表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/442

132話:人の為=偽り?

今日は8月20日水曜日、東海大会で勝っていれば、サツキの全国大会の日だ。

サツキは大会が終わってから、お盆頃までは元気に振る舞ってたんだけど、最近はホケーッと過ごしてる事が増えた。


夏休み中、ソフトテニス一直線だったしなあ……。

それ以前も、かなりの時間をソフトテニスに費やしてきたし。突然何でもする時間が出来ましたって言われてもぼけっとするしかする事がないんかな。仲のいいクロちゃんとサキちゃんは家族旅行に行っちゃったって言うし。


今は朝の7時。サツキは昨日20時にははやばやと寝たもんだから、今は既に起きてきてる。


「サツキさ、元気か?」


「んー……」


「宿題は終わったかあ?」


「まだー……」


「今日は何すんの?」


「考えてないー……きっとゴロゴロするー……」


……駄目だこりゃ。完全な無気力になっちゃってる。


「サツキ! 今日は俺と部活行かねえ?」


「えー、なんでー?」


「家にいても暇だろ? せっかく早起きしたんだしさ、高校来てみろって。ケンもユッチもポンポコさんもいるし!」


「あ、それはいいかも。久々にポンポコ先輩に会いたいし!」


「そうそう。大体サツキは高校はうちの高校受験するんだろ? 今のうちに学校見学しとけって」


「あいあいさー、ヤス兄」


ほら、やっぱり言うじゃん。

あいあいさーは死語じゃない!



















さてさて、学校到着。


「ヤス兄っていっつも早いんだねー、何してんの?」


「んー……掃除?」


そう言いつつ、ほうきを持つ。

ついでにサツキにも手渡し。


「……ヤス兄、こんな所でまで主夫しなくてもいいのに」


えーと、主夫と違うし。


「というか、何でヤス兄が掃除するの?」


「んー、下級生としてのけじめ? 他にもあるけど」


「え、そんなに厳しいの? 結構前にお疲れ様会に飛び入り参加したときはそんな厳しいイメージがなかったけど」


「全然厳しくないぞ? むしろほぼ完全な無礼講だ」


他の部活もこんなもんなんかな? どうなんだろ?


