112話:サツキの中総体県大会決勝、応援って?
さあ、いよいよ決勝だ。
今度こそちゃんと見とかなきゃ。
相手は地区大会との同カード、フクシマ&カミムラペアのいる中学校。
「あれ? サツキとクロちゃん、ダブルス1じゃないの?」
「そうだよ、フクシマ&カミムラペアはダブルス3で出るって聞いたから、私たちもダブルス3に変わったんだ」
「なるほど……」
今度こそ勝ってほしい。
見てみると、組み合わせはこんな感じになってた。
ダブルス1
キリ&マイマイ vs ナカタ&スズイ
ダブルス2
サキちゃん&ミキミキ vs オカ&オカ
ダブルス3
サツキ&クロちゃん vs カミムラ&フクシマ
ん? ダブルス1は誤字か? タナカ&スズキだろ?
まあいいや、準決勝までの試合を見ていても、タナカ&スズキペアはそんなに大したことはなかった。
ダブルス2からが本当の勝負だな。
まずはキリ&マイマイ、ガンバ!
「お疲れ……キリ、マイマイ」
「……なに? あいつら……個人戦でもいなかった気がするんだけど……」
「なんか応援席で聞いたんだけど、あの中学、団体戦は2年生は出さない方針らしい」
「2年生!? あいつら2年生なの!?」
「らしいよ、個人戦は途中で棄権したんだって」
「何で決勝からでてくるの!?」
「さあ……勝ち負けにこだわった結果かなあ」
「うう……2年生相手に手も足も出ないなんて……」
ま、な。
2年生で既にあんなにうまいって言うのは反則だろ。
フクシマ&カミムラペアも2年生からすごくうまかったって聞くけど。
結局キリ、マイマイは1−4で負けた。
相手チームのナカタ&スズイ……突然出てきたくせして強すぎだろ。
「ごめん」
「私たちが勝ってくるから! 気にしない!」
おお、いい意気込みだ。
サキちゃん、ミキミキ、ファイトだ。
「ダブルス2、サキ&ミキ vs オカ&オカ」
さあ、地区大会からの再戦だ。
あの時は僅差でオカ姉妹に負けちゃったからな。
今回はぜひ勝ってほしい。
……そういえば、どっちがオカシイコでどっちがオカエリだっけ?
顔が一緒だからわからない。
サーブはオカのどっちかからだ。
「いくっすよ!」
ええと……『っす』って言うのがオカエリだったかな?
オカエリさんのサーブか。
「っす!」
シュッ!
「ナイスサーブ!」
コースもスピードもすごくいい。
レシーバーのミキミキも反応したけど、ネットだ。
「……ユッチ、なぜ白い目で見る」
「ヤスはどっちの応援なのさ?」
「そりゃ、サキちゃんとミキミキの応援に決まってるだろ!」
「じゃあ、ポイントとられて、なんで拍手するのさ!?」
「ええと……ユッチは大リーグとかの応援見たことないのか?」
「ないよ、ボク野球に興味ないし」
一番わかりやすい例なんだけど。知らないならしょうがない。
「んじゃマラソンとか、日本の選手とケニアの選手が競ってたとき、気持ちは日本の応援にならない?」
「ボク、ヌデレバのファンだからケニアの選手応援する!」
「……ええと……」
…………そう言われたら話が続かないじゃんか、話の腰を折るやつめ。
「じゃあ……うーん……たとえばユッチがだぞ、400mの予選に出場するじゃん?」
「ボク専門は100mだし。400mはリレーでしか走らない」
細かい事を……最後まで話させてくれ……。
「で、大会新記録! という事になったとするじゃん?」
「あ! それはすごいいいシーンだよね! 気持ちいい瞬間だったよ……」
出したことあるんか、すげえな。
「ボクの記録、次の年にすぐに塗り替えられたけど。第2回の大会じゃしょうがないよね」
……つっこみづらい……。
「ま、まあ、その出した瞬間はめちゃくちゃ気持ちいいわけじゃん?」
「そうだね!」
「でも、出した瞬間にもかかわらず、みんながみんな無関心だったらどう思うよ? サキちゃん! ナイスレシーブ!」
今のはサキちゃんがリターンエースを決めた。
「うーん……」
この例えでわかるかなあ?
