p.38 旅立ち
永久凍土のハッシャール雪原から、春の訪れつつあるセルドルフ王国に帰ってきたルーシャたち。レティルトは雪原に施していた魔法術すべてを解除し、ナーダルたちの魔法で一同はセルドルフ王国に帰ってきた。陽の光の暖かさと、薫る風の優しさにほっと一息つく。だが、ルーシャの目の前にはそんな穏やかな春の空気とは相反する状況が広がっていた。
客間の一室にはウィルト国王、アストル、オールド、ナーダル、レティルト、ルーシャの六名が集合していた。先手必勝──その一言のせいで大事になっている気がする。アストルが軽く事の経緯をウィルト国王に説明し、ウィルト国王はレティルトの存在とナーダルの正体に驚く。
「ウィルト陛下、お久しぶりです」
深々と頭を下げ、レティルトは一国の主に挨拶を交わす。第一王子として国交にも深く関与してきたレティルトは、アストルだけでなくウィルト国王とも何度も顔を合わせ言葉を交わしてきたことがある。
「レティルト王子」
「今回の一件はすべて私の独断と責任です。貴国をはじめ、諸国に多大な迷惑をおかけした」
キリッとしたその表情と姿勢、声色に彼が王たる資質のある人物だと噂されていた所以を感じ取れずにはいられない。もはや国を追われる身となり、王子ではなく背負う国すらなくとも、レティルトのその気迫が失われることがない。生まれ持った才能と、培ってきた経験が彼には備わっている。
「だが、我々もリーシェルに捕まるわけにはいかない。陛下とアストル王子に、私と弟のことは一切口外しないと約束して頂きたい」
強い瞳はまるで睨むかのような視線で、黙ってやり取りを見ていたナーダルが思わず口を開く。
「ちょっと兄さん、それは──」
レティルトの言葉は、リーシェルを敵に回せと言っているのと変わらない。アストルの体質のことを考えれば、記憶の改ざんができないのは仕方のないことだ。だからこそ、ナーダルは消せないのならば、逃げるしかないと。彼らをリーシェルの剣先から守るためには、彼らにリーシェルを裏切らせないということしか出来ない。
確かにアストルは、こちらからの魔力介入を素直に受け入れることは難しい現状だった。二人のことがリーシェルにバレないようにするためには、アストルとウィルト国王に黙秘してもらう必要がある。ふたりとも正体を隠していかなければならないが、この条件を飲んでしまえばセルドルフ王国にリーシェルの剣先が向けられてもおかしくはい。他の王女たちには最強の女騎士の剣先から守るため、最悪の場合レティルトは自分を売れと警告していた。
「お前は黙ってろ、セルト」
抗議の声を跳ね返され、ナーダルはそれ以上何も言えなくなる。何の考えもなしにレティルトがそんな無謀なことを口にするとは思えないし、弟であっても兄のその気迫には太刀打ち出来ないところもあった。
リーシェルの剣先が向けられるリスクを分かっていながらも、レティルトはあえてネスト家に正体を知られたまま、黙っていろと言うことを決断した、──ルーシャの存在があったから。ウィルト国王と血が繋がっていないとはいえ、ルーシャは兄のアストルとは母親が同じで血が繋がっており、ルーシャは王太子の妹で、そんな彼女は亡国の第二王子の弟子となっている。アストルたちが知らなかったとはいえ、ネスト家はリーシェルが探し求めていた存在を受け入れ、王太子の妹とは師弟関係となっている。知らなかった──とリーシェルに言ったところで、まったく関係がないわけではないネスト家にリーシェルが目をつけないとは限らない。もはや、レティルトから見ればネスト家がリーシェルに目をつけられないためには、秘密を隠し通すしかない。
「タダで黙っていてもらおうとは思っていません。諸国の情報を提供する見返りという契約を交わしていただきたい」
だが、レティルトも鬼ではない。厳しい状況に変わりはないし、そもそもナーダルがルーシャの立ち位置まで配慮して行動していればネスト家が追い込まれることもなかった。レティルトにとっては弟の行動に対する対価として条件を出す。
「そのような契約などなくても、私は王子たちのことを口外せんが」