「じゃ、やらなくてもいいんじゃない?」


ま、その通りなんだけど。


「まあ、長距離の2年生って全く尊敬できんけど、一応仮にもあれでもなんとかぎりぎり上級生なんだから、表面上だけでも上下関係ってのはきちんとすべきだと思うし」


「今の言い方ってはっきり言ってけなしてるよね。大体表面上って行ってる時点で全然きちんとすべきと思ってないように聞こえるけどね」


うるさい、ギリギリの譲歩じゃ。


「他の理由は何?」


「んー、上手く言葉にできんけど、強いて言うなら気持ちよく練習したいから?」


「ああ、ヤス兄、なんとなくわかったよ」


「だろ? せっかくだからきちんとした所で練習したいじゃん?」


「うんうん、もしヤス兄が『学校を綺麗にするのは、学校のみんなの為に』とか言ったら寒気がしたね」


絶対言えねー、そんな聖人君子みたいな言葉。


「俺ももしサツキがそんな事言ったら正気を疑うけど」


「無理無理! 実際にはそう言う人もたくさんいるんだろうけど、私には無理!」


「だよなー!」


『あははははは!』





「……何の話してるんですか?」


うわ、びっくりした。


「おはようございます! アオちゃん先輩!」


「アオちゃん、おはよーさん、今日は早いねー」


「おはようございます、ヤス君、サツキちゃん。今日は何か早く目が覚めちゃいまして……それで、何の話してたんですか?」


サツキがここにいる事にはつっこみ入れないんか。


「ヤス兄が掃除する理由」


「あ、夏休みに入ってからところどころ綺麗になったと思ったら、ヤス君がいつも掃除してたんですね、誰がしてるのか不思議だったんですよ」


きちんとやり始めたのは、やる気になり始めてからだからなあ。


「それで、何がそんなに楽しかったのですか?」


「ヤス兄が『みんなの為に』って言って掃除をしてる姿を想像したら笑えただけですよ」


「うわ、想像したら寒気がした」


夏なのに。


「別にいいじゃないですか、みんなの為。何が悪いんです?」


「いやー、無理。家族とか友達以外の為に何かしてあげようって気は基本起きない」


や、目の前で泣いてる子供とか困ってる人見たら何かしようと思うけど。


「え? だって掃除してるじゃないですか」


「いやいや、別にみんなの為にしてる訳じゃないし。自分の為だし」


「……よくわからないんですが」


俺もこの辺りの感情は上手く説明できん。


「や、実際に『みんなのため』って言ってる人いるじゃん? 俺、あの言葉無理なんだよ。『これはみんなの為なんだ』って聞いた瞬間に何か嘘っぽく感じちゃうんだよな」


「中々やらしい考え方ですね」


やっぱそう思うよな。


「うむうむ、自分でもそう思うんだけどさあ。でも字でみると『人の為』とは『偽』なんだぞ」


「一応そうですね。……でも、みんなに喜んでもらえたときって嬉しく感じません? じゃあもっとやってやろうって思うんじゃないですか?」


「や、それはそうなんだけど……こう、なんだろ……それは結局みんなに喜んでもらえると言う事があってこそじゃない? 言い換えれば、褒めてもらいたいからする、喜んでもらえるからするって言うのは結局自分の為じゃね?」


「そんなものでしょうか?」


「俺個人的な話だと、それがどんなに人にとって為になる事でも、それについてありがたみを感じてもらえなかったり、それが原因で嫌がられたりさ、怒られたりすることだったらやりたくないんだけど」


「そんな事ってあるんですか?」


えーと……いい例が思いつかん……。

……まじでありえなさそうなのしか思いつかん。どうしよう?


「ヤス兄の経験談だと、小学校2年生の時に褒めてもらえると思って学校の草むしりして誰にも褒められなかった、って言って3日でやめたよね」


「サツキちゃん、よくそんな昔の事を覚えてますね」


「お母さんがこの前話してて、思い出しました」


この前の日曜日な。


「と、言う訳で」


「どんな訳ですか?」


うるさいやい、自分でもよく分かんなくなったから終わらせたいんじゃ。


「ここの掃除するのも、ただ単に自分の為であって、決して誰かの為でないと言う事を覚えておいていただきたい」


「しゃべり方もまとめ方も意味不明だよ、ヤス兄」


……ごめんなさい。
















「ところで、ヤス君?」


「ん、なに?」


「頑張ってしゃべってましたから言わなかったんですけど、『偽』と言う字、この場合の『為』と言うのは『ため』じゃなくて『なす』という事ですよ」


紙に書いて教えてくれるアオちゃん。


「そもそも、『為』っていうのは象を手なずけると言うことを表すんですよ」


ふむふむ。


「だから、『偽』って言うのは『人が事象を手直しする』という事を言ってるんですよ」


「ええと、つまり?」


「人が『本当の事実』を改変し、『別の物』にしちゃったら、その別の物は『偽り』ですよね」


ううむ、なるほど。


「そう言う由来で『偽』という時になったのであって、決して『人の為』は『偽』と言う訳ではないですよ?」


なに!?


「ヤス兄、私たち勘違いしてたね……」


「ああ、目からうろこだ……」


ほんと、何か言うときは気をつけよ。



おはようございます、ルーバランです。


この話書くまで、ずっと『偽』と言う字は「人の為」という字だなあ……と勘違いしてました。


まだまだ勘違いは多そうです。


ただまあ、『誰がため』と言われてもやっぱりピンと来ない自分。純粋に他の人のためになるからしてあげようとは思えないんですよね。こう、『感謝してもらえるかなあ』『褒められないかなあ』と見返りをもとめてしまうんですよ。


純粋に他の人のために何か出来る人はすごいです。


それでは。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