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五秒の思考
睛堂を殴ろうと駆けていく僅かな瞬間。
ふっ、と考える。
・・・俺は。
俺は今、何をしている?
何を得ようとしている?
何を失おうとしている?
何を?何を?何を・・・?
・・・得もせず失いもせず、ただただ漂うだけなのか。
スネアドラムの拍動が次第に急く。
強く激しく、この永い一瞬にビートを叩き刻む。
・・・否、漂うだけなら、俺は全て喪って命を沈めよう。
ならば、得る。
何を?
・・・睛堂の識る事象、その全てか。
よし、全ては決した。なれば後は。
《殴るだけだ》
約五秒の間、そんな思考に浸かりながら双眸をしかし、睛堂にのみ向けていたハルト。
・・・睛堂、やっぱりアンタは殴る。
俺はアンタの知識を奪う。
その為に。