「想像ついたか? 例え敵側でも、ナイスプレーをしたら、褒める! これが本来の観戦だと思うぞ。観客が全員無関心のアウェーに行ったって、やる気がおきないじゃん」
「ええ!? でも敵の応援なんていやだあ!」
「そういう場合は、おもいっきり怒ってやれ! 『このやろう!』ってな気持ちでな。無関心が一番プレーヤーはつらいもんなんだぞ、ユッチもそんな経験ないか?」
競歩見てたときは、俺も無関心になってたが……。俺も偉そうなこといえないなあ。
「ああ! なるほどお! スタート前にもかかわらず、ボクのほうを見ないでしゃべってたチームメイトとか、やる気うせるよね!」
お、わかったか?
「あと、ボクがまだ練習してるのに、興味もなくパパッと帰るヤスを見ると、ムカつくんだあ!」
ええ!? 俺に矛先が向くの!? ってか、その言い方って、俺はユッチが終わるの待たないとだめなの?
「それは置いといて」
「置いとくなあ!」
置いとかせてくれ。
「罵倒でも相手のミスを望むような言い方はだめだぞ。それで、相手チームでもファインプレーをしたら反応する! これが俺の観戦スタイルだな」
「なるほど、よくわかったあ! とにかく怒ればいいんだね!」
……ほんとにわかったのか? ユッチ。
「……おしい! 頑張れ!」
サキちゃんのコートの横へのアウト。
狙いすぎたな。
ユッチとしゃべってる間に、ワン・ツーでオカ姉妹が1ポイントリード。
「いくっすよ!」
しゅっ!
かなりのスピードだ。コースはさっきのサービスエースほどじゃない。
ミキミキ、返せ!
「ふんっ!」
ミキミキのレシーブ。
オカエリさんが前に突っ込んでくる。
サーブ&ダッシュって言うんだったかな?
「決まりっす!」
ミキミキのレシーブの位置を完璧に予測したのか、真正面でのボレーだ。
……上手い。
サキちゃんとミキミキの間を抜けて決まった。
「ワン・スリー」
後1ポイントでこのゲームとられるのか……。
「このやろお!!!!」
へ? ユッチ?
「うまいんだあ! むかつくんだあ!」
声でかすぎだから! びっくりしてるから! やりすぎだから!!
「ナイスプレーだあ!」
怒ってるのか、喜んでるのか訳わかんないから!
「ごめん! 俺が悪かった!! ごめんなさい!!! だから黙ってくれ!」
「なんでだよ!? ヤスが怒れっていったんじゃん!」
「過剰反応だから!」
過ぎたるは及ばざるが如しということわざを知らんのか!?
「……あれが変態のヤスなんだね、エリ」
「気をつけないと駄目っすね、シイコ姉」
ごめん、くじけそう……。
こんにちは、ルーバランです。
前は夜中に書いて朝に投稿というスタイルでしたが、最近は4時ごろに起きて書いてます。
眠い……。
ところで、スポーツ漫画やバトル漫画でどんどん強くなっていって、ありえないレベルの強さになるのってこんな理由かなと思いました。
現実的に書こうとすると、たとえばテニスだと、同じプレーの繰り返しになってマンネリになります。
バトル漫画でも、同じ攻撃方法、同じ倒し方の繰り返しでは読者が飽きるから、どんどん強くしていかないといけないんだろうなあと思います。
元から主人公最強の話は、基本なんでもありな世界になりますね。
弱い主人公を作戦で違和感なく勝たせることができる漫画家、作家って偉大です。私もそんな作品が書けたらなあ……頑張ります。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。




