《九界会議》議事録 その二
事件の舞台となったのは、《スヴァルトアルヴヘイム》のとある街。
常に暗いその世界では、まず朝は来ない。
朝のみならず、昼も来ない。
ここは常夜の闇が、朝、街を包む霧のように立ち込める世。
そんな常闇の世で、それは起きた。
「逃げろぉぉぉぉおッ」
ここにいるはずもない化物が。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃいいッッ!」
そこにいるはずの妖精を。
『グルルルルルゥオオッ・・・!!』
「ギェェアァァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァァ゛アア゛」
パクッ。ムシャムシャ。・・・ペッ。
突如現れた何かが、妖精を喰っていたのだ。
そしてその《なにか》は、妖精の世界の奥に封印されていた【あるもの】を盗んで消えた。
『それが【中枢への扉】を開く鍵であります』
『『『!!!』』』
一同が驚くのも仕方ない。
なぜならそれは《ユグドラシル》の心臓ともいえる中枢部・【玉座】、通称【フリズスキャルヴ】へ入る為の鍵なのだ。
『いかがなさるか。選択の余地は最早、あられますまい』
『戦だ!戦せねばならぬか!!』
『静粛になされよ、みなさん!!この争いは意味あるものでない。
時が迫り焦りの募る今なればこそ、我々が平静を保たずにどうするのですッ!
確かに【玉座】への鍵を盗まれた事は我々の管理への努力不足が招いた重大な事故です。
だが、それ自体はまだ事件ではありません。
重要なのはその前段階、犯人が奪う前に、尊ぶべき、大勢の命を奪ったことではないのですか?
その命の為に戦うことは、みにくい事ではないでしょう。
人々はその戦いを、《聖戦》と呼ぶのですから』
その女性・・・、《ムスプルヘイム》代表として会議に参加していた、イャパ・ルルゥトゥ。
彼女の放ったこの言葉が、多くの賛同を得、結果として事実上の指導者として推された。
炎の如き、庶民にコミットした改革への熱さ。
氷の如き、論理的にアタックしていく頭脳。
二つともを兼ね備えた彼女は、一躍有名になり、その後起こる《声》との戦争の司令官となるが、それはまた別の機会に。




