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トネリコの繋ぐ宙 - 2・続 開闢篇  作者: あーもんどツリー
10 NAMELESS TRICK'GAMES
19/69

とある街にて

「・・・なあ、知ってるか?あのウワサ」

「モチロン。巫女の格好した《鬼》のヤツだろ?」

それそれ、と相づちを打って男の一人は笑う。


《鬼》が現れてから、この世界はみるみる狂っているように感じる。

僕はそんな狂いを《不具合》と仮称している。

時おり死人が甦ったり、滅多に人前に姿を現さない《飛竜》が現れたり。

最早世界のバランスがどうこうなんてレベルで、ものを言えないほどに狂ってしまった。

さっき僕の隣で話していたヤツらも、会話の内容はその《世界の不具合》の一つをバカにして笑っていたが、彼ら自体、既に脳が《不具合》に侵されたものだ。


僕は旅人。名前は愛する人を失った時に棄てた。


一部の人はいまだにかつての名である《和沙(かずさ)》と呼ぶこともあるが、もうその名を知っている者も少ない。

何せ皆、《不具合》に巻き込まれたのだ。


今日も憎いほどに、空が青い。

深々とした濃い青。

遠くに空を翔ぶ巨大な影。


・・・影?

「《飛竜》だぁぁぁぁぁぁあッ!!」


隣にいた男らが恐怖に腰を抜かしながら、走り逃げ惑う。

(うるさ)いな、とイライラしながらも、意識は《飛竜》の方に向いていた。


「お前のせいで・・・」

静かな平和が、こわれちゃったじゃないか。


無感情に、機械的に。

静寂を害する命を(ほふ)るのが、僕の仕事。

僕にとって静寂こそが平和であり、喧噪(けんそう)は害悪だ。

人々が平和を求めるのなら、僕はその為に完璧な静寂を生み出そう。


それが例え、人だろうとも。


先ほどの男らが僕の殺意に気付いたのか、こちらを向いて怯え始めた。

僕は間違っちゃいないだろう。

お前らも平和なのが善いのならば。


「しばらく黙ってよ?」


ザッと口角を斬り、声にならない悲鳴を挙げる男らに、僕は満足していた。


そうだよ、それが正しい悲鳴の挙げ方だよ。


と、《飛竜》がグルルとのどを鳴らして、僕を威嚇してきた。

なんだよ(うるさ)いな、教養ないなぁ。

「次はお前だぞ、《オオトカゲ》」


黙れないなら斬ってもいいよね?


口は災いを生む。災いは不幸しか生まない。

誰も不幸になりたくないだろう?

なら何も口にするな。


出来ないなら、安い平和なんて求めるなよ。




だって、僕が与えられるのは平等な平和じゃなくて、完璧な静寂だもの。



・・・ズバシュッ。

《飛竜》はその体を地に落とし、絶命した。

ドォォン・・・。

また騒音が鳴る。

イライラがまた、腹の底で煮え始めた。

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