《暁の七日》七日目 怠惰の日・後編
たまには怠けて、平和を味わってもいいじゃない。
そう言っていつも通りだらだらと。
ゆったりした非日常を生きていく。
ハルト、起きて。
そうやってどこかで声が聞こえた。
僕じゃなくて、アイツを呼ぶ声が。
あの人はいつも僕じゃない。
ハルトを呼ぶんだ。
なんでだ?
なんで僕じゃないんだ?
なんで僕じゃだめなんだ?
僕が近くにいても、遠くのハルトを思っているのが彼女だ。
いつもそうだった。
仁田部 璃瑠。
僕が想う人。そして彼女はハルトを想う人。
すれ違っていく。そうしていつまでも届かない。
届かないまま、彼女は去ってしまった。
彼女が想っていたハルトの手で息の根を止められ、それでいて幸せそうに。
ハルトに、アンタの腕の中でいけるから、と。
彼女は確かにそう言った。
やはり僕じゃない。
だが。
僕の見間違いでなければ、それは彼女だった。
あの時永遠に失われてしまった僕の、最愛の人。
生き返っていた。それだけで嬉しかった。
それが普通でないことは重々理解してはいたものの、その歓びといったら抑えようがなかった。
それなのに。
こんなに想っていたのに。
「・・・ハルト!!」
それでもやはり、僕じゃない。
彼女の瞳には僕は映っていなかった。
ハルトしか見えていなかった。
・・・やっぱり。
思わずボソッと声が漏れてしまったが、それさえも聞こえていないようで、璃瑠は旅団の荷台に飛び乗って来てハルトの肩を揺すった。
「ハルト、起きて!!」
ああ、彼女の声が遠く聞こえてくる。
どんどん遠ざかる。
・・・。
こんなに辛いと知っていたら、恋などしなかったろうに。
どんな痛みより、どんな苦よりも辛い。
もういっそ、忘れてしまいたい。
それでお終いにすれば、きっと楽だ。
そう、きっと、楽だ。
耳を塞げ、目を瞑れ、黙れ。
ほら、これでもう何も解らない。
そのまま深みへ落ちて、忘れてしまえ。
お仕舞いだ、お終いだ。
このまま何も解らないまま、堕落するのも悪くないかも知れない。
だらけ、怠け、堕ちていく・・・。
それも良しと考えてしまうほど、和沙の心は失恋に荒んでいた。
もういいや、それでも。
ハルト、璃瑠さんはお前を選んだんだ。
幸せにしてやらなきゃ、絶対に許さないからな。
《暁の七日》と呼ばれたこの七日間は、密かな恋心をどこかに隠したまま、人々に語り継がれた。
きっとそれは、今もどこかで隠れたままである。
どうも、あーもんどツリーでございます。
気が付けばあっという間にこの物語も後半戦。
和沙の恋の行方はどうなるのか、ハルトはハルトでしっかりと復帰するのか。
次回から新章です。
どうぞよろしくお願いします。
それでは。




