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ルーシャの魔法・魔術日記  作者: 万寿実
第十二章 神の庭
103/143

p.101 任務

更新が大変遅くなりました。作者、ちゃんと生きております。

 

 世界を旅するルーシャとセトはレイズルの街を出て様々な国や地域を渡り歩く。見知らぬ文化や生活にセトは目を輝かせ、そして日に日に知識と技術を磨いていく。


 そんな二人は赤道直下のリッタ国へとやって来ていた。ルーシャはかつてナーダルとともにこの国を訪れたことがある、神秘の鏡に吸い寄せられ。

 未知の場所へやってきて、とある場所にいる主と呼ばれる大鳥に出会った。


 少し前の海属の秘宝において、リッタ気流を通じて世界の魔力を浄化していたのが鳳凰と呼ばれる存在なのだとルーシャは知った。


 だが、今回はその件とは別の用事があり常夏の国へと足を踏み入れていた。




 * * *




 数日前、ルーシャたちは別の国にいた。ルーシャたちのいた北半球では冬が到来を迎えており冷たい空気に身を投じていた。寒さが日に日に強くなっていくのを感じながら、暖かい鍋料理で暖をとったり、ホットドリンクでほっこりとしたり、長風呂でまったりしたり過ごしていた。


 そんななか、たまたま立ち寄った魔力協会支部にてルーシャはとある人物と再会を果たす。


 仕事の依頼を請けに立ち寄った支部で、ルーシャは支部員から呼び止められセトと共に客間に通された。突然のことに何が何だか分からなかったが、客間にいた人物を見て背筋が伸びる。



「久しぶりだな」



 その声に、その瞳に見えることは未だに緊張しかない。鋭く貫くような視線と声にルーシャは深々と頭を下げる。


「お久しぶりです、フィルナル会長」


 そこにいたのは魔法術師を束ねるフィルナルだった。

 ルーシャにならいセトは静かに頭を下げる。


「どこの子猫を拾ったかと思ったが、しっかりしてそうだな」


 どこか物珍しそうにセトを見つめながらフィルナルは口を開く。

 セトのことはその魔力の性質も含め、フィルナルに報告はしていた。魔力ひとつで自然現象に介入してしまう魔力は危険でもあり、フィルナルはセトのことを少しさぐってみたが特に何も分からなかった。


 出生や血縁などあれば何かセト自身のこともわかるのではないかと踏んだのだが、セトのいたという村や孤児院を調べさせたが何もわからなかったという。

 数年前に火事があったこと、そこで数名が亡くなったことなどは分かったがそれ以上の情報は得られなかった。


 元々、反魔力思想の色濃い地域であり協会員はまず出入りが難しい。さらに隠密に調べようにも村人同士の結託も強く、外からの人間に容易く情報を話さないことも多い。


 話でしか聞いたことの無い本人を目の前にし、フィルナルは少し興味深そうにセトを見すえる。



「会長がお呼びになったということは・・」



 頭を上げたルーシャは気まずそうに口を開く。



「仕事だ」


 その言葉にルーシャは(やっぱりかー・・・)と心の中で呟く。師匠の後を継ぎ、ルーシャはフィルナルからの仕事を請け負っている。時には書簡で、時には直接連絡がきて、時にはこうして対面して様々なことを依頼される。


 会長のポケットマネーから報酬が得られるとはいえ、失敗できない仕事にルーシャは毎回背筋が伸びる。フィルナルが託してくる仕事は公には頼めないものが多く、難易度は高いし機密事項は多いし・・・と悩みが多い。


「今回は何を?」


 渋々ながらも覚悟を決めているルーシャは仕事内容を確認する。



「『神の庭』の調査だ」



 フィルナルは躊躇うことなく調査依頼を口にする。



「「神の庭?」」



 初めて聞いた言葉にルーシャはおろか、静かに黙っていたセトも思わずその言葉を復唱する。


「随分と昔から良くない噂を耳にしてな。何でも願いが叶うやら、死者の蘇生ができるやら、神の力を得られるやら」


「それだけ聞けば、何だか夢のようなとこですけどね」


 フィルナルの言葉にルーシャは嫌な予感がしながらも自分の感想を口にする。


「魔法術であれ、何かしらの現象であれ・・・強い力には相応のリスクや反動が必ずある。もし、知らぬ者がその力を手にすれば容易に誰かを殺すことにも、国や世界を滅ぼすことにも繋がりかねん」


「たしかに。何か神の庭に関する誰かの目撃とか情報はないんですか?」


 フィルナルは眉間に皺を寄せ口を開く。本当にあるのかどうかも怪しいというその「神の庭」には、昔から何かしらの噂が長らく語られてきた。冒険心を掻き立てられた魔法術師が昔から探してはいるが、なかなか見つけるまでに至っておらず存在そのものが誰かの空想だったのではと言われている。


「それが全くない」


 探しに行ったという魔法術師の記録などを調べたが、それらしきものはまったく見当たらない。むしろ、神の庭を探しに行く前の記録はあるが、それ以降がひとつも話すらもあがってこない。


「たしかに逆に怪しいですね・・・」


 世界中には未知なる場所やものもまだ数多く存在しており、それらに関することは情報が少ないにしろ「どこへ行ったが何もなかった」「何が関係あると思ったが無関係だった」という類の情報は少なからず残っている。


 それすらも残っていないとなると・・・。



「調査先で消息をたっている可能性が高い」



 フィルナルの言葉にルーシャは息をのみ、(激ヤバ案件すぎる)と心の中で呟く。



「でも、そもそも場所も何も分からないんじゃ調査の仕様が・・・」



 黙って話を聞いていたセトが恐る恐る口を開く。



「いくつかめぼしい場所の候補をつきとめた。このリスト先を調べろ」



 セトの言葉にフィルナルはにやりと笑いルーシャに1枚の紙切れを手渡す。そこには数カ国の住所が記載されており、場所も文化も何もかもに統一性のないものばかりだった。


「これらはリルトから聴取した、古からの魔法術と深く関わる場所だ。全部詳しく調べたいが、取り急ぎ神の庭を優先する」


 つまり、数箇所の中から神の庭を探し出し捜査をしろという。


(これはなかなかの・・・)


 無理難題にルーシャは愕然とする。どのようなものなのかも分からないのに、候補先ばかりが多数ある。探しに行ったところで神の庭があるのかどうかさえひと目では分からないだろう。


「では頼んだ」


 フィルナルはそう言い、ルーシャたちに別れの言葉を述べてさっさと客間を出ていく。

 取り残されたルーシャは客間にあった椅子に座り込み、リストを見つめて頭を抱える。リスト先には共通点もなければ、なにか気になるものというものもない。ただ羅列された住所を見たところで、地元民でもなければそこに何があるのかなど分からない。




 先に図書館で地図と照らし合わせる?




 そんなことも一瞬脳裏によぎるが・・・。




「考えても仕方ない、1番上から行こ!」



 頼まれてしまったものは仕方ないと腹を括り、ルーシャは現在地から一番近い国がリストの1番上にあったため、そこを次なる目的地に定める。






 そうしてルーシャは今現在、セトとともにリッタ国に足を踏み入れていた。












──────────


またもや会長から仕事を依頼された。

信頼してもらっている証なのかもしれないけど、今回はなかなか激ヤバ案件なんですけど・・・。


そもそもどんなものかも分からないって、見つけてもそれが神の庭って気づけるのかなー。


名前的には、きっとなんらかの力の強い場所、そこで発動される魔法術のことを指すのかもしれないけど。


あくまで現時点での予想だし、調査実績がないから分からないことだらけだし・・・。



困ったもんだ。




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