《暁の七日》五日目 憤怒の日
怒りはどうして、こんなにも気持ち悪いのか。
もう、傷付け合うのは嫌だ・・・。
なんでだよ、他に方法はないのか?
ハルト、同じモノは二つ同時には存在出来ない。
そういう風に天が決めたんだよ。
だから、キミとボクとは一緒にはいられない。
一人しか、選ばれないんだよ。
「あっち」
といって、少女はとある方角を指差した。
【鱈水沢高校】のある方だ。
「ありがとう、それじゃっ」
といって走り出そうとしたとき、少女は意味深なことを口にした。
「またすぐに、会える」
ソイツは、確かにそこにいた。
「待てよ」
「あら、来てしまったのだねぇ?」
ソイツは妙なしゃべりではあったが、確かに《声》だった。
口調からするに、全て予測できていてわざと、そう言っている風だ。
「キミはもうすぐ消えるのに、こんなところにいていいのかい?」
「・・・どういう意味だ」
「キミはまだ逝ってないよ。意識や無意識を越えたところを彷徨っているだけさ」
「何が言いたい?」
「キミは意識だけがここらを風来坊している、とでも言っておくよ」
相変わらずニヘラニヘラおちゃらけたやつだ。
そんなに悪戯がたのしいんだな、コイツ。
・・・悪戯。
その言葉が次々に、見聞きしたあらゆる単語を呼び覚ます。
産女、ロキ、ウートガルザ、ムスビ、・・・。
なぜ気付かなかったのだろう。
ロキは悪戯の神であり、別名ウートガルザ。
ロキは女神をたぶらかし、命を屠る。
命。結びの神、産生・・・。
ごちゃついた思考の中で絡み合うように繋がっていくフレーズ達。
《ロキ》と《ムスビ》、一連の因果。
開闢された唯一つの命。
二つになり、互いをたぶらかす。
傷付け合う。
「・・・解ったんだね?」
「どうしても、方法はないのか?」
「これは運命。不変の理なんだ」
どうしても、傷付け合わなければ、この悪戯は終わらないのだろうか?
思考を振り切るように、ハルトは地を蹴った。




