119話:ばたんきゅー
今日は8月5日火曜日……。
体が重い……。
今は5時50分か……そろそろ起きないとな……朝の準備しないと……。
重い体を無理矢理立たせて、台所に立つ。
最近は弁当もかねてたからご飯食が多かったけど、今日は作るの無理……。
適当に卵焼き焼いて、後はレタスをちぎってミニトマトをのせ、楽する為のごぼうサラダをのせてと。
後はパンと牛乳で。……今日の献立はこれでいいや。もう他に考えたくない……。
えと、弁当はと……。
ああ、思いつかん。昨日の残りでいいや。後は炊いといたご飯でおにぎり作っとけ。
……よし、できた。……冷蔵庫に入れとこ。
……じゃ、父さん母さんが起きてくるまで寝るか……いやいや、部活があるんだから準備しないと。
もそもそと食べる。あんま食欲がわかんけど、とりあえず食っとかないとな。
よし、準備できたと。
時刻は7時50分。いつもよりちょっと早いけど、行くか。
たんたんたんたん……。
あ、起きたな。
「父さん、母さん。おはよ」
おはよ、と挨拶してくれたけど、まだ寝ぼけてんなあ。父さんも母さんも。
「んじゃ、部活行ってくるから、いってきます」
声かけたけど、夢うつつだな。ま、仕事になりゃビシッとするからな。大丈夫だろ。
学校についた。今は8時50分、練習は9時からだからな。
間に合った間に合った。
「おはようございます、ヤス君……顔色悪いですけど、大丈夫ですか?」
「あ、アオちゃん、おはよ。だいじょぶだいじょぶ。ちょっと疲れ気味なだけだから」
「そうですか? でも、今日は休んだ方が……」
「練習して、速くなりたいし。休んだりしてたら、またユッチに怒られちゃうし」
「私はヤス君は頑張ってると思いますよ、ユッチもそんな事で怒ったりしませんって」
「ありがと、アオちゃん」
「ヤス君、無理はしないでくださいね」
「あいあい、了解」
ま、体重いけど、何とかなるだろ。
…………やばっ、体が全然動かん。
「おいヤス、今日は練習やめておけ。全然走れてないぞ。そんな状態では怪我の元だ」
……くぅ、ポンポコさんの言う通りなんだけど……。
「もちょっと走ってみてから、確かめるよ」
後1周走ってみて、駄目だったらやめとこかな……。
……200m走ったけど、やっぱり全然体が動かん……。
「ごめ、ちょっと休憩」
あんまりにもきついから、ちょっと走るのをやめて、徒歩に変えた。
あ、ちょっともう駄目。
がくっとその場にへたり込んでしまった。
あう、情けね。
「おい! ヤス! 大丈夫か!?」
「……あはは……無理……」
「笑ってるな! おい、とりあえず日陰に移動しろ! こんな所で倒れるな!」
無理……倒れたい。
……ふぅ……ケンとアオちゃん、ポンポコさんの3人掛かりで無理矢理日陰に運んでもらった。
「おい、ヤス。大丈夫か?」
「しんどいっす……」
……しゃべるのもしんどい。
「失礼……熱いな……とりあえず、熱計るか。保健室に体温計くらいあるだろ。ついでに氷持って来てくれ」
「あ、はい、わかりました」
「……あ、ありがと。……ポンポコさん……アオちゃん」
「まあ、そこで寝といた方がいいぞ」
うい……了解。
「39度8分……よく部活に来ようと思ったな、来る前に気付け」
「あはは、今日ずっとしんどかったのはそのせいかあ……昨日までは平気だったんだけどなあ」
「昨日まで、どんな生活してたんですか?」
「えと……平日は6時ちょい前に起きて」
「早いですね。そんな早く起きて何するんですか?」
「……朝ご飯と弁当作り、あと洗濯」
「主夫ですか!? ヤス君は」
……俺も思った。
「それからどうするんですか?」
えと、きついんですが……。言わないと駄目?
