126話:甘えん坊
東海大会が終わって、8月9日土曜日。
昨日はみんなで思いっきり泣いて、互い互いに今までの思い出を話し合ってた。
1回戦負けを聞いてから、オカ姉妹もこっちにやってきて、今までの試合について振り返ったりしてた。
特にサキちゃん、ミキミキとは思い入れが深かったみたいで、延々としゃべってたなあ。
今日もまだ話し足りないみたいで、サツキ、クロちゃん、サキちゃんの3人でクロちゃんの家に集まってお疲れ様会をやるらしい。
東海大会の結果は愛知、岐阜、三重、静岡のそれぞれの県の1位がベスト4に残り、愛知が1位、三重が2位、岐阜が3位、静岡が4位と言う結果になった。
フクシマ&カミムラ、オカ姉妹がいる中学校はフクシマ&カミムラが勝ってたけど、残りのオカ姉妹、ナカタ&スズイペアが負けてしまって、4位と言う結果に終わっていた。
東海大会から全国大会に残れるのは2位までだから、全国にいけるのは愛知の1位と三重の1位の2校だ。
あの中学、個人戦でも残ってるのはフクシマ&カミムラのペアだけで、オカ姉妹は県大会で終わってる。
……オカ姉妹も、昨日で夏が終わったってことだ。
試合、見てたけどオカ姉妹も号泣してた。
なんか、今までやってたことが終わってくって言うのは寂しさを感じるな。
今は12時半、部活を終え自宅に帰り昼食をのんびりと食べたところだ。
「それじゃ、行ってきます! ヤス兄!」
「はいよ、いってらっしゃい」
楽しくやってきてくれ、サツキ。
今日は夕飯もクロちゃんの家で食べてくるって言ってたからな。
夕飯他に一緒に食べる人……父さんも母さんも帰ってこれんだろうし、ケンも兄貴のアパートに遊びに言ってるし……
ユッチとかポンポコさん、アオちゃんあたりを誘えばよかったかも。
今日は一人で夕食かあ……。
っと……そろそろバイト行かないとな。
監視員バイト……暑いし、きついし……土曜日はケンがいないから余計にきついんだよなあ。
「終わった……長いなあ」
次回バイトするときはもっとぼけーっと出来るバイトを探したい。
や、監視員バイトってぼけーっとできそうなんだけど、逐一見張ってようと思うとしんどいんすよ。
ケンからは
「もっとヤスは肩の力抜いていいと思うぞ、と言うか抜け! そんな状態でもしも事故起こったらどうすんだ? 逆に体が動かなくっておぼれてる人と一緒になっておぼれるなんてあほなオチになっちまうかもだぞ」
とこの前のバイトのとき、言われてしまった。
確かに肩に力入りすぎると何か起こった時に動きが鈍くなるもんなあ。
うむ、力加減が難しい。
今は帰り道、自転車をキコキコこぎながら家に向かってる。
TRRRRR、TRRRRR、TRRRRR……。
「お? 誰だ?」
とりあえず自転車止めて電話番号見てみると、サツキから。
「ん? 何の用だろ?」
とりあえず電話に出てみる。
「はいはーい、近藤です。サツキ、どした?」
「あ、クロダです! ヤス先輩ですか!?」
「あ、クロちゃん? 何でサツキの携帯使ってるの?」
「ちょっとやばいんです! 早く家来てくれませんか!?」
「はあ……状況がよく分からんのやけど」
「いいからお願いします! わ、わ、サツキちゃん! やめて! やめてー!!」
へ、サツキ?
「な、なあ!? サツキがなんかしてんの!?」
サツキがオイタをしたのか!?
「やーめーてー! ぬーがーさーなーいーでー! こーわーさーなーいーで!!」
サツキ!? 何やってんの!!?
「クロちゃん!? 大丈夫!!?」
「はうっ!?」
プツッ、ツー、ツー、ツー。
き、きれた……。
サツキ!? 本当に大丈夫か!?
サツキの電話に折り返しかけなおしてみたけどさっきから
「お客様のおかけになった電話番号は現在電波の届かないところにいるか、電源がきれているため、かかりません。お客様のおかけになった電話番号は――」
くそっ、さっきクロちゃんからの電話がきれたときに電源もきれやがったか?
……ヤバそうだ! 早くクロちゃんの家に行かないと!!
クロちゃんの家に到着!
