1. Prologue
天井から吊り下げられたシーリングライトが、窓もない石造りの部屋を煌々と照らしている。
十分な明るさとは言えないこの部屋で、黒いローブを纏った少女が独り言を呟きながら作業をしていた。
「えーと、ここをこうして……さらにこの点を中心に円を描いて……」
少女は迷うことなく一枚の大理石に複雑な紋様を刻んでいく。
「全空間を対象にするから、円を6等分して正六角形を形成っと」
幾何学的模様が彼女の指先から紡がれていく。
少女が作業を始めてどれほどの時間が経っただろうか。最初は円と正多角形だけが刻まれていたが、今では精霊語だろうか、細かい文字がびっしりと刻み込まれていた。
「後は条件として私との相性を設定すれば良いのだけど……」
ふと、少女は首をかしげると、フードからはみ出ている銀色の長髪がふわりと揺れる。
「うーん、ここは思い切って精霊に全て任せちゃおうかな。顔の特徴でも指定してみよかなと思ったけど、最近人の顔を見た記憶が無いのよね」
少女は、『術者と相性が良い人』という意味の精霊文字を更に刻む。
「さて、それじゃあ行くわよ!」
懐から瓶を取り出し、紫色の液体を魔法陣に注ぎこむと、大理石上の刻みに沿って紫色の魔法陣が浮かび上がる。
少女が大理石に手を添えると、液体が形を保ったまま空中に浮かび上がり、輝き始める。
幾何模様と精霊文字が織りなす光の奔流に、部屋が鮮やかな紫色に染まる。
神秘的な光景だが少女の顔は浮かない。むしろ、顔から血色が失われていき、苦しそうに顔を歪める。
「想像以上に魔力が喰われる。これはちょっと……不味い、かも……」
バサリと倒れた彼女を気遣うこともなく、紫色の魔法陣は淡々と輝き、部屋を紫色に染め続けた。
処女作につき、稚拙な文章ですが楽しんでいただければ幸いです。
最初を除いて、週1投稿目指して頑張ります。