「えと……部活……弁当をサツキに届けて……バイト……」
「何で届けてるんだ?」
「……この暑さじゃ腐るし……」
「ああ、だからヤスは一度お腹を壊したんだな」
よく覚えてるね、ポンポコさん。
「ヤス君はどこでお昼食べてたんですか?」
「……最初はサツキと食べてた……アップとダウンちゃんとやるようになったら時間が無くなったから食べてない……」
「ヤス君……本末転倒過ぎますよ、それは」
……しょうがないっす。
「それで?」
……ポンポコさん、まだしゃべらないといけないの?
「帰ってから……夕食作り」
「夕食もヤス君ですか? 親は何してるんです?」
「……最近は……2時頃まで仕事だったり」
「……激務ですね。それでヤス君は家事は終わりですか?」
「えっと……風呂掃除して、わかして……その後、洗濯物とりこんで、たたんで……あと、トイレとか居間の掃除?」
「全部ヤス君ですか? サツキさんは?」
「最近21時には寝るから……サツキは」
「サツキさん、寝るの早すぎですよ! もうちょっと分担してくださいよ!」
サツキ、部活をすごく頑張ってるから。
「もうヤス君も寝ますよね?」
「えと……父さんと母さんの夜食作り」
「ヤス君って馬鹿ですか?」
そこまで言われる?
「何時に寝るんですか?」
「父さんと母さんが帰ってから……最近は3時とか」
「倒れるに決まってるじゃないですか!? 3時間も寝てませんよ!? それで部活とバイトをやるなんて無理に決まってます! 何で先に寝ないんですか!?」
「えと……おかえり?」
「馬鹿ですか? ええと、兄馬鹿? 子馬鹿って言えばいいんでしょうか?」
うわ、ぼろくそ…………でも、帰ったときのおかえりって嬉しくない?
「今のが平日か? 日曜日は?」
ポンポコさん、もうしゃべりたくないんだけど……。
「えと……6時半に起きて」
「もっと寝なさい」
目が覚めるんだよ……前も説明した気がする……それはケンとサツキにか。
「洗濯して、昼食と夕食の準備して」
「何で昼食?」
「みんなが起きるのが14時とか」
「馬鹿?」
何回馬鹿って言われただろ?
「その後、買い物行って、1週間分の食材買って」
「それもヤス君ですか? せめて他の日にしたらどうです?」
「前は土曜日午前だったけど……競技場に練習に行くようになったら時間がない」
「……えと」
「で、3人が起きたら昼食で、その後3人にマッサージして」
「ヤス君がしてもらいなさい」
……あはははは。
「……みんなでボードゲーム……最近はモノポリー」
「完全にモノポリーにはまってるな」
そうかも。
「……準備しといた夕食を食べて」
「ふむ」
「おしゃべりしたら、両親とサツキは風呂入って21時には寝る」
「だから早すぎですって! 何でそんなに早いんですか!?」
「さあ……」
3人ともよく寝るからなあ……。
「それからヤス君は何してるんです?」
「……明日の朝ご飯の準備と弁当の準備……ああ、洗濯物取り込んで、アイロンかけたりもしてる。ついでにみんな寝相が悪いから布団かけ直してる」
「馬鹿ですか? 馬鹿ですね?」
……また言われるし。
「ヤス君の家族はヤス君のありがたみを分かった方がいいですね」
なんじゃそりゃ?
「ヤス、今日はユッチの家で療養しとけ」
「け、ケン! な、何でボクの家なのさあ!? アオちゃんの家は!?」
「私の家狭いですし」
「ポンポコは!?」
「兄弟がうるさい」
「ケンは!?」
「俺、午後からバイトやもん」
……俺の家でいいんでない?
「そもそもヤスの家でいいだろお!?」
……ナイス、ユッチ。
「ヤスの家、今誰もいないぞ」
……そういやそうだな。
「ああああうううう」
ユッチ、そんなに嫌なのか?
「バイトは俺が連絡しといた。代わりの人探してくれるってさ」
「あー、うん」
ありがとさん、ケン。
じゃ、寝よ。お休みなさい…………。
おはようございます。
ばたんきゅーは死語らしいですが、この響きが好きなので、結構使ってます。
昨日、私も風邪引きまして、ヤス君同様39度8分まであがりました。そしたらこんな話になりました。
風邪引いたら、あったかくして寝るのが一番です。
では。