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101話:ヤス、初バイトをする

今日は7月19日土曜日……。

暑い……何で俺はここにいるんだろう?











「ヤス、似合ってるぞ!」


「うっさい! 何が似合ってるって言うんだ!」


「その麦わら帽子が最高だ! どっかの農家のおっちゃんに見えるぞ!」


「ケンだって麦わら帽子付けてるじゃん!」


「ヤスは老け顔だからな、余計似合って見える」


「老け顔って言うな!」


……今俺たちがいる所は、静岡の公営プールだ。


ケンが言うには


「高校生が出来るバイトなんて限られてるからな。コンビニ、ガソリンスタンド、レストランみたいな接客はヤスには無理だろ? だったら、夏季限定で座ってるだけで金がもらえる監視員ってよくね?」


と言う事だったんだが……。


ちなみに俺もケンも一通り泳げる。サツキと一緒にスイミングに通ってた期間も少しあったけど、それよりかはケンの兄貴に叩き込まれたときのが上達したな。

ケンの兄貴、本当にスパルタだもんなあ……。


ってか、監視員の仕事は何が座ってるだけでいいだ! その前の事前研修とかありえん時間取らされたぞ!

や、確かにプール事故とか怖いから、事前研修大切なんだけどな。








と言うわけで、俺は今プールを監視している。

暑い……このくそ暑い中、プールに入れず、ただ見てるだけってかなりきつくないか?


時間は14時、一番暑い時間帯だ。13時半から午前の部の人と交代して監視中だ。朝の8時から13時までプール事故が起きないように、プールに関するマナーやここのプールの構造等をみっちり教えられ、さらには人工呼吸の仕方や心臓マッサージの仕方等、一通り教わった。


ここの公営プールは夏休みだけの解放で、その間だけ臨時でバイトを雇うらしい。

きちんとしたプールの監視員は2〜3人で、それ以外はバイト。その人がみっちりバイトをしごくと言うのが毎年の事。


全員キチンとした監視員を揃えるのは大変らしく、水上安全法指導員等の資格を持った監視員なんてほとんどいないし、そう言う人は金もかかるので、バイトで何とかすますんだとさ。


まあ、今年はその資格持ってる監視員がしっかりしてて、みっちり研修受けたからいいけど、ちゃんとしてない監視員で適当な研修しか受けてない人ばっかりのプールとか怖いな。

……飛び込んで女子生徒にぶつかるとか危ない事やめて、プールではマナー守ろ。


俺が見てるのは大人のプール。小学生5年生からしか入れないってプールを監視中。

ちなみにケンは子供のプール見てる。


しかし……羨ましいなあ、楽しそうだなあ……暑いなあ……















今は14時50分。よ、ようやく休憩だ。

な、なげえなあ……。


「ただいまから10分の休憩時間となります。プールで泳いでいる人は一旦プールサイドにあがって休憩してください、休憩しないと、体が冷えてしまったり、足をつって溺れて見知らぬ監視員と人工呼吸する羽目になります、初めてのキスが監視員とならない為にも、休憩を入れましょう」


どんな説明だよ!? いや、確かに言ってる事は正しいんだけど、その説明はないだろ!?

みんなの慌ててあがるところが面白い。まあ、そんな説明をうけたら誰だってあがりたくなるよな。


この間に監視員はプールを泳いで変なものが落ちてないかとか、現在の水質のチェックを行う。

多い落とし物はゴーグルにロッカーの鍵。

ロッカーの鍵は取りにこなきゃ帰れないけど、ゴーグルは諦めて帰る人が多いとか……。


「……え、これって?」


えーと……、どう見てもこれって……。


「……すみません、こんなものが落ちてたんですが……」


「え、あ、あ、まあ、そう言うのも落ちてるもんだ、とりあえず届けとけ」


「……あ、はい……」


どうやってこんなんおとすんだろ?












ようやく終わった……。

一応監視台にはパラソルがついてるんだけど、あんまり効果はない。

日差しはほとんど体にくらう。どうにか顔だけは当たらないように首をひねってたりするんだが……。

Tシャツきてる人もいたけど、俺は脱ぐのが面倒だったから、海パン一丁で監視してた。

こう何事もないと何か起こらんかなあと不謹慎な事を考えてしまう俺は、監視員には向いてねえなあ。


後はプールサイドの掃除と明日の準備をして、終了だ。

時給は750円。俺は8〜13時半と13時半〜19時に別れてて、俺は全部午後の部だから、1回出るごとに750×5.5=4125円ずつ溜まるわけか。


全部で30日入ってるから……ちゃんといけば4125×30=123750円。

おお、すげえ!


「お疲れ! ヤス! どだった?」


「何もなかった。何もなさ過ぎて暇でしょうがなかった」


パラソルの上でじっとしてるって拷問でしょうがない。

かと言っていなくなったらもしもの時に困るし……難儀なバイトだな。


「まじかよ!? うらやましいなあ。こっちなんかちびっ子達が言う事聞かんとそこら中走り回るし、休憩時間だって言っても全然プールから上がろうとしないし、しまいには『ボクの歯落っこちちゃったー』とか言い出す子供が出て来てさ。乳歯なんだから気にすんなって話だよな!」


「ま、まあプールで歯が落っこちる子なんて中々いなさそうだけどな」


「ま、明日は休みだ! ゆっくり休むぞ! そして明後日からまた働いてお金を貯めるのだ!」


「……そういやケンって何でお金いんの?」


俺みたいに携帯代が払えないとかアホな理由なのか?


「ああ、兄貴の所に毎回行くのって金かかんだよな。毎回親にせびるのって悪いだろ? だったら夏休みに金貯めとこうと思ってな」


なるほど、ケンもちゃんと親御さんの事考えてるんだな。


「じゃな! ヤス!」


「おう、また明後日かな?」


「おう!」


さて、帰りますか。












ようやく家に着いた、時刻は19時半。

今から飯作りだな。今日は……焼きそばにでもするか。

お、サツキも今部活の帰りか。午前中からずっとやって……って、すごい長い時間練習してんなあ。


「お帰り、ヤス兄…………って、プッ……ごめん……ククク……毎回狙ってるの? ……く、苦しい……」


は、何がだ?


「鏡見て来たら? ププッ……我慢できない、ヤス兄、ごめん。あはははははははっ!!!」


え? え? サツキ? な、何でいきなり笑われてんの!?

慌てて洗面所まで行って鏡を見た。


「って、おい!! ありえん!! あうう、顔が、顔がああああ!!!」


どうなってるかって?

ええと……右半分だけ真っ黒に焼けて、左半分は普通の色……。


パラソルで日に当たらんようにしてたら、こうなってしまったようだ……。

くそう……これからこんな顔で過ごすのかよ……。


おはようございます、ルーバランです。


着ぐるみバイトでもさせたかったんですが、どこのサイト探しても着ぐるみバイト募集なんてありませんでした。


残念です……と言うわけで、監視員バイト開始です。


それでは。

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