謎を記す手紙
その日は曇りだった。
晴れ間ひとつない曇りだった。
ハルトはやはり眼を覚まさない。
病室と化した、高校の事務室。
少女たちは顔をしかめ、ハルトを囲んで枯れてもなお沸き上がる哀しみをこらえようとする。
担任の爾鏤先生も、ハルトの変わり果てた姿に愕然とし、泣いた。
《声》との戦いは終わった。
主犯の消息不明という、あっけない形ではあったが。
その成果もまた、壮大にあっけなかった。
《何もない空間》の発見、そして一本の《剣》。
それだけ。たったそれだけだった。
代償だけが大きく、凄惨なものだ。
旅団の出費の代替え、《暁の七日》以降相次ぐ暴動、そして何より、ハルトの意識不明。
「・・・ねぇ」
重苦しい空気の中、璃瑠が口を開く。
「世界はまだ、完璧に治ったわけじゃないよね。・・・だって、私は死んだ人間。そんなのがココにいること自体、普通じゃないわけだし」
あ・・・。
桜海は、その事にさえ気づいていなかった。
いや、気づくうんぬんではない。
彼女がいた日常こそ、桜海にとっての普通だったのだ。
それが彼女が死んで、非日常になった。
四人いて始めて、【普通の日常】だった。
いつの間にか、壊れてしまった、日常。
「私は」
桜海は思わず、声を出す。
「私はそんな普通、ううんそんな世界なら、完治んなくていい。そんなの、欲しかった日常じゃないもん」
すると、
「・・・」
驚いているのだろう、声も出せないまま璃瑠は、その瞳から涙を流していた。
コトン。
突然の物音に全員が驚く。
「・・・コレって・・・」
「・・・そうだね」
手紙。高校の校章の捺された手紙だった。
その場にいた誰もが既に、誰からのものか判っていた。
「「「《校長先生》からだね」」」




