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14. Fly or Fall

また遅れてしまいました。申し訳ありません。

 美和さんの発言と、心のなかで考えていたことが見事にハモってしまったけど、気を取り直して会話を続ける。


「迷いの森か……脱出する方法はあるのかな?」

「無いこともないわ。誰でも思いつく方法があるでしょ」

「……空を飛ぶとか?」

「その通りよ。実際、空間が不連続的になっているのは、木よりちょっと高い所までらしいわ」

「話の腰を折っちゃうけど、もし、不連続的なところと連続的なところを跨がる様に物が通過したらどうなるの?」

「綺麗に二つに分かれるらしいわね」

「それは怖い……でも、上手く使えば結構有用かも?」


 切れ味の良いナイフの様に使うことが出来るかもしれない。

 これと同系統の魔法が使えたら色々な応用もありそうだし強力かもと、子供心に胸を躍らせる。


「話を戻すわね。飛べば良いのはその通りなんだけど、残念ながら私は飛行魔法を使うことが出来ないわ」

「あれだけいろいろな魔法を自由に使えるのに?」


 言い難そうに目を横に逸らすが、諦めが付いたのだろう、大きくため息をついて視線を戻す。


「私、高所恐怖症で自分が空を飛んでいる所をイメージ出来ないのよ」


 美和さんは意味もなく両手の人差し指をくるくると回している。

 僕はぽかんと間の抜けた顔をしてしまう。たったそれだけのことで魔法が使えなくなるものだろうか。


「だから言いたくなかったのよ……詠太くんも私の事、馬鹿にしてるでしょ?」


 僕の顔を勘違いしたのか、美和さんはへそを曲げてしまった。僕のことを睨みながら、頬を膨らまして不満をアピールしている。

 僕は思わずクスっと笑ってしまうが、慌てて釈明を述べる。


「そ、それは、恐怖心を持っただけで魔法を使えなくなるとは思っていなかったからだよ」

「……でも、さっき笑ったでしょ。やっぱり馬鹿にしているわよね」

「それは、美和さんも可愛らしい顔をする事もあるんだなって」

「えっ、可愛らしいなんて……」


 何故か、美和さんがもじもじし始める。心なしか頬も少し赤いような……


「って、良く考えてみれば結構失礼な言い回しじゃない!」


 と思っていたら、次は怒りながら腕を振り回し始める美和さん。顔はさっきより赤くなっていた。

 美和さん、お願いだから落ち着いてください。

 結局美和さんが落ち着くまでの5分ほどの間、僕はサンドバックとしてボコボコにされていました。ええ決して、嬉しくなどではありません。たとえ相手が美少女といえども、僕は殴られて喜ぶような変態ではないのです。


「ごほん。先程は取り乱してすみませんでした」

「まぁ、僕の不注意もあったと思うし」


 僕は居住まいを正して話を戻す。


「高所恐怖症で飛行魔法が使えないって言っていたけど、それだけで魔法が使えなくなるものなの」


 やはり、恥ずかしいのか耳を赤くしている美和さん。


「ええ。魔法を再現する為には、強くその状況をイメージしなければならないのだけれど、そうすると恐怖心が出てきてイメージが乱れてしまうのよ。空中で魔法が中断されると本当に落下しちゃうでしょ?」

「そっか、魔法を使って空を飛ぶということは一つ失敗すれば地面に真っ逆さまなんだもんね」


 僕は飛行魔法の難しさを痛感する。魔法はイメージしたことを実現する力ではあるけど、同時に高い集中力でその様子を克明にイメージする必要がある。失敗すると魔法は中断され、地面に落ちてしまう可能性がある。その可能性を頭から外しながら、あくまでも飛んでいる状態をイメージしなければいけない。

 飛行魔法は強い心が無ければ実現できないものなのだ。つまり、高所恐怖症はそれだけで飛行魔法に対して大きく不利に働く。


「美和さんごめんね。僕は飛行魔法の難しさを低く見積もっていたみたいだ」

「そうかもしれないわね。実際、飛行魔法はかなり難しい魔法に分類されているわね。失敗すれば直接死につながるというのはかなり大きいわ」


 美和さんの解説に頷く。


「詠太くんが飛行魔法を使えれば良かったんだけど……」


 美和さんは残念そうに、首を振る。


「それが出来なかったら、虱潰しで頑張るしか無いわね。脱出まで相当時間が掛かる可能性が高いわ。冬になる前に戻れないとほんとうに大変なことになるわよ」


 その言葉に、僕は覚悟を決める。


「分かった。これからどうにかして飛行魔法を使えるようにしてみるよ。1週間だけ時間をくれないかな?」

「可能性があるならそれがベストでしょうね。分かったわ。それまでは私が一人で帰り道の捜索をしておくわね」


 こうして僕は、1週間で科学のイメージを用いた飛行魔法の開発、実用化を行うことになった。

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