三日前、早朝の悲劇
ハルトがいない。
それに気が付いて目が覚めた璃瑠は、まどろみの中にいた桜海、丸まって寝ていた玉藻前を起こして言った。
「ハルトがいないの」
その台詞は二人ともを起こすのには最強の言葉。
「えッ?」
「そんな・・・」
絶望で頭が冴えて来ると、桜海はふと、《あの事件》のことを思い出してしまった。
《アスガルド革命》である。
目を付けられたハルトは誘拐され、暴動の中桜海を守ろうとした父・飛鳥は亡くなってしまった。
彼女にとって最大、最悪の悲劇である。
それがまた、起こってしまった・・・?
胃の底から嗚咽が込み上げる。
「もう、独りは嫌だよ・・・」
弱音を吐く桜海に、璃瑠は驚いていた。
彼女のそんな姿、見たことがなかったのだ。
「独りじゃないよ」
「わちきらがいるじゃて、のう?」
そうだけど、と桜海はなおも弱気である。
・・・ペチッ。
可愛い音が響く。
玉藻前が桜海をぶったのだ。
驚きに、桜海は目を皿のようにした。
「主の泣き顔など、見とうない」
「でも」
「でも何じゃ?わちきだけでない、璃瑠もそうじゃ。みんな独りは辛い。
だから支え合う。違うとるかえ?
寂しいのは解る。痛いほどの。
なればこそ、埋め合わせにはならんかもじゃが、わちきらが一緒にいるからの?」
桜海は黙って聞いていた。
その頬には大粒の涙がボロボロと滝のように流れていく。
「ごめんなさい。私、あなたたちの事も考えずに・・・」
「構わん。けれど主よ、すべきことはせねばならんぞ」
「解ってる」
少女たちは結束した。
愛する人、一人の青年のために。




