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129話:お盆明け

8月18日月曜日、今日からまた部活が始まる。

結局お盆も、墓参りの日を除いてバイトの休みが取れなかったから、あまり休めた感じがしないんだが……。


今は学校にて、部活が始まる前だ。


「ヤス、おはよっす!」


「ケンか、おはよ」


……ってか、お互い黒くなったなあ。

受験期で真っ白になったけど、部活とバイトで真っ黒だ。


……肌の色な。2人して日焼けしまくってる。


「ところでケン、最近すごく切実な相談があるんだが」


「ん? なんだ?」


「そろそろネコミミを止めたい」


…………あれ? 何で反応しない?


「ヤスにも羞恥心ってあったんだな……」


「あるに決まってるだろ!? いきなり何言ってんの!?」


「ネコミミで学外を走るやつに羞恥心があるとは思えん」


く、正論を。


「そろそろ俺の羞恥心も限界なんだよ!」


「ってかヤス、誰かヤスにネコミミ強制してたか?」


「や、してない」


してないけど、しないと困る事があるんだよ。


「じゃあ、やめればいいじゃん」


「やめると、他の長距離メンバーと練習をせにゃならんのだ」


今はネコミミを理由に別々に練習してるからな。

考え直してみると……どんな理由だよ……。


「ふむ……すなわちヤスは、他の長距離のメンバーと別々に練習が出来ればそれでいいと言う事だな。そしてその理由が欲しいと」


「その通り!」


さすがケン、付き合いが長いだけあって俺の考えてる事をよく汲み取ってくれる。


「じゃあ簡単じゃん」


「何?」


「お前らとは練習したくないんだ! って言えばそれですむ話だろ?」


や、そんな事を荒立てるような事はしたくないんだが。


「……駄目なのか。すなわちヤスは、他の長距離メンバーがヤスとは練習したくないと思わせればいいと言う事か」


「ま、そういうことになるのかな?」


「肥だめにつっこんだら?」


「やだよ! どんなに臭いんだよ!?」


「1週間風呂入るの止めたら?」


「それも臭いって!」


「毎朝ニンニクたっぷりの餃子でも食べて来たら?」


「だから臭いってば! 何でそんなに臭いのがいいんだよ!?」


「臭いときっといい事があるぞ」


「どんなだよ!?」


「満員電車でも自分の周りはがらがら」


「それだけの為にどれだけのもん犠牲にすんの!?」


全く……汲み取ってくれると思った自分が馬鹿だった。

その後もいろいろケンが考えてくれたが、明らかにウケ狙いのものしか言ってくれない。


「おはようございます、ヤス君、ケン君」


「おはよー、ヤス、ケン……ふわあ」


ん? アオちゃんとユッチか。

ってかユッチ、ちゃんと起きてこい。


「ヤス君、ちょっとだけ仲良くなりましたよ!」


「ん? おじいさんおばあさんの事?」


「そうです! どうやったかと言いますと、ふたりとも囲碁が大好きなんですよ」


ふむ。


「そこで、囲碁やりませんかって誘って……」


なるほど、趣味から仲良くなった訳か。


「囲碁って初めてだったんですけど、なかなか43を作るのって難しいですね……」


「は?」


や、俺も囲碁は難しいからやった事ないけど、43なんて言葉あったか?


「黒の場合は33、44はアウトって難しすぎですよ」


何言ってんだ?


「ヤス君、どうやったら5つ並べられるんでしょう?」


……えーと。


「それは5目並べで、囲碁じゃないぞ」


「え!? そうなんですか!?」


……おじいさん、おばあさん、初めての人に囲碁させてもどうにもならんから、わざと5目並べにしたのかな?

頑張ったんだなあ。

ま、少し仲良くなれたみたいでよかった。


「……こほん、ところでさっきまでヤス君とケン君は何話してたんですか?」


「ヤスがやる気ない人とどうやって別に練習しようか考えてた」


「やる気にさせればいいのさあ」


……ユッチ……あくび噛み締めながら、そんな無理なこと言うな。


「それならぴったりのアイテムがありますよ!」


「や、もうアイテムに頼りたくないんだけど」


ネコミミとか……もう嫌。


「大丈夫です! 端から見たら普通の人です!」


訳分からん、なんだそれは。


「その名も、『ブラジャー』!」












…………。


「あれ? どうしました?」


「それって女子が付けるもんじゃん! 何でおれ!?」


アオちゃんとかゴーヤ先輩とかキビ先輩とかウララ先生とか……えと。


「……ヤス」


「はいいっ!?」


「今、あからさまにボクから視線をずらしただろお!?」


「いやいや! そもそも胸を凝視するってセクハラじゃん!」


「アオちゃんの胸見といて何言ってんだあ! このへんたいい!」


その言い方変! 誤解されるから!


「どうせボクは胸がないよお! このやろお!」


「俺何も言ってないじゃん!」


「目が言ったあ!」


んな無茶な!


「これでも毎日頑張って牛乳飲んでるんだあ!」


「え?」


それにしては背が……やばっ。


「…………ヤス」


「はいいいっ!」


「今思った事正直に言ってみてよ、殴らないから」


ほんとかよ、めっちゃ握りこぶし作ってるじゃん。


「言えよお!」


「えっと……背、かわいらしいなとか……」


「チビって言いたいんだろお! このバカああ!!」


ゲシッ!


「いってえええ!!!」


脛! すね! スネ! すねは駄目だろ!

殴らなくても蹴るんじゃん!


「ヤス、そんな顔に出しちゃ駄目だろ、ポーカーフェイスを学べ」


……無理!

…………痛い……。

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