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128話:お盆

8月13日、今日からお盆だ。


俺やサツキのおじいちゃん、おばあちゃんは母さんの方は俺らが生まれる前に早くして亡くなってしまったらしいし、父さんの方も俺らが小さい頃に死んじゃったから、もういない。


ほんとに小さい頃だったから、全然覚えていないんだよな……。

俺もサツキも葬式のときはぽけーっと座ってたらしい。


母さんも父さんも、おじいちゃんやおばあちゃんの事になると、すごく懐かしそうに話してる。

きっとすごく仲が良かったんだろう。


……ちょっとくらい覚えてたかったな。



















「サーツキ! そろそろ行くぞ!」


「もうちょっと待ってよ! 帽子かぶって行きたいんだもん! あと少しで決まるから!」


「父さんも母さんももう待ってるから、早くしろよー!」


「はーい!」


ま、5分くらいで降りてくるかな。


「お待たせ!」


「ういうい」


全員で車に乗り込み、出発だ。


「まずはどっちにいくの?」


「父さんのほう」


「ほーい、了解」


俺たちが今から行くのは、墓参り。

彼岸、お盆は欠かさず行ってるんだけど、もうちょい多い頻度で行かないと墓の回りってすぐに草でぼうぼうになっちゃうんだよな。

もうちょっと行く回数は増やした方がいいんだろうな。毎日通ってる人もいるって言うし。さすがに毎日はちょっと遠いからそれは無理だなあ。













さてと、着いたっと。


俺の家の墓はっと……あ、ここだ。


「んじゃ、お父さん、お母さん、ヤス兄、掃除しよっか」


「はいよ」


サツキが墓石を拭いて、母さんが前の花の片付け、父さんと俺で雑草を抜き抜き。

……前の彼岸から来てなかったから、荒れ放題だ。


ちょいちょい、とつっつかれた。

……父さんか。


サツキと俺が構わないなら、もっとちょくちょく来たいって聞いてきた。


「俺は全然構わないよ、サツキは?」


「私もー」


うん、自分の家の墓が荒れ放題ってのは気分がいいもんじゃないもんな。

このお墓、見に来れるのうちの家族だけだし。




……うん、こんなもんだろ。

雑草は抜いてゴミ袋に入れて、捨てに行った。






戻って来たら、母さんとサツキで花を供えてる。

お供え物もほんとはあった方がいいらしいけど、1回やった時にカラスに荒らされてからはもうお供え物はしない事にしたって聞いた。


「次って何やるんだった?」


「水鉢に水はるんじゃなかったっけ?」


「あ、そっかそっか」


とぽぽぽぽぽ。


「ほいほい、それじゃヤス兄、墓石に水かけてね」


「あーい」


ま、サツキの背だと墓石の上からかけんのしんどいからな。


ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ。


「ういうい、かけ終わったっす」


「ん、それじゃ、はい」


火のついた線香を受け取る。


……合掌。


……。


……。


……。


ふぅ。


「じゃ、次は母さんの方か」


「お寺には?」


父さん、母さんも首を横に振る。

まあそりゃそうか。

母さんの方はすごくいい坊さんだったけど、こっちの寺の坊さんは……この前の13回忌の時しか覚えてないけど……。


「じゃ、母さんのとこいこっか」


「あいあーい」












「……あれ?」


めずらし、今日会うなんて。


「こんちは、アオちゃん!」


「アオちゃん先輩! こんにちは!」


「……あ……ヤス君にサツキちゃん……それにご両親ですか? こんにちは」


…………何かめっちゃブルーなんだけど。

や、お寺の前で陽気って言うのも微妙だが。


「ど、どうしたんですか? アオちゃん先輩!」


「いえ、ただ単に今から祖父と祖母に会いに行くのが嫌なだけですよ」


……はて?


「お盆と正月が憂鬱って珍しいですよね。 でも、未だに祖父と祖母が苦手で」


「アオちゃん先輩、昔何かあったんですか?」


や、俺も聞きたいけど、そんな直球で聞いていいのか?


「……よくある話ですよ、私の両親って親に大反対されての結婚で、駆け落ち同然だったんですよね」


……よくあるのか知らんけど。

中々ヘビーそう。


「それで経緯ははしょりますが、父の方がぽっくりいっちゃいまして……あはは」


あははって……笑えないです。


「もう父方の祖父祖母、息子が亡くなってしまってから、母に対して大激怒しちゃいまして。『お前のせいで!』って……私の父、他に兄弟もいませんでしたし」


……どこの昼ドラだ……。


「私も妹も、母同様祖父祖母にはそんな訳であまり好かれてないんですよ」


……。


「ただ、正月や盆は会わないわけにはいかなくて、ちょっと憂鬱なだけです……よくある話ですよ……」


「会わないわけにはいかないの?」


「毎年、連れていかれるので……」


……そっか。


「アオちゃん先輩!」


「は、はい! なんですか?」


「アオちゃん先輩のおばあちゃんもおじいちゃんも、さびしいんだと思いますよ!」


「は、え?」


「そんな事言わないで遊びに行きましょうよ!」


「え? え? 何でですか?」


「だって、毎年連れてくんですよ! 嫌だったらさっさと『もう来んな!』って言いますよ!」


「そ、そうですか?」


「そうですよ! 大体子供や孫が嫌いな親や祖父祖母はいないんですよ! ね、お父さん、お母さん!」


父さんも母さんもうんうん、とうなずいてる。

悲惨な事件も時々報道されるけど、俺もほとんどの親はそうだと思ってる。


「それに、よく言うじゃないですか! 『おじいちゃんおばあちゃん孝行、したい時におじいちゃんおばあちゃんはなし』って!」


「おいサツキ、それ言うなら『親孝行、したい時に親はなし』だぞ」


「最近は寿命が延びてるから私のでいいの!」


んなむちゃくちゃな。


「それに、ついこないだテレビで言ってましたよ! 『いじめてた 嫁の介護に 助けられ』って!」


「アオちゃんは嫁じゃないぞ」


「細かいツッコミはなしだよ! ヤス兄! ……だからアオちゃん、おじいちゃんおばあちゃんも今はかたくななのかもしれませんけど、いつか仲良くなれますって!」


「そ、そうですか?」


「そうですよ! 頑張ってください!」


「あ、はい……ありがとうございます、サツキちゃん」


「はい! ……あ、それじゃまだ墓参りありますし、またです、アオちゃん先輩!」


「またですね、サツキちゃん、ヤス君」


「はいよ、またね」
















「サツキ、何か懸命だったけど……」


「……だって、ヤス兄は思わないの?」


……。


「私たちにはもうおじいちゃん、おばあちゃんいないんだもん……せっかくまだいるんだから仲良くして欲しいもん」


「そっか……そうだな」


「……だから、今家族とは思いっきり仲良くするんだもんね! ヤス兄! お父さん! お母さん!」


もちろんだ。

これからもよろしく、サツキ、父さん、母さん。

おはようございます、ルーバランです。


家族とは仲良くしたいですね。


……昨日、妹がいるって書いたら妹から


「あーあ、書いちゃった。ヤスと同じくらいのシスコンって思われるかもよ?」


と言われました。

……いやいやいやいや!!! DNA鑑定なんてしてません! 結婚するんだなんて宣言しません! 恋愛感情抱いたことありません!


やー、びっくりした。

変な事言うな、妹よ。


それではまた。

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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
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ええじゃないか
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