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10話:クラス委員

今日も朝からサツキと一悶着を起こし、ケンと言葉遊びをしながら学校に行く。

学校は午前中だけで、ホームルームの後、体育館で部活紹介を行う。


教室に入って自分の席に着くと、ホームルームが始まるまでは、ぼーっと外を見てる。

中学3年の時から、空を見るのが習慣になった。

特に何を考えているという訳ではない。こうしてれば、教室内の喧噪を無視できるからだ。


「おはようございます」


それなのに、隣の席のアオイさんが話しかけてきた。


「……おはようございます……」


とりあえず、顔だけアオイさんに向け、挨拶をする。

そして俺はまた、空に顔を向ける。


「ヤス君、話しかけてるんですから、きちんとこっち向いてくださいよ」


「アオイさん、何か用ですか……?」


「用ってわけじゃないんですけどおしゃべりしましょうよ。そんな風に外ばっかり見ててもつまりませんよ」


「……いや、いいです。空見てるの好きなんですよ」


別に好きなわけじゃなかったが、話しているのがめんどい。


「そうなんですか? それじゃ仕方ないですね」


アオイさんはすぐにひいてくれた、ありがたい。

こういうときにこっちの言うことも聞かずにしゃべり続けるやつはうっとうしくて仕方ないからな。


外を見ていたら、室井先生がきて、ホームルームが始まった。


「じゃあ、ヤス君、今日も号令お願いね」


また俺かよ! なんかこのまま号令係になってしまいそうで嫌だ。

言いたい事はあったが、やっぱりツッコミするのが面倒なので、しぶしぶ従う。


「きりーつ、れい」


『おはようございまーす!!』


……なんかこのクラスって元気が有り余ってるな。特にケン、声大きすぎだろ。周りがびびってたぞ。

ケンのやつ、完全に犬になりきってやがる。


「はい、おはよう。今日はまず、今年1年間のスケジュールを簡単に話しときます。その後、クラスで委員会を決めていこうと思いますね」


1年間のスケジュール表を渡され、それを見てみるとこんな感じだった。


4月 

 入学式

 課題テスト(英・数・国)

 体力テスト・身体測定

 集団宿泊研修

5月

 中間テスト

6月

 大山祭(文化の部・体育の部)

7月

 期末テスト

 富士山学習

8月

 部活合宿

9月

 課題テスト

 球技大会

10月

 中間テスト

11月

 実力テスト

 マラソン大会

12月

 期末テスト

1月

 課題テスト

 百人一首 かるた大会

2月

 実力テスト

3月

 卒業式

 期末テスト


というか、テストが多いな。ほとんど毎月テストがあるじゃんか。高校生なると勉強漬けになるのか?

室井先生がいろいろしゃべっていたが、俺はプリントを見ていて、ほとんど聞いちゃいなかった。


「それじゃ、次は委員会を決めちゃいましょうか? まずはクラス委員やりたい人いる?」


そんなんいるわけないだろ?

クラス委員なんてめんどいし特典があるわけでもないのに。


「はい、俺やります!!」


いたよ! ってかケンだよ! なんかもうほんとに犬だな。

室井先生にしっぽ振りまくってる。振りすぎててちぎれてしまいそうだ。


「じゃあ、クラス委員はケン君で。もう一人いるんだけど、他にやりたい人はいませんか?」


「はい! ヤスがやりたいって言ってます!」


「言ってねえよ! やりたくねえよ! ケン! 毎回毎回何で俺を巻き込むんだよ!」


「室井センセ、ヤスのやりたくないは『わたし、本当はやりたいんです……!』っていう気持ちの裏返しだから」


「気持ち悪い! へんなしゃべり方するな!」


「あ、そうなんだ。じゃあ、ヤス君。君もクラス委員でよろしくね」


室井先生のその一言で、クラス全員が拍手した。満場一致で決まってしまったようだ。


そんなわけないだろ!! やりたくないって言ってるんだから、そう受け取れよ!

