175話:合宿で得た物、無くした物
今日は8月27日水曜日。合宿の翌日だ。
……昨日は家に帰った後、サツキと2人でゴロンと布団に転がったら朝まで目が覚めなかった。ま、6時にちゃんと起きてしまうのは習性かな?
毎日しっかり寝てたつもりだったんだけど、かなり疲れてたんだなあ。
「どっこいしょっと……」
隣でまだ寝てるサツキを起こさんようにこっそりと起き上がって立つ。
体がそこら中痛い。まだ自分の体は休息をすごく求めてる。
しかし、サツキは良いとしても父さんと母さんの朝食の準備をしないと……俺がいなくても余裕余裕って言ってたけど、どうしてたんだろ?
のそのそと台所に向かう。
「……まじか……」
台所の凄惨な状況につい立ち尽くしてしまった。
45リットルゴミ袋が1つどんと置かれていて、それ以外にも小さいコンビニの袋がそこら中にぽんぽん放置されている。なんか生ゴミと牛乳パックとペットボトルがごちゃ混ぜに入ってるんだけど、あれってやっぱり分別しないと駄目か? 駄目なんだろうなあ……。
使ったっぽい茶碗とか皿が洗われず、流しのとこに積み上げられてるのを見ると、洗う気が……。
明らかに2〜3日分よりも多く溜まってるって事は日曜日にも皿洗いしなかったんだろうな。日曜日、もしかして仕事だったんかも。
……父さん、母さん……忙しいのは知ってるけど……。
見なかった事にして別の部屋に行って寝たいけど、後回しにしてもきっと片付けんの自分だもんなあ……。
「やるかあ……」
朝飯作るだけのつもりだったのに、皿洗いとゴミ捨てが待っているとは……こんなの予想できねえよ。
「終わった! やっと終わった!」
まさか30分もかかるとは……全く、こびりついた汚れは取るのがめんどい。
「次は朝飯ー、何があるかなー」
冷蔵庫をパカッと開けてみる。
「……」
何もない。1週間前には何かあったはずなのに。
冷凍庫にも野菜室にも何もない。見事に空っぽ。あるのは調味料とか、ジャムみたいな物だけ。
「そりゃねえよ……卵も牛乳すらないじゃん」
まあ、腐るもんも結構あったからしょうがないにしても、これで朝飯何を作れと言うのだろう……父さんも母さんも、きっと朝はコンビニで済ませてたな。
……他をいろいろ見て回ったら、そば、乾麺、スパゲッティ、インスタントカレー、ミートソース、モモ缶……何とかなりそう。
「うん、カレーでいっか」
何か手抜き感がありありだけど、たまにはいっか。
ご飯炊いておく間に、洗濯場へ。
「……」
父さん、母さん……どんなに忙しくても日曜日は休みを取ってください。
この洗濯物の山は一体なんなんだろう?
俺にこれの片付け、全部やれって事なんだろうか?
合宿に持ってったシャツとかも全部洗っときたいし……。
「4回くらい回せばいいかあ……」
ぎゅうぎゅう詰めにすると、あんまり汚れとれないしなあ……。
「とまあ、今日起きてからは1日中こんな事をやってた」
ホント何やってたんだろうね。あの後も掃除、買い物、布団干しとそんな事ばっかりやってました。
今はケンとバイトの帰り道。バイトはメチャクチャしんどかった。家でクーラーが効いた中どうでもいいようなテレビを見てゴロゴロしてたいのに延々とプールの監視をしてなきゃいけないって……。
全く、合宿の次の日までバイトなくしてもらっとけばよかったな。
「ヤスっていつでも一人暮らしできそうだよな」
「いやあ、きっと俺、一人暮らしだったら掃除も料理もやらなくなるんじゃないかなあ? 俺1人なら別に適当でいっかあって思いそう」
まあ、サツキや両親と別々に暮らすなんて全然考えてないけど。
「そういやサツキちゃんは起きたんか?」
「俺がバイト行く前はまだ寝てた。今日は1日中寝てんじゃない?」
「サツキちゃんならありえそうだな」
だよなあ。
「けど、こんな事ばっかりやってた1日だったんだけど、合宿が終わって日常的な生活が戻ってくると何かほっとするな。ケンもそう思わないか?」
「そうか? 何となくもう終わっちゃったんかあ……って寂しく思わねえ? 俺としては合宿、めっちゃきつかったけど、めっちゃ楽しかったからさ。もっと続いたらなあと思う訳だ」
「んー……俺はあんまり寂しくはねえなあ。確かに楽しかったけど、そろそろ普通の生活が恋しいと言うか……」
「ヤス、それはホームシックにかかっていたと言うやつか?」
そうなのか?
……たった6日でホームシックってどんだけ自分寂しがりや?
「合宿でヤスが得た物はホームシックだったって訳だ」
そんなのいらねえ!
「ヤス、家に帰ったら、もう1個きっと得た物があるぞ。いや、なくした物かな……」
なんだその意味深な言葉は。すごい気になるだろ!
「なくしたー!!」
「ヤス兄、突然どうしたの?」
ようやくサツキも起きた。今サツキは居間でゴロゴロしてる。
「体重をなくした!」
「えーっと……わけ分からないよ?」
「いや、合宿行く前は俺62キロあったんだよ」
「うんうん、それで?」
「風呂上がりに体重計のったら57キロになってた! 5キロ無くした!」
びっくりだ。こんなに体重が減っちゃってるなんて。
「サツキも乗ってみろよ。絶対やせてるから!」
「いいけど……ヤス兄、絶対見ないでよ」
「見ない見ない、気にしないで乗れって」
…………。
お、戻ってきた。
「……私、全く変わってなかった」
「……あれ?」
「ヤス兄、きっと食べてないだけでしょ」
「いやいや! そんな事無いって! 食べたけどやせたんだって!」
「……ダイエットしている女性への宣戦布告?」
いやいや、違うって! 誰もそんな事言ってないって!
……やばい、めっちゃサツキの機嫌が悪くなってきてるんだけど。
「大丈夫! サツキ今でもやせてるから! もうちょっと脂肪つけた方がいいんじゃとか思ったり……」
「……それって胸がないって言いたいんだよね?」
しもた、変な言い方してしまった。
……完全に機嫌を損ねてしまったなあ。サツキの奴、自分の部屋に戻っちゃった。
ええと……結局、合宿で得たもの、ホームシック。
合宿でなくしたもの、体重、サツキの機嫌………………へこむなあ。
おはようございます、ルーバランです。
真面目っぽいタイトルで、中身はあんまり真面目じゃないです。
私は合宿とか、旅行が終わった後家に帰るとホッとする人です。皆さんはどうですか?
それでは。