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143話:合宿1日目、午前練習

「お前が俺らと一緒に練習したがってないのは知ってるから。別にこの合宿でも好きにしたら良いよ」


長距離の先輩に短距離と練習するって伝えたときの一言。

ものすごい突き放されてしまったなあ……。


「……隠してたつもりなんだけどなあ」


ちょっとへこむ。


「いや、ヤスは分かりやすすぎだったぞ」


「ケン、まじ!?」


「まじまじ。やっぱりヤスにはポーカーフェイスは無理っぽいな」


そだな、俺には無理だ……やましい事はしないようにしよ。

長距離連中とはギスギス感があってちょっとやだけど……まあ、頑張りたいし、好きにさせてもらいます。









「さて! それでは短距離の練習を始めます」


ういうい、了解です。ゴーヤ先輩。


「まずはいつも通りアップをしましょう、ヤス君とサツキちゃんは後ろからついてきといてね」


『はーい』


テケテケとジョグ開始。

ここの青少年交流の家のグラウンドは土のグラウンドだ。

試合が行われるような陸上競技場にあるゴムゴムのタータントラックで練習したいと思うなら、別の所をかりにいかないと駄目らしい。


短距離は合宿の間のうち、1日だけ行くって言ってたかな。


「ヤス君! ジョグだからって適当に走らない! 足を思いっきりあげる必要は無いけど、きちんと足をあげて着地する! 足をずって走るなんて、普段の練習でも絶対しないでしょ!?」


ウララ先生から叱責が飛ぶ。

……確かに。

ゆっくりとしたペースだから足をズッ、ズッ、って地面を滑らせてた。

……よし、これでいいな。


「ヤス君! 前かがみにならない! 足下を見るからそうなるんだよ! 前を見て走りなさい!」


前かがみ? そんな風になってんの?

……前かがみになるとあかんのか?


「ヤス君、前かがみになると足が出ないんだよ。体全体で前かがみになれば、自然と前に出てくけど、ヤス君の場合は腰が曲がってるでしょ?」


あ、そうなんだ……そう言えば、『ちびまる子ちゃん』でも同じ話があったなあ。

……すげえな、『ちびまる子ちゃん』。

よいしょ、腰を伸ばしてっと。




……あ、そうそう腕は縦に振るんだったな。


「ヤス君! 腕振りに関して注意はしたけど、力はいりすぎだよ! 5000m走るのに、そんなに力んでたらもたないよ! 腕を振る方向はまっすぐに振るのが良いけど、肩の力抜いて走りなさい!」


そかそか。リラックス、リラックス。


「ヤスく―ん! 私確かに力抜けって言ったけど! 体傾けないで! 右に傾いてるよ!」


うん、了解。 背筋を伸ばしてっと。


「だから力むなー!!!」


……あう。












ジョグが終わって、ストレッチ中、ウララ先生とポンポコさんの声が聞こえてきた。


「ウララ先生、だから言ったではないですか。ヤスに教え込むのは骨が折れると」


「ここまでとは思わなかったわ。ポンポコさん、あなたの感想を軽く受け止めてた……」


「直すといい所が多すぎるから、そうなるのだな……」


「そうね……最低限、あれさえなおれば……」


……なんかすんごい批判されてるんですが。


「ヤス、気にするな」


「気にするよ!」


けちょんけちょんに言いおって。


「違う違う、今回は私が悪かったのよ」


なんで?


「一度にいろいろ言い過ぎました。走りながらじゃ、そんなに気が回らないよね」


そういやそうか。


「後で、走ってる時のビデオでも見せつつ、注意すればよかった」


「ビデオとってるんですか?」


「ミドリちゃんがとってるよ」


あ、アオちゃんの妹さんね。


「これからフォームを直す練習するけど、今日ヤス君が意識するのは1個だけ!」


「なんですか?」


「体をまっすぐにする! それだけ!」


「え? それだけで良いんですか? 一番最初に注意されたのは腕振りでしたけど」


「ヤス君、マラソン中継見た事ある?」


「ありますけど?」


「みんながみんな同じ腕振りしてた?」


「覚えてません」


「…………」


こう返答したら、困るのは分かってたけど。本当に覚えてないんだからしょうがない。

ウララ先生の中では『そう言えば、してないですね』『でしょ、腕振りを意識するのも大事だけど……』みたいな話を続けるつもりだったんだろうなあ。


「ま、まあ今回は腕振りまで意識しなくて良いわよ。1個1個覚えていけば良いの。まずは体をまっすぐに!」


おれってそんなに曲がってる?


「ヤスは息が切れてくると必ず右に曲がって前かがみになる。辛いのは分かるが、スピードが落ちても良いから、体をまっすぐにして右に倒れないようにな」


了解、ポンポコさん。


「あと……意識しすぎて力むなよ」


こらポンポコさん! 1個じゃなかったんかい!














1時間半程度、延々といろいろした。

モモアゲ、腰振り、体幹、腕振り……普段と全然違う動きばっかりしたもんだから体が痛い。

ついでにサツキもへろへろになってる。初練習でいきなり合宿参加はきついんじゃないのか?


「ヤス、サツキちゃん、まだ初日の午前なんだけど……大丈夫か?」


「大丈夫大丈夫、午後練まで休めば何とかなるさ、な、サツキ!」


「そうだよ! まだまだいける!」


「そっかな? ってか午前練、まだ終わりじゃないぞ」


『へ?』


そなの?


「はい、一旦こっち注目!」


ウララ先生の説明が入る。


「さて、今回、ドリルの中で走るフォームを意識しましたね。それを意識しながらまずは流し100m5本! ……全力で走るのは午後にしときましょう」


ま、まあそれくらいなら。


「その後、いつも通り筋トレ3セット! あ、ヤス君とサツキちゃんは始めてだったかな? 腕立て30、腹筋各種20、背筋50を3セットね」


はう!? ……って腹筋『各種』って何?


