一謎去ってまた一謎
校長のなぞなぞは終わらない。
鱈水沢高校図書室。
そこは一言で言えば迷宮である。
決してキレイとは言えない棚の羅列。
無造作に積まれた蔵書たち。
それらは市内のどこよりも多い。
市立図書館の司書がわざわざ出向いて来て本を借りに来ようとするくらいだ。
そんな図書室で【卜部兼好】に関する本を探す。
桜海と璃瑠は旅のために勉強をしていない。
玉藻前はそもそも《勉強を受ける》という感覚のない時代から生きているため、論外である。
すなわち、ここで頼れるのは爾鏤先生のもつ語学知識だけなのである。
先生には心当たりがあるようだった。
「あ・・・か・・・き、く、け。ここね」
「え?【う】じゃないんですか?」
「卜部さんのペンネームは【け】なのよ」
と言って、とある本を棚から出す。
「彼、卜部兼好こと兼好法師と言えばコレね。《徒然草》」
玉藻前はそのとき、手紙を見ていた。
「日記の始めの文・・・序文?」
「え?」
「ヌシよ、序文を読んでくりゃ。わちきの考えが正しければ、これで正解が解る」
先生は玉藻前のお願いに答えた。
「わかったわ。・・・『つれづれなるままに、日くらし硯にむかいて、心にうつりゆくよしなしことを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。』」
「うんと、数字じゃな。【55】は・・・《ほ》かの?」
「「「え?」」」
「この手紙の数字は何文字目かを示しておる」
こうして謎を解いていった玉藻前たちは、ようやくその答えに辿り着くことができた。
《ほんとうのはじまり》
「・・・コレって・・・」
「かなりまずいの」
そう。
まだ始まっていなかった。
今までの旅はそも、余興でしかなかった?
前日譚だったとでもいうのか。
四人の間にまた、重苦しい空気が流れる。




