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トネリコの繋ぐ宙 - 2・続 開闢篇  作者: あーもんどツリー
11 悪戯(ゲーム)の舞台は深みへ向かう
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《暁の七日》三日目 嫉妬の日3

《ヨトゥンヘイム》、望月の丘。

見晴らしの佳いその上に、少女はいた。

「・・・」

彼女は頭上に燦然(さんぜん)(きら)めく満月をながめながら、足首の違和感を気にしつつ辺りを警戒していた。

月光に照らされて、少女の肢体は美しさを増し、彼女の持つ色素の薄い色白な肌は、冬にソメイヨシノの咲いたような可憐さを生み出していた。


彼女の意識が向けられた先には、どこかに繋がれていただろう切れた鎖の付いた(かせ)が包んだ、華奢(きゃしゃ)な左足が。

辺りには人ならざる者たちの、百以上の気配。


「・・・」

彼女のその状況を見て思われる事としては冷静。

焦るでもなく恐れるでもなく、冷静の二文字。


少女は、残酷なまでに落ち着いていたのである。



その時、腹を空かせていたのだろうか、咆哮(ほうこう)を挙げ一体の巨人が少女に向かって来た。

体格でいうのなら少女の五倍はあろうかというサイズの、恰幅(かっぷく)のいい巨人である。


「グルゥウオォォォォォオッッ!!」


「・・・?」

少女は銀髪を(ひるがえ)して、向かって来る巨人の方を向いた。そして。


《HASTA LA VISTA》


彼女はそう言って、笑った。

巨人は思わずそのほほ笑みの美しさに心奪われ、戦意や食欲、その他諸々の意識全てを奪われてしまった。


この世界に天使が降り立った、と思いさえした。


数十秒もの間、巨人はその場に立ち尽くしたまま丘の上の天使に見とれていた。

そして。


・・・ドスンッッ!!


巨人は倒れてしまった。


彼は知らなかったのだ。

彼女が発した言葉の意味を、彼女の正体を。


彼女の言ったこの言葉。

《HASTA LA VISTA(さようなら)


そして彼女の特徴。

・見とれた者の命を奪う

・左足の枷、色素の薄い肌、銀髪


実は彼女は北国の冬の精霊ターニャだった。

しかも彼女、自我を持ち、言語を操る史上初の《ターニャ》なのだ。

彼女には名前もあった。

名を《レオナーク》という彼女は、とある森の中の監獄に入れられていた。


あまりに力が強すぎるゆえに、これまで日の目を見ることなく生きていた。

あいさつをしただけで相手の命を意のままに操れるのだ、同族の者たちから恐れられても仕方がないと思う。


古来、言葉は魔法であった。

文字を神から授かったものとして扱い、その全てを理解した者を賢者として崇めたり。

あるいは文字に《隠されたメッセージ》を見いだし、呪術的、宗教的な意味合いを含んだものとして考察し、改めていったり。


科学の発展した現代国家の《ミドガルド》においても、それは魔法である。


それは心を動かすのだから。



《レオナーク》はしかし、その魔法をコントロールできなかったがゆえに、命までもを奪ってしまったりしたのである。

本人は故意でなかったとはいえ、殺人は殺人。

監獄の中で十数年、魔法を忘れるまで入れておこう。

そのはずだったが、彼女は脱獄し、魔法を忘れることもなかったのだった。

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