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32. お呼びでない

 突然のシルフの思念に驚きつつも、家の周りの様子を調べるために玄関へ駆け足で向かう。美和さんにも声を掛けて一緒に来て貰う。


『シルフ、一体どういうこと?』

『う~ん、誰かが魔獣に追われている? そしてこっちに近づいてきている』

『そこ、何で疑問系なの』

『だってよく分からないんだよね……』


 玄関に出てみたが、外の様子はいつも通り。特に不審な物音や、不穏な雰囲気は今のところ感じられない。


『というか、シルフって精霊だよね。どうにかして状況の把握出来るんじゃないの?』

『実は能力が制限されちゃったから、すべてを把握出来なくなっちゃったんだよね』

「はい?」


 いきなりのカミングアウトに思わず声が出てしまう。


『ほら、君とそれなりの頻度で会話しているのに、精霊としての全権能を使えると、君に余計な事を喋ったり依怙贔屓するんじゃないのかと他の精霊に疑われちゃってね。僕ってあんまり信用がないから、この世界への干渉を色々と制限されちゃったんだよね』


 なんと、僕に話しかけすぎて能力を一部凍結されるということになっているらしい。とんだお転婆精霊さんだ。


『これからは自重しようね』

『それは無いよ~ というか、せっかく話し相手が居るのに、干渉禁止なんてあんまりだと思うんだけどな~ 世界に干渉出来る能力があるんだから有効活用しないともったいないじゃん』


 あ、やっぱり違った。これは本来の意味での確信犯ですよね。

 僕はシルフの残念な思考に若干疲労を感じながらも、周りの様子をもう一度探ってみる。


「う~ん、やっぱり僕には異常を感じることはないけど美和さんはどうかな?」

「私も目立った異常は感じないわね。ただ、違和感みたいなのは確かにあるかもしれないけど……」

「違和感?」

「そう、違和感。あるはずの物がぽっかり無いような感じかしら?」

「う~ん、それじゃあ別の方法で確認してみようかな」


 僕はブレスレットに意識を集中して、気配探知という名のソナー魔法を発動する。

 すると僕の目には周辺の音の様子が色情報として映る。


「特におかしな物音とかは……あれっ?」


 森の中からはどの方向からも自然に発生する音が聞こえてくるのが普通なのだが、一方向だけなぜかその自然音が妙に小さくなっていた。

 アクティブソナーの様に試しにこちらから超音波を送り込んでみるが、反射してくる音が妙に小さい。


『そろそろ目に見える距離ぐらいだと思うよ~』


 のんきな声が僕の頭に響くと共に、目の前に一人の若い女性の姿が現れる。整った顔に、褐色の肌がエキゾチックな雰囲気を醸し出している。身につけているのはベージュのダッフルコートだろうか、ボタンはすべて外れていて中に着ている白地のセーターが見える。そんな彼女が息を乱し大きな胸を上下させながら必死にこちらに向かって走ってきていた。

 何から逃げているのかと疑問に思って後ろを見ると……


「蜂!?」


 大型犬ほどのサイズもありそうな蜂がこちらに向かって飛んできていた。ガチガチと不気味に動く大あごに、ぎらぎらと光る複眼は生理的嫌悪感を感じずにはいられない。その背中にある、目にもとまらぬ速さ動く翅からは、何故か不思議と音が聞こえない。

 蜂本来が持つ速度とその大きさを考えると、随分とゆっくりと飛んでいるように見える。普通に考えたら既にあの女性は蜂に追いつかれているはずだ。


「た、助けてくださーい!」


 女性が息を荒げながらも僕たちに助けを求めてきた。


「とりあえず僕から行くよ」

「分かったわ。出来れば動きを止めてちょうだい」


 僕は素早くうなずき、蜂を瞳の中央に置いた状態で、ブレスレットに意識を向ける。


真空化(エバキュエート)


 魔法を発動すると、蜂の周りの球状の空間から急速に空気が失われていく。球の表面で空気を外側にのみ通すようにしているためだ。空気を掻くことが出来なくなった蜂は地面にぼとりと落ちてしまう。


「今だ、美和さん!」

「分かっているわ」


 僕の右前に移動していた美和さんの周りに、うっすらと紫色の光が漏れ出す。

 それと同時に蜂の頭上に大量のダガーが出現し、


氷剣舞踏(アイシクルダンス)!」


蜂にダガーの雨が降り注ぐ。

 無慈悲に注がれた氷の凶器によって体を引き裂かれた蜂は、暫くヒクヒクと体を痙攣させていたが、暫くするとその動きも止まった。

 僕たちは蜂まで警戒しながら近づき、既に屍となっていることを確認する。


「ありがとうございました。お陰で命拾いしました」


 蜂の近くに居た僕たちに怖ず怖ずと近づき、彼女はそう言うとゆっくりと頭を下げる。


「頭を上げてください。魔獣を相手にするのは日常茶飯事ですから、気にしなくても良いですよ」

「そうよ、別にたいしたことじゃないわ」


 それほど高い頻度で魔獣が現れるわけではないが、そう言っておけば少しは気持ちが楽になるだろう。

 彼女は頭を上げると、走り続けて上気した顔を美和さんに向ける。その目には先ほどとは違う光があるように思えた。


「本当にありがとうございます。私は、アイシャ=ベント=アリムと申します」

やっぱり、1週間に一度でこの分量はちょっと少ないですね。

出来ればもう少し色々と書きたいのですが、結構多忙なのでしばらくはこの分量で続くと思います。

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