《暁の七日》二日目 色欲の日2
「レイ=ヴァン・スミルスキー・・・?」
な・・・ッ!
《ターニャ》がしゃべった、だと?!
俺が驚いているのにはちゃんとした理由があった。
俺、レイ=ヴァン・スミルスキーの故郷では、《ターニャ》は人とは接しないとされていた。
ところが、目の前にいる本物はなんと、レイ=ヴァンに・・・そう、何を隠そうこの俺に話しかけてきたのだ!他の誰でもない、この俺に!!
故郷のみんながきいたらおったまげるだろうな。
嘘だと非難されるかも知れないが、それでもいい。
こんな美人と、憧れてやまなかったあの《ターニャ》と話した。その実感さえあればそれでいい。
「レイ=ヴァン・・・、貴方は私のこと、どう思う・・・?」
「とても・・・素敵だよ」
思わず感嘆の声が漏れる。
俺には村で、俺の帰りを待っている許嫁がいるっていうのに。
ああ、チクショウ。
こんなべっぴんの誘惑、とても耐えられるはずがない。
レイ=ヴァンはその色仕掛けに、コロッという音が聞こえるほどあっさりと堕ちた。
夢見心地でウハウハしているレイ=ヴァンの眼を覚ましたのは、他でもない和沙だった。
どこからともなく出てきたかと思えば、アイツ、とんでもないこと言って来たんだ。
「おいレイ=ヴァン、お前、裏切ったの?」
俺は焦って、必死に身の潔白を訴えたわな。
「ッ!ち、違うんだこれにはれっきとした都合があってだな・・・」
「言い訳すんな、見苦しい」
ザクリ。ウグッ。
こっちはお前の言葉が刺さって息苦しいわ。
俺はもう《ターニャ》の眼も気にせずオイオイと泣いてしまった。
「違ェんだよぉぉ、俺は何もしてねぇんだぁぁ」
「泣き落しかよ、まったく恥知らずが」
ひどくない?今のひどくない?!
恥知らず、だと?!アイツめ、人をバカにするのも大概にしやがれってんだ。
今のはさすがに頭に来たぞ。
コノヤロウ、目にもの見せてやる。
「・・・【政祀、血の燃ゆることを知らぬ狩人の弩よ、召されたまえ、我が腕の中に】ッ!!」
バツンッ、バリバリッ。
どこからともなく、雷鳴が轟く。
俺が手を伸ばすとそこに、雷が落ちてきた。
「・・・!」
和沙もこれには、少なからず驚いたようだった。
その直後。
俺の手の中にあったのは巨大な金属製の弓。
「お前には、悔いることがないのか?」
ヤツは少し間を置いて、しかし首を横に振った。
「そうか。なら消えろぉぉぉぉおぉぉおッッ!」
スパシュッ。
弓が黄金の矢を放った。