ドタドタとクロちゃんの部屋のある2階へと上がる。
ドア開ける……ん? となんか声が聞こえてくる。
「なんでヤスおにいちゃんがいないのー!? ヤスおにいちゃんいないのやだよー!」
ヤスおにいちゃん……懐かしい呼び名だな。
「さ、さっきクロちゃんがヤス先輩呼んだから、もうすぐ来るよ」
「さっきもサキちゃんそういったもん、ヤスおにいちゃんはわたしがきらいになっちゃったんだもん」
「そ、そんなことないよ……」
「……じゃあヤスおにいちゃんはなんできてくれないの……?」
や、もう来てます。入るタイミングを逃しました。
「き、来てくれるよ……」
「そんなことないもん、ヤスおにいちゃん、さいきんいっしょにねてくれないもん」
「や、ふつうだよ……」
「そんなことないもん、さんがつまではねてたもん」
「そ、そうなんだ……」
サツキ……暴露しないで。
「ヤスおにいちゃーん……ヤスおにいちゃーん」
……泣いてる?
……早く部屋に入ろう。
「サツキ! お待たせ!」
……立ち聞きしてたから、微妙に気まずい。
「あ、おにいちゃん!」
泣いてたサツキがもう笑ってる。
さっきまで泣いてたみたいで、目はちょっと赤くなってるけど。
「っておい!?」
ガスッ!
「アイタタタタ……サツキ、いきなり飛び込んでくるなよ」
突然サツキに抱きつかれ、ついついしりもちついてしまった。
「おにいちゃんだあ……ヤスおにいちゃんだあ」
……ゴロゴロと顔をこすりつけないで。かわいすぎるから。
ついつい頭をなでてしまう。
「えへへ〜。ヤスおにいちゃん〜」
くるくると嬉しそうな声を出してるサツキ。
………………かわいすぎる!!
「あ、あのヤス先輩?」
「あ、へ? え? 何?」
いかん……理性が飛ぶところだった。
「なんかサツキちゃん、私の家にあったチューハイをジュースと勘違いして飲んじゃって……そしたら突然『ヤスおにいちゃん〜!』って暴れだしちゃって」
……言われてみれば、部屋の中が荒れまくってる。クロちゃんが抑えようと頑張った形跡が見られる。当のクロちゃんは部屋の隅っこでばててる。
「もっとなでてよ〜」
「ああ、はいはい」
「えへへへ〜」
ああもう、かわいいなあ。
「で、でですね」
あ、ごめん……また忘れてた。
「サツキちゃん、こんなんになっちゃっいましたし、ヤス先輩、連れて帰れませんか?」
……そだな、連れて帰るか。
「ほら、サツキ。帰るよ」
「だっこ〜」
だだっ子め……俺も抱きついちゃいたい。
「おんぶじゃだめ?」
「じゃあおんぶ〜」
「はいはい、じゃあ背中にのって」
「わ〜い!」
よっと。
ああ、サツキってやっぱり軽いなあ。
「じゃあかえろっ! ヤスおにいちゃん!」
「あいよ! ……後片付けできなくってごめんね、サキちゃん、クロちゃん」
「あ、いいですよ。また今度です」
「はいよ、またね」
「ばいばーい」
背中で大きく手を振るサツキ。
……ん、帰るか。
自転車では帰れないからトコトコと歩いて帰る。
「ヤスおにいちゃん! きねんしゃしんきねんしゃしん!!」
「はいはい、何でとるの?」
「わたしのケイタイ! ほらほら、かおちかづけてよ〜」
……よっと。
「じゃあいくよ! はい、ピース!」
カシャ!
「わーい、ヤスおにいちゃんとのツーショットー!!」
これくらいでそんなに喜んでくれるんだなあ。
「これ、わたしのまちうけにするもんね!!」
お〜、うれしいね〜。
「ヤスおにいちゃん! きょうからまたいっしょにねようね!」
って前寝なくなった時、サツキが嫌がってたような……いいのか?
「ねーるーのー!!」
「うん、寝ような」
「わーい!」
……。
翌日。
6時半か……と言うかサツキ、手を放してくれないなあ……かわいいなあ。
12時。
「……う、うーん」
お? 起きたか?
「おはようさん、サツキ」
「お、おはよ……あ、あれ? ヤス兄? 何で!?」
「昨日の覚えてない?」
俺は酒飲んだときのこと、覚えてないし。
「き、昨日? ……………!!!」
え? あれ?
サツキの顔がみるみる赤くなっていってる。
「ヤス兄! 出てけー!!」
「や、手繋いだままだし」
「……! うるさいうるさいうるさい! でてって!」
慌てて追い出された……。
「ヤス兄! 昨日の事は忘れて!!」
え!? やだよ。
「お願いだから忘れて! 違うんだから! 違うもん! 違うんだもん……」
や、昨日の嬉しかったから忘れない。
「ああうう……顔をあわせられない……」
全部覚えてるのか、サツキは。
3時間くらいみんなでなだめて、ようやく部屋から出てきてくれた。
まだ顔、真っ赤だったけど。
もう、かわいいなあ。
こんばんは。
またやりすぎちゃった感が……まあいいや。
というか、「主人公が変態」って評価をもらってしまったその日にこの投稿ってどうなんだろう……。
最近投稿時間がバラバラで申し訳ないです。
今後ともよろしくお願いします。