《暁の七日》三日目 嫉妬の日2
ああ、これは嫉妬なんだ。
そうインヴィが気付いたのは昼の青々とした空が、少しずつ白くなってきた頃だった。
いわゆる夕暮れの、あの茜いろが迫る前である。
「急げ!《アスガルド》までもうすぐだぞッ!」
初冬の、足の速い、赤黒い夕闇が騎士の背中を追いかけて来る。
あれが背中を追い越したなら、あっという間に夜が来る。
そうしたら彼らは、望まぬ足止めを食らうのだ。
それはこの旅の予定に、大幅な遅れが生じ、《真実》に辿り着かないまま終わってしまうことを意味している。
歩みを止めるな、止めた時、それはこの旅の末に勝利をおさめる時だ。
走れ、走れ、走れ、走れ、走れ、・・・。
限界を越えようと、馬が力尽きようと、何を前にしても《騎士》は走り続けた。
【真実】を知る為に、【玉座】を奪還する為に。
夜。
十ほどの影は《アスガルド》の街の中を闊歩する大行列、街の門限に合せ帰還した旅商人たちの旅団に紛れ、しばらくの後コッソリとその中から抜け出すと、《国立図書館》に侵入した。
「盗っ人まがいの事をやるなんて思わなんだ」
「まったくその通りだよ」
「・・・行くぞ」
スッ。・・・トトトッ、スウウッ。
十何冊かの厚い書物を棚から抜き出すと、和沙は皆に配って言った。
「読め。《トネリコ》に関する記述を全部、な」
和沙の言葉を聞くなり全員が思惑を察したようで、各々(おのおの)にやけたり目を丸くしたりしていた。
同時、《ヨトゥンヘイム》。
この巨人の国で、フラフラとさまよう人影が。
「・・・」
少女は宙を見上げていた。




