1話:プロローグ
目覚まし時計のアラームが鳴り響き、俺の耳にがんがんと起きろと訴え続ける。
布団を顔からかぶって聞こえないように抵抗していたが、目覚まし時計は訴えをやめてくれない。
いい加減うっとうしくなってきたので、布団から飛び出て目覚まし時計を叩き、とめてやった。
これでようやく眠れる……お休みなさい……。
ようやく夢うつつになった頃、また目覚まし時計が自己主張し始めた。
この高機能目覚まし時計ってやつはきちんととめないと5分ごとに、毎回覚醒して俺をおこそうと画策する。
窓から日がはいり、夢うつつだった状態から、だんだんと意識が覚醒してきた。
まだまだ寝ていたいが、もうそろそろ起きないとまずいはずだ。
俺はうんうんうなりながら、もぞもぞと布団から這い出て、片手で目をこすりながら、目覚まし時計をつかんだ。
午前6時6分。
うん、ちょうどいい時間だ。
この朝の一連の動作は確定事項で、毎日のように同じ行動をしている。
毎回のように1回はとめて、そのまま寝る。この2回目の睡眠というのがとても気持ちいいのだ。
ぐーっと体を伸ばし、眠気を覚ます。今日はちょっと体がだるい。
昨日の疲れがずいぶん残っている感じがする。
昨日は春休み最後の日。
学校が始まってしまうと、もう中々遊べなくなるからと友達に誘われ、朝から思いっきり遊び倒した。
朝9時に友達と妹とボーリング場に行って、昼食をとった後、カラオケ、漫画喫茶、最後はビリヤードで締めた時にはもう夕方19時を回っていた。
妹もずいぶん疲れたようで、家に帰ってから夕飯も食べずに寝てしまった。
まったく、いくら何でも遊び過ぎたな。まあ、楽しかったからいいけど。
俺は制服に着替えて自分の部屋から出て1階に下り、洗面所で顔を洗う。
髪はぼさぼさのままなんだが、クセッ毛なので、すごい時間をかけないと髪の毛は整わない。
なので、面倒なのでひどいのだけ直してこのままですましておく。
中学の時とは違う制服を着たの自分を見て、
「今日から俺も高校生か……」
とつぶやいてしまう。
今日、4月7日は俺が今年から通う事になる大山高校の入学式だ。
最寄りの駅から15分程度歩くと見えて来る高校で、学校からなんと富士山を見る事が出来る。
1学年200人の中規模な学校だ。
自分の中学校からはそれほど近くないので、そんなには進学していない。俺と後、4〜5人ってとこかな。
成績は中の上、上の下って所だと思う。
爆発していた髪の毛がある程度(まだ人が見ればぼさぼさと言うだろうが)落ち着いたら、キッチンに向かう。
毎日の朝夕の飯作りは俺の役目だ。
両親ともに、朝の寝起きがめちゃくちゃに悪い。
まあ、毎日夜遅くまで仕事をしているのだから仕方がないのだけれど。
今日は朝に炊けるようにセットしといたご飯に、わかめとねぎのみそ汁、それに卵焼きを焼いて、ついでに食後のリンゴをむいておいた。
忙しい朝の時間にはこの程度で十分だ。
食事の準備ができた所で、妹の五月<サツキ>を起こしに行く。
今、サツキは中学3年生だ。
始業式は明日なのだが、今日は朝早くに行って、新入生たちの先導をしなくちゃいけないという事で、朝起こしてくれるように頼まれたのだ。
こいつも両親と同様に寝起きは最悪だ。
ほっておくと延々と寝続けるのじゃないかと思ってしまう。
実際一度ほっておいたら、もう日が落ちる頃になってようやく起きてきて、そして22時にはもう寝ていたなんて事もあった。
「サツキー、起きてるかー? 入るぞー?」
サツキの部屋をノックして、返事を待たずに入る。
寝てるに決まっているからだ、起きていたためしがない。
案の定サツキは布団にくるまって、ミノムシのようになって寝ていた。
すーぴーと、幸せそうに寝ているのを見ると、何となくイタズラしたい気持ちがむくむくとわいてくる。
そんな感情を我慢してゆさゆさと揺らしながら、声をかけ続ける。
「サツキー、今日は学校行くんだろ、さっさとおきないとまずいぞ!」
「おーきーろっ、おーきーろっ、さっさとおーきーろっ!」
