154話:ポコポン昼ドラ劇場
「ポンポコ、お前のおなかもずいぶん大きくなりましたね」
「そうだな……もうすぐ出産予定日だからな。どんな子供が生まれるか楽しみだ」
「ようやく生まれた私たちの子ですから。きっとポンポコに似てかわいい子が生まれてきますね」
「そうか……っつつつつつ……」
「ど、どうしたんですか!? ポンポコ!」
「痛いのだ! いたたたたた……」
「も、もしかして陣痛ですか!? まだ予定日まで2週間あるって言ってませんでしたか!?」
「し、しらん……アオ、電話してくれないか!?」
「あ、はい!」
「はあ、はあ、はあ」
「頑張ってください! ほら、ひっひっふー、ひっひっふー!」
「すぅ……ひっひっふー! ひっひっふー! ひっひっふー! ひっひっふー!」
「…………わ、私も緊張してきちゃいました……が、がんばって」
「ひっひっふーうん、ひっひっふーうん、ひっひっひっひぃひぃひぃ……」
「あ、あたま出てきましたよ! あと少しです!」
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ! 痛い痛いいいいいいいい!!!」
「ほ、ほぎゃー!! ほぎゃーー!!! ほぎゃあ!!!」
……俺は何でこんなことを叫んでんだろう。
「生まれましたよ! でっかな女の子です!」
……俺、男なんだからそこは男にしてくれよ。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「ほらあ……かわいいでちゅねー」
「ほぎゃ、ほぎゃ」
「わ、もう返事しましたよ」
ただ泣いているだけ……。
「ほぎゃああああ!!!」
「元気な子ですね。はい、ポンポコも抱いてみてください」
「ああ……でかいな」
「ほぎゃあ!!」
「ほんとにでかいな……」
しげしげと見ながら言わないで……。
「おめでとうございます、今日で退院ですね」
「……ああ」
「はい、診断書みたいですね」
アオちゃんが紙を持った。
「……あれ?」
「どうした?」
「……この子、O型なんですが」
「それがどうかしたか?」
「私AB型ですよ。ポンポコは」
「……Bだが」
「AB型とB型から生まれるのはA型、B型、AB型だけですよ! O型の子なんて生まれないですよ」
すっげえ説明的なセリフ。
「ほぎゃ」
「……そうか、Oなのか」
「ポンポコ、誰との子ですか!」
「……」
「ほぎゃほぎゃ」
「……ポンポコ、言いなさい」
「ほぎゃあ」
「これは……ケンとの子だ」
あれ? そなの? そんな設定だったっけ?
「なるほど……ケンはA型ですから、O型の子が産まれても不思議じゃないですね……いつの間にですか?」
「……家庭を顧みないお前にはうんざりだったんだ」
なに語りだしてんだ。
「ほぎゃあ」
なんとなく言ってみる。空気読んでねえなあ。
「し、仕方ないじゃないですか! 仕事仕事が大変だったんですから」
「もうその言い訳はいい。お前が不倫をしていることは知っているのだから」
「な、何の話ですか!?」
「知っている。お前がゴーヤと付き合っていることは」
「へ? 私?」
おいおい、先輩まで巻き込むなよ。
「し、知りませんよ」
「今日もこの後会うのだろ? 知っているぞ、病院の裏で待ってることを」
「な、何のことですか?」
「だったら電話してみるか?」
「好きにしたらいいじゃないですか」
TRRRRR、TRRRRR
ほんとにPHS使うんかい。
「もしもし、アオ! 電話待ってたよ! 今からどこに行こう!」
ゴーヤ先輩、ノリよすぎ。
「……」
「どうしたアオ。返事がないよ」
「ほぎゃあ!!」
空気読まずに泣いてみる。
「……今のって、赤ちゃん? も、もしかしてそこに奥さんいるの?」
プツッ。
「……」
「……」
「ほぎゃ」
「……で?」
「……」
「……言う事はなしか」
「ぽ、ポンポコだってケンと浮気したんじゃないですか! ど、同罪ですよ」
「……そうだな、同罪だ。……私たち、今日で別れよう」
あ、あれ? そ、そんな結末っすか?
「そ、そんなこと言っていいんですか? その子のお金はどうするんです?」
「なんとか育てるさ、いざとなったら私1人で育ててみせる、な?」
な、と俺に言われても。
「ほぎゃほぎゃ」
「よしよし……では行くか」
「ま、まってください、もう一度話し合いましょう」
「さよなら……もう会うこともないな」
ポンポコさんと俺、退場。
「ど……どうしてこんな事になってしまったのでしょう……それもこれもあの子がO型だったせいです。こうなったらケンを殺して私も死にます!」
アオちゃん、シャープペンシルで寝てるケンの首筋にプスリ。
「いってえ!! 何すんだよ!」
……演技できない男だな、ケン。
「どうも、ありがとうございましたあ!」
以上、ポコポン劇団でした。