恩恵を受けるのかな。
まあ、時間走とか全力で走らず長い距離を走るだけじゃ、分からんのかも。
「そうなんだ、でも私スパイク持ってないんだけど」
「普通のアップシューズでも結構変わるんだって。慣れないうちはスパイク履くと感覚が違うから走りづらいかもって言ってたぞ」
「そんなもんなの?」
「やっぱりスパイクの裏についてるピンがあると結構変わるもんなんじゃん?」
ユッチに見せてもらった事があるんだけど、短距離ってあんなピンが長いのを付けて走れるんだろうかと思ってしまった。
「ま、楽しみにしとけ」
「あいあい、ヤス兄」
「わ、よくテレビで見るトラックだー! すごいねヤス兄、こんなところで練習できるんだね!」
「だよな、俺も初めて見たときびっくりした。場所によってはすっごい有名選手が練習してたりするんだって」
俺が来た期間では見た事無いけど。
「わ、わ、芝だよヤス兄! ゴロゴロしよーよ!」
「……それは何か違わね?」
陸上競技場の芝はゴロゴロするためじゃなくて、槍投げとか投擲種目のためのだった気もするんだが。
「いいじゃん、気持ち良さそうだもん」
「ん、まあ確かにそうなんだけどな」
芝生まで行くと暑いんです。みんなが来るの待ってる間は日陰にいたいんです。
「ヤス兄、そんな日陰にいちゃ駄目だよ! ヤス兄の名前なんだと思ってるの?」
「……康明だけど?」
それがどうかしたか?
「でしょ? 『明』るい日射しをめいいっぱい浴びて健『康』に過ごそう! だよ。ひなたに来ようよ」
「絶対違うし」
元気に明るく。これだけだった気がするが。
「まあいいじゃん、こっち来てゴロゴロしようよ」
「なんだよそれ、無理矢理だなあ」
……まあいいか。んじゃ、サツキの隣にお邪魔してっと。
「お邪魔しまーす」
「どぞどぞ」
ポカポカの朝日、こういう日に布団を干しとくと気持ちがええだろうなあ。
やっぱり太陽のしたって言うのは気持ちいいな。
ゴロゴロー、ゴロゴロー。
「これくらいの時間ならそんなに暑くないねー」
「そだなー、暖かいってくらいかな。芝生が気持ちいいな」
「だねー。ひなたぼっこしながら寝てる人の気持ちがわかるねー」
「サツキはいっつも寝てるけどなー」
「ひどいー、こんな日はヤス兄も一緒になって寝てるじゃん」
「まー、そーなんだけどなー」
日向の下でゴロゴロしてると何となくのんびりした気分になって、口調も間延びしてしまう。
まー、いっかー。
ゴロゴロー、ゴロゴロー。
時々転がってみる。サツキも一緒になって転がってる。
「いたっ! ヤス兄ー、ぶつかってこないでよー」
「ごめんごめん、気付いたらぶつかっちゃった」
「気にしてなーい。一緒に転がろー」
「あいさー」
ゴロゴロー、ゴロゴロー。
「……おはようございます、何やってるんですか?」
「おはよー、アオちゃん。何してるって、朝の運動だよなー、サツキ」
「そー、朝の運動だよね、ヤス兄」
「はあ、そうですか。……とりあえず、起きてお互いを見たらどうですか?」
ん? 何言ってんだアオちゃんは。
「サツキ、俺どうかなってる?」
「ヤス兄、私どうかしたかな?」
……。
「妖怪芝女だ! 芝女め、サツキはどこへやった!?」
「ザ・芝人間がいる! 芝人間、ヤス兄を返せ!」
「……ボケなくていいですから、早く芝落としましょうよ」
……そこはノリましょうよ。アオちゃん。
お互いに自分の手が届かないところは相手に払ってもらって、ようやく元通りになった。
「うん、気持ちよかったな。サツキ」
「そだね、気持ちよかったね」
「……おはよお。何が気持ちよかったんだあ?」
お、ユッチ到着。夏休みの宿題開き直ってたら、終わるまで部活禁止令が出されてたユッチ。
9月4日までに全てを終わらせたのにはびっくりした。ただそのせいか昨日までいつも眠そうな顔してた。今日もまだ寝ぼけ顔。
「おはようございますユッチ先輩、ヤス兄とゴロゴロと寝たのが気持ちよかったんです」
「ふわあ……ヤスと寝て気持ちよかったんだあ。どんなのしたのお?」
……絶対に寝ぼけてるし。意味が変わって聞こえるんだけど。
「朝の運動、でしたっけ?」
「……朝のうんどお? 合宿の時の遺伝で……はあ!?」
ユッチ、それとは意味違うから!
「ヤスう! お前は何考えてるんだあ!」
「話を聞け。寝たって言うのはここでだぞ」
「ここで寝たって……、神聖な陸上競技場をなんだと思ってるんだあ!」
「違う! 誰がここでそんな事するか!」
「別のところ!?」
「……違うって、ユッチって実はエロエロだろ? 何でいっつもそんな風に脳内変換されるんだよ!」
「ヤス君の方がそんな感じですけどね」
……アオちゃん、変なチャチャ入れない。
「ボクはスケベじゃない! ヤスのスケベ! スケベ! スケベエ!」
……3連続で言われるとへこむ。
「ヤス兄がスケベなのは事実だけどね」
……サツキ、そんな事言われたから余計へこんだ。
おはようございます、ルーバランです。
……全く別の話を書くつもりだったんですが、いつの間にかこんな話になってました。
……自分ってエロイな。
それでは今後ともよろしくです。