「起きないとお前の日記読んじゃうぞ!」
しょぼい脅し文句も交えつつ、おもいっきりぐらぐらと体を揺らしているのに、いっこうに起きる気配がない。
いつもひどいが今日は特に目覚めが悪い。
春眠暁を覚えずというのは本当だな……。
「ふぅ、こうなったら…………でやっ!」
「ぎゃふっ!?」
どすっと鈍い音がしたかと思うと、布団がはねた。
思いっきりミノムシになっている妹に、エルボーを叩き込んでやったのだ。
今はぴくぴくと震えている……ついに動かなくなった。
少しの間、その状態が続いていたが、突然、がばっと起き上がると、俺に向かってうめいた。
「も、もうちょっと優しく起こしてよ……朝から激しすぎるよ……」
「朝から変な事言ってないでさっさと起きる、もう時間あんまりないだろ?」
「えっ、そう? ……って、もう7時じゃん!まずいまずい!」
「さっさと着替えて下におりてこいよー、朝食はもう出来てるからな」
「はいはい、わかったから先したおりててよ。」
「りょーかい……あ、サツキ!」
「なに、ヤス兄」
「おはようさん」
「ん、おはよう」
一度起きてしまえばサツキは楽だ。ぼーっともしないし、不機嫌にもならない。
食卓に戻ってサツキがおりてくるのを待つ。
「ふー、お待たせ、ヤス兄」
「待った待った、だからさっさと席れ。はよ飯食べるぞ」
「はいはい」
制服に着替えたサツキは、空いている俺の前の席に座る。
「んじゃ、『いただきます』」
手を合わせて、いつもの声を出した後、2人して食べ始める。
食事中、サツキは黙るという事がない。とにかくしゃべり続ける。食事は礼儀正しく食べよ、という意見もあるかもしれないが、
これはこれで楽しいので俺としては全然構わない。話題もぽんぽん飛ぶので、適当に相づちを打つ。
「春休みも終わっちゃったねー、また学校が始まると思うとめんどいよ」
「そうだな……。まあ、お前の場合は学校なんてサキちゃんとか、クロちゃんとかに会いに行くもんだって思っとけばいいんじゃない?」
「だって部活でだって2人には会えるし……勉強がめんどいの、特に数学とか!」
「はいはい、高校に入るために適当には頑張っとけよ」
「ヤス兄の高校ぐらいなら、今の成績で十分いけるもん!」
「……あれ? お前、俺の高校受けるの? お前なら、もう少し上の高校もいけるんじゃん?」
「……いいの、とりあえずはそこで。って、ヤス兄の方こそ高校大丈夫なの?」
「まだ、行ってないから何とも言えんさ。まあ、ケンもいるし、なんとかなるよ。」
「ヤス兄、ケンちゃんばっか頼ってないで、もっと社交的になりなさいよね。ああ、なんで私のお兄ちゃんなのにこんなにも人付き合いが下手なのかしら……」
「うっさいな。お兄ちゃんなんて気持ち悪い呼び方するなよ。明日から起こしてやんねーぞ」
「うっわー、器が小さいねー、お・に・い・ちゃ・ん?」
「あーもう!ごちそうさま!!自分の分の食器は自分で水に浸しとけよ、俺は先に学校行くからな!」
「はいはい、いってらっしゃーい」
俺は乱暴に食器を片付けて、家を出る。
ふー、ちょっと大人げなかったな。
俺に社交性がないというのは本当の事だ。実際中学3年生の頃は友達のケンぐらいしか付き合いがなかった。ケンがいたから、中学の時は1人にならずにすんだようなもんだしな。
でも、高校でも、適当な友達付き合いなんていらないよな。いろいろとめんどいし。
とぼとぼと物思いにふけっていると、改札口についた。
俺の家から大山高校までは距離が結構あるので電車で通う事になる。
これから電車通学か……。
中学校のときは徒歩だったので、電車通学というのは初めてだ。
まあ、そのうち慣れるだろう。
俺は改札口を通り、ホームに入っていった。
はじめまして、初投稿です。
なので、途中でつじつまが合わなくなったり、変な所がたくさん出てくると思います。
指摘・批評・感想・何でもいいのでお待ちしております。
まだ、1話しか投稿していないので、批評も感想もあったもんじゃないですが、投稿数が増えましたら、適当によろしくお願いします。