「サツキちゃんは1セットか2セットにしておいた方がいいよ」


「嫌です! やります!」


「……えと、無理しないでね」


忠告聞いとけ! サツキ!


「ダウンして、終了です。昼食まで時間が無いし、テキパキとね!」


『はいっ!』


短距離陣……特に女子、元気だ。







流し5本の後、筋トレ開始。

ポンポコさんが掛け声を出す。


「まずは腕立て、よーい1!」


ふんっ!


「2!」


ふんっ!


……。


「30!」


「ふんがっ!」


どだっ!


「次、腹筋用意! 2人1組になって!」


ちょっと時間あけてよう……。

って腹筋で2人1組? 足を持つのか?


「ヤスはゴーヤ先輩と組んでくれ、サツキはキビ先輩と」


ん、了解。


まずは普通に足持ってもらって20回。

さらに、ひねって左右にそれぞれ20回。


ひねると腹筋だけでなく、側筋もつくとか。

側筋ってのは腹の横の部分な。


サツキとの夜練の時に腹筋はなれてるから、余裕余裕。


「次!」


あ、まだあるんだ。


「ヤスは初めてだよね。まずはヤスが下になろっか」


「はい」


「えっと、まず仰向けになって寝転んで」


はいはい、了解です。

ごろんっとな。


「って!? ゴゴゴゴゴゴゴーヤ先輩!?」


いきなり俺の顔をまたいできた。


「ん? どっかした?」


いやいや! この格好変だろ!?

……えっとだな、


頭□□□□□足


こんな感じで寝転んでたら


ゴーヤ先輩が


■頭□□□□□足

ゴーヤ先輩


こんな感じに立ったのだ。


「変な事気にしちゃ駄目だよー、気にしたら負けだよー」


そ、そうなのか?


「それじゃ、私の足首もって」


「あ、あい」


こわごわとつかむ。


「しっかり握らないと辛いよー」


「あい!」


がしっとつかむ。


「両足あげてー」


ういー。


「私が思いっきり手で足を押すから、地面に落とさずにまた足あげてね」


了解っす。


「1!」


「うおっ!?」


そんなに思いっきり押すんか!?


「2!」


「ふんっ!」


「3!」


「まだまだ!」


できるできる!


「右!」


「ふぎゃっ!?」


へっ? まっすぐ押されるだけじゃないの!?

右キツっ!


「左っ!」


「ぎゃん!」


そんな思いっきり押さないで!


「右っ!」


左右交互にやるのか。


「右っ!」


また右!? 油断したっ!


「まっすぐ!」


きっつい!


「……あれ? 今何回したっけ?」


ゴーヤ先輩! 覚えてないんすか!?


「まあ、多分3回くらいだよね」


絶対もっとやってるっす!

あとで覚えてろ! ゴーヤ先輩!


















し、しんどかった……3セット、何とかやりきったぞ……ダウンのジョギングも終わってストレッチ中。

向こうではサツキが伸びてる……ゴーヤ先輩とキビ先輩、スパルタじゃね?


「ヤス、始めての短距離との練習はどうだった?」


「ポンポコさん。……しんどかったっす、でも楽しかった」


いい汗かいたって気分。


「うむ、頑張ってたぞ」


ありがとっす。


「水をさすようで悪いのだが、腕立て伏せなのだが」


あれ? なんかあったか?


「次回からは腕立て伏せの時、あごをつける。それで、あごをあげたときは腕もきちんと伸ばすんだ」


「……ポンポコさん、まじ?」


「まじだ」


「掛け声に間に合わねえっすよ」


「最初は数をこなせなくてもいい。適当に手を抜くと、結局自分が損をする」


げ、短距離ってそんなにきちんとやってんの?


「……耳を貸せ、ヤス」


ん? なんだ?


「周りをきょろきょろ見るな……確かに短距離でも手を抜いている人が結構いる」


……そなのか。


「人の目を盗んで休もうとか、筋トレ適当にやったりとかだな」


ふむふむ。


「だが、だからといって『あいつもそうやってる』ってヤスまで適当になったら、損するのは自分だ、後々結果に現れてくるぞ」


「そりゃそう言うものだろ? そいつらにも言ってやればわかるんじゃない?」


誰か知らんけど。


「ヤスは前にそんな経験をしたから分かるのだ」


……ああ、野球時代の話な。


「今までそんな経験が無いと分からないものだ。私は絶対に新人戦から変わると思っているから今は何も言わない」


「何だそれ?」


「人に言われても、気付かんものだろ? 新人戦でタイムという事実が出てしまえば、このままじゃいかんと思うはずだ」


ふむ、確かにな。


「……ストレッチ終わったか? では昼食に行くか?」


「うい、いこか」


「合宿中のメニューはまた一兄と考えたぞ」


「毎度毎度ありがと、ポンポコさん」


どうすればいいか困ってたし、本当に助かります。

でも……午前で結構ばててるんだけど……午後練、できっかなあ。


おはようございます、ルーバランです。


昨日書くつもりだったんですが、全国高校駅伝。


男子の佐久長聖高校、速かったですね。

女子は愛知の豊川高校が優勝してました。


個人的にすごいなと思ってしまったのが、女子の豊川工業高校だったりします。


県立な上、工業高校ですから、女子の人数、そもそも全然いないんですよ。調べたら全校女子生徒数26人。


そのなかで、陸上部女子ってたった8人しかいなかったです。

たった8人という中、タスキをつないで。


県駅伝では出場権は得られなかったけど、東海大会で準優勝を果たして、全国大会に出場。


……すんごいなあ。

今後も頑張って欲しいです。


それでは!

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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