「ウィルト陛下。ありがたいお言葉ですが、俺はセルトと違って簡単に人を信じられないもので」
冷たいまでも強い瞳が彼の見てきた現実の過酷さを物語る。ナーダルの尻拭いも兼ねているが、レティルトは定期的にウィルト国王やアストルとの繋がりを持つことでその行動を監視することにもなる。簡単に誰も信用しない、レティルトの瞳は最初からそう告げている。
「書面に残していただきたい」
抜かりのないレティルトの言葉にウィルト国王は快諾し、アストルは息を飲む。徹底的に他人を信用せず、契約書をもって他者との関係を確実に明確化するさまはナーダルから見れば寂しいものだった。だが、第一王子として責務とともに生きてきた兄にとって他者の裏切りなど当たり前で、レティルトが生き残るためには確実な契約というものが必要だった。
ウィルト国王とレティルトたちが詳しい話し合いをするなか、ルーシャはナーダルからすぐ旅立つため食料の確保をするよう言われ、城の食料庫で日持ちしそうなものを選別していた。氷の城でかなりの魔力を消費していたがナーダルは正体がバレた以上、休息よりもウィルト国王たちがリーシェルに巻き込まれないための行動を選んでいた。
「ねえ、ルーシャ」
食料庫で旅立ちの食料を補充していたルーシャの背中に誰かが話しかける。振り返ると金髪美女のオールドが平然とそこに立っていた。
「オールド姫。どうかされましたか?」
「んー、まあ、ひとつ提案っていうかね」
どこか歯切れの悪いオールドは、食料庫の中にある林檎をひとつ勝手に食べ始める。林檎を丸かじりする姫君など初めて見たため少し動揺するものの、ルーシャは彼女の次の言葉を待つ。
「あたしがルーシャのシスターになるのはどうかなって」
「え?」
突然の言葉にルーシャは食料を補充しようとしていた手を止め、オールドを見る。その瞳は困ったようにルーシャから離されている。
見習いには基本的には師匠は一人で、魔力協会に認定されるのも一人だけだった。だが、人により得意分野や不得意分野は異なり私的な師弟関係もあると聞いたことがあった。
しかし、ナーダルは魔法や魔術に関して基本的には何でもこなしてしまう。彼で何かが不足していると感じたことは無かった。それにオールドが何かの分野で秀逸だという噂も聞いたことがない。
「言い出したのは、ナーダルのほうだからね。ほら、あいつも色々と思うところあるみたいだし。特にリーシェルのこととか」
弁明をしながらオールドは先程のナーダルの言葉を思い返していた。ひとつお願いがある──そう言われて託されたものがあった。
世界最強の女騎士相手にいつまでも逃げ切れるわけでもないし、近い未来にケルオン城に足を踏み入れなければならず、きっと対峙する日が来るだろうと。簡単にやられる気はないが、それでも相手は魔力協会ですら手を出せない人物であり、ルーシャを残して死ぬ可能性が決して低いとは言えない。だからこそ、自分がいなくなった時のことも考えて信用できる誰かに託さなければならない。
もちろんルーシャの思いが一番重視されるものだから、無理にとは言わない。ただ、突然師匠がいなくなったときに頼れる他の誰か大人を早くから見つけて、何かあればナーダルに言えないことも言える同性の相手がいればと。ナーダルの数少ない知り合いの中で、最初は自分の師匠シバをと考えていた。だが、シバはかなりの年上であり、大魔導士と恐れられる存在でナーダルでさえも気軽に話すことは避けたい。まだ、見習いで世界の狭いルーシャがシバに気後れすることは容易に想像がついた。
そこへ偶然にも友人のオールドと再開し、さらに彼女はルーシャと歳も近い。王女という立場はあるが、フランクなオールドは誰とも気兼ねなく話すことの出来る人物だった。兄の婚約者でもあり、赤の他人よりはまだ近くに感じられる存在であり、これこそ魔力の導きだと妙な確信を抱いてオールドに依頼したのだった。
オールドはまさか友人のナーダルが、実は亡国の王子であったとは思いもしなかったし、その正体を知らされて早々になかなかシリアスなお願いをされていた。ナーダルのことはそれなりに信頼しているし、ルーシャは婚約者の妹であり、他人事に感じられず首を縦に振ったのだった。
