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140話:突撃、山本さんちの晩ご飯

ピンポーン


山本さんち、ヤマピョンの家のインターフォンを押す。


「はいはい」


お? 結構おばあちゃんっぽい声。


「ども、ヤマピョンの同級生のヤスですが……」


「ヤマピョン……?」


やば、ヤマピョンじゃわからんよな。

……本名なんだっけ?


「……武の事かい?」


「そうそう! 武君の同級生のヤスってもんです」


よかった、言ってくれて。


「はいはい、ちょっと待っててなあ」


よし、突然の訪問だったけど何とかなったな。


「ヤス兄、今のってほとんど『オレオレ詐欺』だよね」


「え? そうだった?」


「だって、むこうに名前を言ってもらうのを待ってるんだもん」


「あ……」


そう言われれば……まずかったかな。


「味をしめてだまさないでね、ヤス兄」


「しないって!」


俺はそんなに要領良くないって。


「そだね、ヤス兄って、不器用だもん、出来なくていいよね」


「……」


今、サツキには褒められたんだろうか? けなされたんだろうか?
















と言う訳で、山本さんちにお邪魔いたしました。

まさに晩ご飯が始まる所に来たっぽくて、もうヤマピョンの両親と祖母、ヤマピョンが食卓に座ってる。


『お邪魔しまーす』


……ってか俺ら、この瞬間ってほんとにお邪魔っぽいよなー。


「……あ、ヤス……」


「ヤマピョン、こんばんはっす」


「……こ、こんばんは……」


ありゃ、やっぱりどもってんなあ……。

もしや、家でもこんな感じ?


「初めまして、ヤス兄の妹のサツキです」


「……あ……えと……」


頑張れ、ヤマピョン。


「ああ、この子は人見知りが激しくてねえ……武って言うんで、仲良くしてなあ」


……あう、言われた。

ヤマピョンに頑張って欲しかったんだけど。


「……や、ヤス……?」


「うい? 何?」


「……えと……何……?」


……何って!? 俺が聞きたいっすよ。


「ほらほら、ヤス兄が何で来たか言わないと駄目じゃん」


「あ、そか」


忘れてた。そりゃ何の用事って聞くよな。


「ヤマピョン。部活、来ない?」


「…………………………………………………や」


や、そんな一言で拒絶をしなくても。


「まあまあ、確かに上級生の先輩達はやってらんないかと思うけどさあ」


「……」


「走りたいように走らせてくれないし」


俺は『ネコミミ』つけて、やりたいようにやりまくってるが。


「他にも世の中理不尽な事なんてそこら中にいっぱいある訳っすよ。先輩のありえない行動くらい大したこっちゃないってぐらい」


「何か実感こもってるね、ヤス兄」


「そりゃそうだ、先輩の行動なんて大した事無いさ」


「例えば?」


「父さんと母さんの話とか聞いてりゃなあ。めちゃくちゃスケジュールが厳しい無理な発注が来るとか、納期の1週間前に営業の人が突然仕様の変更を軽く引き受けてきて、泣く泣く作業したり。 んで帰ってくるのが夜中の2時〜3時になったり……」


「それでいて、『新入社員は毎日遅刻してくる!』って嘆いてたね。 『19時は帰らせてんのにー!』って」


「んで、遅刻しないでって注意したら『こんな職場やってらんない!!』ってドロンしたり」


「25過ぎてそれは無いよねー。お前はキレる10代か! って」


「そんなこんなで8月は日曜日潰れてた日もあったもんなあ……くそう、せっかくの家族の団らんの時間を」


「他にもニュース見てるとすごいよね」


「まあ、いろいろあるよなー」


「モンスターペアレント!」


「あんな人ら、実在するんか?」


「個人情報だだ漏れ!」


「信頼して届けてた個人情報がだだもれって何だ! って感じだよな。ってか個人情報が入りまくってるパソコンでどんな人ともファイルの共有が出来るソフト使ってたって……確かWinnyだったよな」


「お医者さんがいない!」


「小児科、無いの辛いよなー」


「産婦人科もだよ。無いの本当に困るよね……」


「は!? サツキはまだ早いだろ!?」


「あはは、当たり前じゃん。将来の話だって。びっくりしすぎだよ」


だよな……よかった! 本当によかった! 本当に本当によかった!


「ヤス兄のが料理が上手!」


「……それのどこが理不尽?」


「私の立場が無いじゃん!」


知るかい! そもそもそんな事ないと思うんだけど。


「……ま、こんな感じで理不尽な事なんてそこら中に転がってる訳さ」


『……』


あら? 話が逸れすぎたか?

……しまったな。ヤマピョン一家がじっと俺らを見てる。


「と言う訳で、ヤマピョンもあれぐらいの理不尽に負けちゃ駄目だぞ、いつからでも良いから部活にいこう」


「無理矢理話まとめたねー、ヤス兄」


こら、チャチャを入れるな。


「…………………………………………………………………………」


えーと……かなり無反応。

どうしよう?


「ごめんねえ……この子、しゃべりだすまでに時間がかかるんよ。ゆっくりまっててやあ」


あ、そういやそうだった。


「……い、いつか……」


「ん?」


「……い、いく……」


おお、来てくれ。

そろそろ本当に1人で練習が寂しいんだ。

ポンポコさんも時々は付き合ってくれるけど、やっぱり一緒に走る人が欲しい。


「せっかくだで、夕飯食べてく?」


「え? 悪いですよ?」


と言うか、まだ昼食べ終わってあんまり時間が……。


「大丈夫、たくさんあるからねー」


と言ってヤマピョンのおばあちゃんは、キッチンの方に行って2皿持ってきてくれた。テーブルに置かれたのはシチュー。

夏野菜がどっさり入ってて、上手そう。


「これ、なんて言う料理ですか?」


「夏野菜シチューだよ」


まんまやな……しかし上手そう。


「レシピ、後で教えてもらえます?」


「……ヤス兄、これ以上料理上手にならなくていいよ、ほんとに私の立場無いじゃん」


「大丈夫、俺にとっての一番の料理はサツキの作ってくれたチャーハンだから!」


「ああ、うん、ありがと……実は結構適当なんだけどな」


「なんか言った?」


「ううん? なんでも?」


ま、いいや。

お言葉に甘えていただこう。

それでは、手と手のシワを合わせて、『しあわせ』だったかな。


『いただきます!』



















うん、上手かった。昼からあんまり時間無かったけど、食が進んだなあ。

食事中におばあちゃんにレシピも教えてもらったし。今度作ってみよ。

……おばあちゃんってええなあ。


『ごちそうさまでした!』


こういう家族の団らんってやっぱええなあ。


おはようございます、ルーバランです。


前回に引き続き、今回はユニークアクセス20000突破いたしました!

皆様、ありがとうございます!




-----


昨日、職場でいろいろと理不尽な目にあったもんで、こんな話になってしまいました。

その後、一部始終を見てた別の先輩がとても慰めてくれました。

その先輩いてくれてほんと良かったなあと思った瞬間。


-----


ちなみに夏野菜シチューはここから借りました……今冬ですが。

http://cookpad.com/recipe/60893


それでは!

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