……くそ、俺はできるだけ関わらないようにしてるのに、なんでケンのやつはいちいち巻き込んで来るんだよ。


「ここからはクラス委員の人たちにお願いするね。ケン君、ヤス君、よろしく」


「はい! おまかせください!」


ケンのやつは無駄に元気だ。何で朝からそんなハイテンションなんだよ。


「もうみんな知っていると思うけど、早川健次、通称ケン! よろしく!!」


「近藤康明です、よろしくお願いします」


「……あー、お前、そういえばそんな名前だったな。」


「何で忘れるんだよ!? おかしいだろ!? どれだけ顔を付き合わせてきたと思ってるんだよ! 小学校2年からの付き合いだってのに!!」


てか昨日も自己紹介してたじゃん!?


「だってヤスとしか呼ばんもん、ってか俺たち付き合ってたのか?」


「そう言う意味じゃねえよ! お前と付き合うってどれだけ気持ち悪いんだよ!」


くそっ! クラスのヤツが想像してやがる。そりゃ、そんなの想像したらきもいだろ……あれ? 喜んでいるのもいる!? 特に一番後ろの席の女子! 顔を赤くしてにやけるな!


「ほらヤス、漫才してるわけじゃないんだからさっさと進めるぞ」


……くそ、言い返せん。こいつと言い争ってたら、時間がなくなる。


「それじゃ黒板に委員会を書いていくから、やりたいところに自分の名前書いてって。やりたいのが重なったら、じゃんけんで決めること。全員何かしらの委員会に参加しないといけないみたいだから、さぼろうなんて思わないこと。ヤス、板書していって」


「はいよ」


俺はケンに言われ、一つ一つ書いていく。


「……ヤスって字きたねえなあ」


「うるせえ、お前よりましだ。お前のノートなんて見る気にもならんじゃないか。前にノート借りた時はミミズが踊っているようにしか見えなかったぞ。テストを採点する先生たちが気の毒でしょうがない」


「……まあそうだな。よくあの字を先生達は読めたよなあ。時々暗号にしてたのに」


「おいっ、暗号って何だよ!」


「ん? 暗号ってのは通信の内容が相手以外にわからないように、当事者の間だけで決めた記号の事だ。主に軍事・外交・警察・商業などで使われる。大辞泉からの引用」


「そんな事聞いてねえ!!」


軽口をたたきあいながら、ようやく書き終える。


「じゃ、決めた人からどんどん書いてって。はやいもの勝ちって訳じゃないから、ゆっくり考えていいよ」


ケンが声をかけるとわらわらと人が動き出す。

そこかしこでじゃんけんが行われ、ようやく全員の委員会が決まった。


「室井センセ! 終わりました!」


「お疲れさま。ちょうどホームルームの時間も終わるし、いい時間配分だったと思うよ。初めてのクラス委員としての仕事は上出来」


「おっしゃ! 室井センセに褒められた! 頭なでて下さい!」


「…………この後、部活紹介があるから、遅れないように体育館に移動すること。ホームルーム終わります。クラス委員の人が号令をかけるんだけど、どっちがやる?」


うわ、ケンのやつ、完全に無視されてしまった。室井先生につきだされた頭がなんだか哀愁を漂わせている。がっくりとうなだれている。


「…………今までヤスがやってきたんだから、これからもヤスでいいだろ」


「何でだよ! お前はクラス委員に立候補しただろ! お前がやれよ! 俺もうやりたくねえよ!」


落ち込んでるからって俺に振るなよ!!


「じゃ、ヤス君、お願いね」


「なんで!? 俺やりたくないって言いましたよ!」


しまった、ついつっこんじまった。

あんまり親しくしないようにするつもりなのに。


「だって、ヤス君のやりたくないは『わたし、本当はやりたいんです……!』という気持ちの裏返しなんでしょ」


だから、ケンの言うことをいちいち真に受けないでください!

しかもケンの声真似なんてしないでいいですよ。無駄に上手いし。

これ以上逆らうのはまずいと思ったので、号令係も認めることになってしまった。

流されてばっかりだ、俺。


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小説内で使わせていただきました。ありがとうございます
カカの天下
オーダーメイド
ええじゃないか
うそこメーカー
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