「嫌なら断ってくれてもいいし。あ、でも文句はナーダルに言ってよね」
ナーダルの提案に、オールドの言葉──そんなマイナスなことを考えて欲しくないし、それなら何がなんでも生き抜くくらいの姿勢を見せてほしい。信頼している師匠だからこそ、そう思うがナーダルを取り巻く環境はそう甘くないのだろう。
オールドのことが嫌いなわけではない。兄の婚約者だが、あまり接点がなかったので話したことは殆どない。こうして二人きりで話したことなんて、あの氷の城ではじめだったと思う。王女様ではあるが、とてもフレンドリーで話しやすく、裏表のなさそうな人だと率直に思う。
ナーダルのことを知り、ルーシャは心のどこかで納得する。ウィルト国王や王子のアストルに対し物怖じしない態度であること、アストルのことを王子ではなくあえて王太子と呼ぶこと、舞踏会の警備もその荘厳な空気に怖じ気付くことなく平然とやってのけたこと、剣術が扱えるうえにそれが慣れたものであることなど。思い返せば師匠の出で立ちが庶民の出ではないことがあった。
「よろしくお願いします、シスター」
すべてに納得したわけではないが、すこし考えて受け入れる。ナーダル以外に師匠など必要性を感じないが、それでも師匠が与えてくれる環境と人材ならば素直に受け取るのもありかもしれない。それに、オールドと話していて普通に楽しいと思える。のちのちに師匠とならなくても、義理の姉となるのだから仲良く出来るのならそれはそれで良い気もする。
「シスターってマスターのこと好きなんですね」
ルーシャの返答に安堵し屈託なく笑うオールドに対し、ぽろりとルーシャの本音がこぼれ落ちる。兄の婚約者であるが、オールドがアストルと話している時はどちらかというと姉と弟のような感じがしていた。だが、ナーダルのことを話す時のオールドは屈託のない表情でとても楽しそうだった。面倒事を押し付けられても、それでも楽しそうに笑う。それになんとなく、オールドのナーダルに対する態度もアストルに対するものとは違う。だが、アストルと婚約しているのに不謹慎だ──とは、不思議と思わなかった。屈託のないオールドの表情を見て、姫君がそんなに幸せそうに笑うならその幸せもいいのかもしれないと不思議と思えてしまう。レティルトとはまた違う他のなにか、人を魅了するものをオールドも持っているようだった。
「えっ?!」
オールドはルーシャの言葉に、手にしていた林檎を落としかけて、慌ててそれを拾うあたり図星なのだろう。あまりにも分かりやす過ぎるオールドにルーシャは自然に笑えてしまう。
「なんで?!」
「マスターに対する態度とか見てて、何となくそうかなーって。女の勘みたいなものですよ」
慌てふためくオールドの反応が面白く、微笑ましくもある。オールドといえば、兄の婚約者という存在でしかなく特に今まで関わったこともなかった。
「でもマスターが好きなら、どうして兄さんと婚約を?」
一国の姫君とはいえ、オールドは王位継承権もなければ国の重役につくこともない。家柄に縛られる必要のない、ある意味自由な立ち位置にいる。
「お姫様っていうのも、案外いろいろあるもんなのよ」
ため息混じりにオールドは呟き、静かに残りの林檎を食す。
「じゃあ、マスターには──」
「言ったところで困らせるだけだし、願いが叶うわけでもないしね。あたしとルーシャの秘密よ?」
オールドは確かに王位継承権もなければ、権力に縛られない立ち位置にある。だが、それでも伝統ある王家のひとりとして縛られているものもある。どうしても逃れられない血縁があり、どうやっても叶わない願いがある。個人の気持ちではなく、王女として求められる役割がある。両親が許しても、血族が許さないことがある。
「とりあえず、これあげる。あたしのお古で悪いけど」
ため息をついていたオールドは自分の首に下げていたペンダントをルーシャに手渡す。透明度の高い水晶のペンダントは美しく、光の反射の加減で淡いながらも様々な色を見せる。
「これは?」
「パロマ──通信用の魔道具よ。あたしの魔力はもう登録してるから」
