生き残った2人
ジリリリリ、ジリリリリ。
アラームの音が鳴り響く。
「ん?もう朝か」
彼は寝室を出てテレビを付け、台所に向かう。
手際良く朝ご飯を作り、弁当の準備をする。
彼は柳生鋭剣。
あの悪夢から六年が経ち、彼は16歳の高校二年生になった。
「おい美桜、早く起きないと遅刻だぞ」
「うーん、あとちょっとだけ~」
彼女は上村美桜。
鋭剣の幼なじみであり、あの日の生き残り。
あの日を生き残ったのは、鋭剣と美桜だけ。
「勝手にしろ」
鋭剣はそう言うと弁当の準備の続きをする。
それから数分後、美桜が起きてきた。
鋭剣は弁当の準備を済ませ、朝ご飯を食べていた。
「なんで起こしてくれないの!?」
「起こして起きなかったのはお前だろ」
この二人はいつもこの様なやり取りをする。
(そう言えば今日は…)
鋭剣がふと何かを思い出した瞬間、テレビから何かの特集が始まった。
「そして今日は6月20日、あの"永山村大量殺人失踪事件"から丁度六年が経ちました」
そう、今日はあの日から丁度六年。
「この事件はまだ何一つ手掛かりを掴めていないようですね」
「そうですねぇ、でもこんな事件を人間が起こすなんて考えられないですよねぇ、まるで人外の生物がやったみたいなねぇ」
「この事件で永山村の人口は312人、その内死者96人、行方不明者214人、生存者2人と人間が複数人動いたとしてもこれはどうなんでしょう?」
「複数人動けば可能かも知れませんが、それは行方不明者が居なければですね。この事件から六年経ちましたがまだ1人も見つかっていないですし死体で発見もされていない・・・正直なんとも言えない事件です」
話しはまだ続く。
鋭剣は食器を片付けようと思い台所に向かおうとした。
そこで美桜を見るとガタガタ震えていた。
「生き残りの2人も女の子の方はこの日の記憶を無くし、男の子の方も・・・」
カチッ
鋭剣はテレビを消した。
「大丈夫か?美桜?」
鋭剣が声をかけた事により少し落ち着いたようで、大丈夫と美桜は言葉を返した。
「ならさっさと準備しろ、本当に遅刻するぞ」
「えっ?もっと慰めてよ!」
彼らはあの日以降は施設で暮らしていた。
そして高校入学と同時に村の住人が残したお金を手にし、施設を出てアパートを借りて2人で生活をしている。
美桜の準備が出来て家を出る時、鋭剣は袋に入った長いものを手にした。
「やっぱりそれは持っていくんだね」
「奴らがいつ現れるかわからないからな」
あの日から六年。
この日から鋭剣の復讐が始まる。