表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/35

15. 飛行魔法開発1

 この世界の魔法はかなり万能だ。その力の本質が、イメージを具現化するというものからだ。強大な魔法使いにとっては、想像できる事は実現できることになる。

 しかし、様子を緻密にイメージ出来たとしてもすべての人が平等に魔法を使えるわけでないという事実もある。それは魔力という概念があるからだと考えられている。RPGのファンタジーで出てくる魔力と概念的には同じだが、感覚的なものだから厳密に数値化出来ないという点が異なる。具体的に言うと、同じ魔法でも状況によって魔力が減った(倦怠感を覚えた)と感じる時もあるし、魔力が減らなかった(疲労を全く感じなかった)という場合もある。結局の所、完全に感覚的なものだから、疲れたり倒れたりしたら魔力を沢山使ったことになるし、なんとも無ければ魔力を殆ど使わなかったということになる。

 こんないい加減な概念が、何故魔法使いたちに浸透しているかというと、やはりそれなりの尺度を与えてくれるからだ。つまり、魔力が多いとされる人は重い(魔力を多量に喰う)魔法も問題なく使える場合が多いし、魔力が少ない人は重い魔法を使えないのが普通だ。

 ただし、例外的な事もある。普通の魔法使いは完全にイメージベースで、つまり魔法が発動されたらどうなるのかという状況を想像する事によって魔法を使うが、科学的な手順や物理量の変更によって魔法を使う人もいる。前者を魔法使いメイジというのならば、後者は科学魔法使いサイエンティフィックメイジといったところだろうか。

 優劣はともかく、魔法使いメイジ科学魔法使いサイエンティフィックメイジでは一見して同じ魔法でも必要魔力量が異なるということがよく知られている。つまり、この二つの魔法使いは全く異なる魔法を使用している言える。流派のようなものと思えば分かりやすいか。一般の魔法使いメイジが術を組み上げる方法論は印象構築イメージベース科学魔法使いサイエンティフィックメイジの方法論を手続き構築プロシージャベースと呼んだりする。

 多くの魔法使いは印象構築イメージベースなので、こちらのほうが魔法の種類が多いことは容易に想像できると思う。対して、手続き構築プロシージャベースの魔法は種類が少ない。印象構築イメージベースにあって手続き構築プロシージャルベースにはない魔法の一つとして飛行魔法がある。

 僕は科学魔法使いサイエンティフィックメイジと言えるだろうから、もし実現すれば世界初めての魔法が出来上がることになる。

 美和さんにもらった一週間で、果たして完成するかは分からない――美和さんにはそれほど期待されていないと思う――けど、飛行魔法を完成させることが出来れば、迷いの森を脱出する以上の成果を得ることが出来る。当初の魔法の訓練という目的を考えれば、やってみることは決して無駄じゃないはずだ。

 そう思い、作業を初めて三日が経過した。

 ここまで作業を続けてみて気づいたことがある。手続き構築プロシージャルベースの致命的欠点とでも言えるものが。


「美和さん、これはちょっと不可能かもしれない」


 僕は大きなため息を吐く。

 今は、研究を一時中断し昼食をとっているところだ。今日は生憎の曇天で、今にも雨が降ってきそうな雲行きだ。

 美和さんが捕らえて来たうさぎの肉を思いきり噛み切り、ゆっくりと咀嚼する。


「想像はしていたけど、やはり厳しいかしら?」


 美和さんは、この状況を予期していたらしい。勿論、僕もこうなることは予想出来ていた。それでも、この壁は乗り越えなければならないと分かっていたから挑戦したのだ。


「不可能かもしれないとぼやく程度には絶望的だよ」

「やっぱり、手順を記憶し全てを同時にイメージするのが……」

「そう、難しい。というか、これは人間の頭には実現できない気がする。何かしらの別の方策を考えたほうがいいかもしれないね」


 手続き構築プロシージャルベースの最大の欠点、それは、手続きが膨大になるとまともに魔法を発動できなくなるという点だ。印象構築イメージベースの場合は過程を飛ばしていきなり結論に行くので楽なのだが、手続き構築プロシージャルベースでは、そう簡単にいかない。途中経過を全て記憶し、同時にイメージしなければいけない。マルチタスクが常人より出来るとされるスーパータスカーでもきっと不可能だ。


「一番の解決策は、何らかの方法で手続きを外部に記憶して、魔法を使う際にそれを利用するということなんだろうけど……」

「それならば、魔道具みたいなものが参考になるかもしれないわね。魔道具の基本的な事は覚えているから私に聞いて頂戴」

「うん、それじゃあ早速なんだけど――」


 こうして、詠太は魔道具をヒントに飛行魔法の開発を続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