受け取りながら、オールドから魔道具のレクチャーを受ける。ルーシャが貰ったものは通信用の魔道具「パロマ」というもので、水晶が魔力を蓄積することが出来るという性質を利用したものだった。通信用の魔法が施されており、相手の魔力を登録することで魔力を利用して遠隔にいる人と連絡できるものだった。品質にもよるが高価なものは何百人と、安価なものでも二十人ほどを登録することが出来る。
水晶が劣化したり、通信用の魔法の神語構造がすり減れば魔道具としての命は尽きる。保存魔法で登録魔力は保管できるので、魔道具が壊れる前に新しい魔道具に登録魔力を移し替える人が多い。オールドがルーシャに譲ったものはまだ使えたのだが、仕事の関係上もう少し登録人数の確保ができるものを手に入れたので、オールドには用無しとなっていたものだった。
さらに便利なことに、パロマは三つの通信方法がある。一つは普通に連絡を取りたい相手に連絡をとる方法、二つめはその相手に緊急で連絡を取る方法。一つ目の方法だと連絡が来たことは、水晶が魔力を発して光って教えてくれるのだが、二つめの緊急連絡はさらに音魔術が発動するため水晶の持ち主に連絡をすぐに知らせる。三つ目は魔力協会の警察・レスキューに連絡できるもので、魔力協会の地本部にある連絡部門に直接繋がるものだった。
「あたしも働いてるからいつでもってわけにはいかないけど、何かあったら連絡よこしてよね。あと、美味しいケーキ屋見つけたら誰よりも先に教えてよ」
ナーダルはウィルト国王の私室に招かれていた。レティルトは契約書を作成するとすぐに城を去っていき、行き先も告げずに消えていった。どこか寂しくもあるが、お互いに必要時はきちんと連絡を取るだろうとナーダルは去っていった兄を見送った。
「あなたがセルト王子だったとは」
改めて向き直られナーダルは苦笑いを浮かべる。レティルトと違い、表立つことがなかったナーダルはその顔は他国に知られておらず、各国の王でさえも知らない。
「どうして言ってくださらなかった。私に出来る援助はしたのに」
ナーダル──ナーセルトに直接的に何か恩があるわけではないが、大国としてロータル王国はセルドルフ王国と良好な関係を築いていた。善政を取り仕切る今は亡きロータル国王とは、良き友人のような関係でありウィルト国王は彼や彼の息子のためなら、どんなことでも助けようと、あの反乱の時にそう決意していた。
「さすがの僕でも、巻き込めませんよ」
兄のレティルトほどではないが、ナーダルにも王子としての多少の自覚はある。だから、いくら厚意ある言葉でもそれを信じて身を委ねることは出来ない。もしナーダルたちを探しているリーシェルが、彼らを匿っている人物がいると知れば、容赦なく命を狙い領主ならば国や土地を滅ぼすだろう。彼女にはそれを躊躇いなく行えてしまうだけの力と決意がある。
「陛下のお言葉、ありがたいと思ってますよ。だからこそ、僕を一介の魔導士・ナーダルとして扱っていただきたいんです」
ただの旅のもの、ただの魔力協会の人間として扱ってもらえれば、正体を一切知らずに関わっていれば彼女の鉄槌が下ることはないだろう。レティルトは彼らに黙っていろと言ったが、ナーダルからすればそれよりも本当に何も知らなかったという体でいて欲しかった。知っていて隠していたのと、何も知らなかったのでは意味が違う。リーシェル相手に嘘をつくということは変わらないのだが。
「陛下、ひとつだけ。王宮魔導士としての忠告をさせてください」
ナーダルの瞳が真剣な光を放つ。
「アストル王太子ですが、出来るだけ早く魔力協会の医師に診せてください」
「なに?」
ナーダルは珍しく小難しい表情を浮かべる。
「あの魔術の影響で、王太子は魔力に敏感な体質になってます。さらに、無意識に魔力を扱ってしまっていて、このまま放っておけば魔力の暴走や乗っ取りが起きてもおかしくはありません」
「あの時は何もないと言われたぞ」
「魔力を扱う人間を近くに置かなかったことで芽が出ることが防止されていたんでしょう」
