復讐に溺れた鬼、再び
一体何があったか、何一つとして覚えていなかった。
だが、周りの話を聴くと、とても状況は悪くなっていた。
世界中で異常現象が多発し、人々の心は荒む一方であった。
今回の話はしかし、本題はそこではない。
一部分の人間はそれで得をしていた、というところに注目を当てるとしよう。
その得をしていた者たちこそ、宗教関係者である。
その中で一人、素性を明かさず絶大な人気を誇る占術師がいた。
「・・・お名前は?」
女らしい、その占術師は妖しくも艶やかな声色で囁いた。
「路木ハルト」
「路木ッ!!」
占術師があまりに過剰な反応をするものだから、俺は驚いて少しばかり引いてしまった。
「・・・すいません。あまり佳い思い出がないもので」
「はぁ・・・」
知り合いの路木さんにでも嫌な事をされたのか、その占術師は【路木】姓があまり好きでないようだった。
・・・俺の記憶では、【路木】を名のる人はもう俺の身内くらいと思ったが。
「誕生日、・・・教えて頂いても?」
「10月28日です」
「・・・アナタの運命は、決まっているのです」
「と、言いますと?」
「・・・私に、復讐されるということよッッ!」
バッとローブを脱ぎ捨てる。
そこにいたのは。
「イドゥン=ラグ・ヴィルハイト・・・!!」
「忘れてると思ってたわ、路木ハルト」
イドゥン=ラグ・ヴィルハイトは、《ミドガルド》の神殿で巫女を務めていた女性である。
行方不明になったと聞いていたが、なぜだ?
「アナタに奪われた私の全て。
それを奪い返す為に、修羅にも鬼にもなったわ」
鬼。
そのフレーズを聴いた瞬間、記憶の中で様々な事が繋がりはじめた。
《アスガルド》の森の中での、鬼とのチェイス。
俺を追いつめるように流されていた、ウワサ。
そして夢で俺を追放した、睛堂の幻。
「全部、アンタだったのか・・・?!」
「・・・ッ!」
応えることなく、イドゥンは襲いかかってきた。




