表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/442

120話:ダークヤス、降臨

「では、連れて行きますね」


「お願いします」


ウララ先生の車に乗せられて、俺とユッチ、それにアオちゃんも来る事になった。

サツキや俺の両親にはケンが連絡入れといてくれるらしい。


「残念だ、バイトがなかったら俺も行きたかったのに」


「ケン君、なんでですか?」


「すぐ分かるって」


……アオちゃん、ケン、何の話だ?














30分くらい車にゆられて、ユッチの家に到着。

意外と広い。

大きな庭もあるし。


「ユッチの家は5LDKなんですよ」


……そうなんか。










「ただいまあ!!」


ユッチ……頭痛いから声押さえてくれ。


「おかえり、早かったね、何かあった?」


若いお姉さんだな、ユッチのお姉ちゃんか?


「ちょっと陸上部の友達が……」


「ああ、アオちゃん? どうかしたの?」


「アオちゃんじゃなくて……」


「んー?」


……おい、俺を見て何故固まる?


「ユッチが! ユッチが男を連れて来た!!」


……叫ばないで。


「今日はお赤飯!? それともユッチの好きなサシミにしようか? もちろんわさび抜きで」


……ユッチ、わさび駄目なのか。


「ボクの苦手なものを暴露しないでよお!!」


……ユッチ、うるさい。


「ついにユッチにも春が……」


「違うからあ! そんなんじゃないからあ!」


……頼むからどっかに横にならせてくれ。立ってるの辛いんだ。


「あの、ヤス君が死にそうだから、寝るとこ貸してあげれません?」


ありがと、アオちゃん。


「じゃあ、ユッチの布団に寝かせましょうか?」


「何でボクのなのさあ!? 他にもあるだろお!?」


「そしてユッチが暖めてあげるのよ」


「絶対嫌だからあ!」


どうでもいいから早くして……。
















ようやく、客用の布団に寝かせてもらった。


……。


「具合、どうですか?」


……。


「もういっぺん熱測ってみましょうか?」


……。


「39度9分ですか。下がりませんね」


……。


「返事がありませんね、眠ったんでしょうか?」


…………。


「大体、無理しすぎなんだよ、ヤスは! 毎日3時間しか寝てないって馬鹿じゃない?」


…………。


「そうですよ、そうなる前に休みましょうよ」


…………。


「はあ……陸上の知識も全然ないしさあ」


「あははは」





「うっさい!!!!」





「……ヤス?」




「寝かせろってんだ! 病人はいたわれ! 人間として常識だろ!」


「ど、どうしたんですか?」


「どうしただ!? うるさいって言ってるんだ! 日本語分かりませんかあ?」


「い、いえ……」


「大体だな! 3時間しか寝てないって言うが、俺が好きでやってんだ! 父さん、母さんにお帰りって言ってあげたいのの何が悪いんだ! アオちゃん、言ってみろや!」


「え、いや、私もお帰りは言ってますが……」


「じゃあいいじゃんか! 挨拶は人間として当たり前の事なんだぞ! 小学生の頃に「オアシス運動」やっただろ!? それをやってるって言っただけで馬鹿馬鹿連発される筋合いはねえんだ! こら! 何か間違った事俺言ってるか!?」


「間違った事は言ってませんが、それで体を壊してしまっては……」


「そうか? 寝不足だけが原因かなあ?」


「何が言いたいのさ!?」


「時間がなくて練習前のアップ、練習後のダウン省略しようとするとどっかの誰かさんが睨むんだよなあ……」


「なんだよ!? ボクの事って言いたいのかあ!?」


「もちろん。朝に俺がご飯作って、昼からバイトなの知ってるくせに、間に合いそうになくて慌てて帰ろうとすると、睨まれるんだよね」


「アップダウン、ちゃんとしないと怪我するんだぞ!」


「はあ……ダウンをやると時間なくて昼飯食い損ねてるんですけど。かと言ってダウンせずそのまま帰ると1日睨んだりするし。あれってすっごいストレスになるんだよね」


「ボクのせいでストレス溜まったって言いたいのかあ!?」


「プレッシャーはすごいよね、俺、初心者なのに『そんな事も出来ないの?』って言われ続けられてるみたいでさあ」


「もう4ヶ月も経ってるだろお!?」


「私だって少しは覚えましたよ?」


「ふん、アオちゃんはいいさ。陸上経験者のユッチが延々としゃべってるし、ウララ先生って指導者がいるんだから。俺には誰が教えてくれたって言うのさ」


「だったら自分で調べろよお!」


「はあ……やだやだ。熟達者になると、初心者の考えなんかなんも思いつかんくなるんだよね。……どうやって調べるのさ?」


「本とか!」


「どんな本がいいの? 俺しらなーい」


「ネットとか!」


「どのサイトがいいの? 多すぎて分かりませーん、言ってる事、サイトごとに違ってたりするしさあ、……そもそも何を聞けばいいかすら分かんない状態で調べられると思うの? 出来る人って嫌だねえ、相手が分かってるもんだと思って何でもしゃべるからさあ」


「……うううう」


「後さ、自分が出来てないのに、俺にいちいち意見してくるのもむかつくんだよね。ポンポコさんとか、俺にはノートを作る時、『余白をたくさん取って見やすく作れ』とか言っておいて、自分が作って来たメニュー見づらくて仕方がないんだもんよ。人に言う前に、自分を直せって話だよ」


「そう言うなら自分で作れよ!」


「さっきもいっただろ? 俺、知識なんもありませーん、調べる時間もありませーん」


「夏休みなのにそんなに日程入れるヤス君が悪いんですよ」


「バイトの日程は決めたのケンだけどねー」


「何かあったら、その時その時で言えばいいんじゃないですか? そうすればストレス溜まりませんよ」


「そうだあ! アオちゃんの言う通りだよ!」


「ふーん……言っていいんだな。そう言ったな、じゃあ聞けよ。全部聞けよ!」


「は、はい」


「ヤス、怖いよお……」


















翌日。


「すみませんでしたあ!!」


「ヤス君の本音って、真っ黒ですね、びっくりしました……」


何で俺、言った事全部覚えてるんだろう……。

漫画みたいに風邪のときの記憶、飛べばいいのに。

熱はひいた。一晩大汗をかいたら、何とかひいた。

まだ頭は痛いが、じきに治るだろう。


「ボク、ヤスにそんな風に思われてたのかあ……」


「や、あれはダークな俺だから! いいとこあるって思ってるから!」


「でも、サツキちゃんや両親の愚痴は1個もなかった」


「そりゃそうだ、不満ないもん」


「ボクには不満だらけって事だろお?」


……えっと、アオちゃんもユッチも落ち込まないでくれ。

確かに本音っちゃあ本音だけど、そこまで強く思ってたりしないから。


「人間として終わってるって言われました……」


「ボクも言われた……」


「すみませんでしたあ!!!」


俺の方こそ、人間として終わってる。


おはようございます。


病人の看病の王道パターン


ユッチとアオちゃんがおかゆ作って


『あーん』


みたいなアマアマな展開を期待してた人、すみません。

風邪引いたときって、頭ボーッとしてるから、暴走しませんか?


……自分だけでしょうか?




オアシス運動

オ:おはようございます

ア:ありがとう

シ:しつれいします

ス:すみませんでした


と、挨拶がきちんとできるように小学校等でよく行われていた運動です。

今でもあるんでしょうか?

別の所では


サ:さようなら


をいれた「オアシスさ運動」というのもあるそうです。


それでは今後もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