ひとつの事件がかつてあった。その事件が何なのか、誰が巻き込まれ、誰が巻き起こしたのか、どのような影響を与えられたのかはほとんどの人間が知らない。それを知っているのはウィルト国王と、事件を巻き起こした魔法術師が所属していた組織・魔力協会の人間だけだった。
その事件以来、ウィルト国王は魔力を毛嫌いし魔力協会の人間を一切よせつけなくなった。結果として、ウィルト国王の判断と行動がアストルを守っていた。
「目覚めた力はもう歯止めがききません」
ナーダルたちが去ったところで、魔力に影響されたその体質が自然と元に戻るわけではない。
「一応、僕から会長に報告はさせて頂きます。おそらくフィルナル会長から話が来ると思うので、あとは陛下の判断を僕らは尊重します」
無意識の魔力の覚醒は非常に危険だった。魔力は確かに心の力ではあるが、自分の感情を何の問題もなくコントロールできる人間などいない。魔法術師たちはそのことを自負し、そのなかで魔力のリスクを学んでおり、さらに魔法術師であるという身分証──協会章を身につけることで互いに魔力の暴走に注意し合うことをしている。
自分で感情をコントロールするからこそ、魔力の特性を利用して魔法や魔術を使うことが出来る。だが、感情に自分自身を支配されるというケースがある。怒りに任せた言葉や行動、哀しみによる無気力、楽しさゆえのハメを外しすぎる行動など、ある程度は許容されることでも度を超えて己を制御出来なければ、それは感情に支配されている。
単に感情に支配されているだけならよくあることだが、感情に起因した魔力が動いてしまえば厄介だった。コントロールするべき魔力が逆に主人を操ってしまうことがあり、たまに魔力に目覚めて日が浅かったり、目覚めていることに気付かない人間が魔力に支配されている時がある。
「陛下、今までお世話になりました」
深々と頭を下げナーダルは城に置いてもらったこと、期間限定の王宮魔法術師にしてもらったことに礼を言う。魔力をとことん嫌うウィルト国王にとって、魔力協会の人間を近くに置くことは生半可な覚悟ではない。分かっていながらもここにいさせてもらうという、ウィルト国王の厚意に甘えていたのだった。
荷物を背負い、城門を潜ったルーシャは数歩歩いたところで後ろを振り返る。持つべきものを持ち、交わすべき挨拶もした。もはや、ここにいる理由は何もない。
「マスター」
数歩先で足を止めてルーシャを待つ師匠を呼ぶ。
「ん?」
「これから、どこへ向かうんですか?」
城から目を離し、再び足を進めたルーシャは隣に立つナーダルに問いかける。旅をしたことのないルーシャにとってこれからの生活は未知数で、どんなことが起きるのか楽しみでもあり緊張するものでもある。
「んー、魔力の導くままかな」
「それって、目的地が決まってないってことじゃないですか」
ナーダルの言葉に笑ってツッコミを入れながら、ルーシャは暖かくなりつつ春の風を感じる。雪が溶け日に日に温かくなる陽気のなか、ルーシャはアストルとともに過ごした場所を離れるのだった。
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本当に色々あった、王女様たちの失踪事件だった。
雪原に行ったり、兄さんがついてきちゃったり、初めて本格的な魔法術を使ったり、レティルト王子が犯人だったり、マスターが王子様だったり、オールド姫がシスターになったり・・・。
めちゃくちゃ天こ盛りだったなー。
そして、ついにマスターと城を離れます。いつか来るとは思ってたし、兄さんと離れるのは分かっていた。でも、やっぱり寂しいなー。ずっと一緒にやってきてたから。ウィルト陛下も、ずっと兄さんと一緒にいさせてくれて、居場所もくれて・・・違うけどお父さんみたいにしてくれていたし。父親ってものはずっといなかったから分からないけど、陛下はたぶんそういうのに近かったと思う。本当にありがたい。
いつか、ちゃんと恩返ししたい!でも、陛下は魔力も魔法術師も魔力協会も嫌いだからなぁ・・・。
この章では個人的に好きなオールドとレティルトさんを出すことができ、嬉しく思ってます。この二人にはまだまだ活躍してもらう予定です。
次は新章に入ります。次こそはルーシャが頑張ってくれる予定です!




