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「うおおぉぉぉーーー!?!?」


ぐにゃりと歪んで割れた空間の割れ目からと絶叫と共に青年が落ちてきた。


「グハッ!? いてて……。一体……何が起きたんだ?」


ドスンと尻から地面に着地し悪態を吐いた長門和也は立ち上がりズボンに付いた土や葉っぱを払い落とすと周りの森を見渡した。


「……何処だよここ。? なんだこれ」


自身の身に何が起きているのかと和也が周りをキョロキョロと見渡していると頭上から1枚の紙がヒラヒラと落ちて来る。


それをパッと手に取って見てみるとそれは和也に宛てられた手紙だった。


「えーと……。今これを読んでいる貴方は既に死にました。死んだ理由は病死ですがこちらの手違いで50年ほど早く死なせてしまったので、お詫びとして貴方に『軍需品を召喚する能力』・『召喚した軍需品を使いこなす能力』を授け異世界に送って差し上げます。神より。 ………………俺、死んだの?」


神様の手違いにより殺され、お詫びとして2つの能力を与えられ第2の人生を送るために異世界に送り出された和也は驚愕の事実を知り愕然と立ち尽くしていた。


「と、とりあえず能力でも見てみるか……」


しばらくの間、茫然自失としていた和也だったが再起動を果たすと神様から与えられた能力『軍需品を召喚する能力』と『召喚した軍需品を使いこなす能力』を使ってみた。




※[必ず目を通して下さい]

[軍需品の召喚]

[ステータス]

[情報]

[ヘルプ]




……能力を使おうとするとこれが出てくるのか、まるでゲームだな……。ん? なんだこれ。


和也は能力を使おうとすると自然に目の前に現れた半透明の立体ウィンドウに目をやり※[必ず目を通して下さい]の項目を指で押した。




※[必ず目を通して下さい]

!!注意!!

・召喚出来る軍需品は1945年までに製造・開発されていた物に限られ、また一度に召喚出来る数量にも制限があります。


詳しくは[ヘルプ]でご確認下さい。




「マジかよ!?」


ウィンドウに表示された文字を読んだ和也は思わず声をあげるとすぐさま[ヘルプ]の項目を選択した。




[ヘルプ]

――能力について――


・召喚出来る軍需品は1945年までに製造・開発されていた物に限られ、また一度に召喚出来る数量にも制限があります。


・能力を使用する際、ウィンドウを介さずとも声や思考だけで能力は発動出来ます。




「なんという縛りプレイ……というか最新の兵器は使えないのかよ」


お詫びに貰ったはずの能力に制限が付いていたことに和也は呆れ果てていた。


「はぁ〜愚痴っていてもしょうがないか……」


しばらくの間、能力に制限が付いていたことに憤っていた和也だったが、そうしていてもどうしようもないと思い至り次の行動に移ることにしウィンドウの[ステータス]を指で押した。




名前

長門 和也


装備品

制服、靴




簡単なステータスだな……。手抜きか?


[ステータス]に一瞬目を通したが特筆する事も無かったため、すぐに興味を失った和也は次に[情報]の項目を選択した。




[情報]

・世界について

貴方が今いるのは日本の戦国時代が元となっているパラレルワールドです。


妖怪・妖と呼ばれる異形の生物や妖術・呪術・陰陽術などの異能力も存在しています。




「……戦国時代を元にしたパラレルワールド?しかも妖怪いんの?」


何の情報も知らされずにこの世界に送られた和也は衝撃の事実を知って凍り付いた。


――って最初にそれを教えろよ!?今ここで妖怪とか山賊に襲われたらどうする気だ!!


自分が無防備な状態でいることに気が付いた和也は慌てて武器や装備品を召喚する。


えーと、主兵装はとりあえず九九式狙撃銃、副兵装はPPSh-41短機関銃とM1911軍用自動拳銃――コルト・ガバメント、補助兵装はM24型柄付手榴弾と銃剣、軍服は……ドイツ軍のM43野戦服で後は装備品、ヘルメットに軍用ブーツとグローブに携帯用スコップ、医薬品、背嚢っとこんな感じで……。


次々と目的の物を召喚し装備したカズヤは改めて[ステータス]を確認した。




[ステータス]


名前

長門 和也


装備品

ヘルメット・グローブ・M43野戦服・携帯用スコップ・背嚢・軍用ブーツ


主兵装

・九九式狙撃銃

(九九式普通実包×50発)


副兵装

・PPSh-41

(7.62×25mmトカレフ弾×71発入りドラム形マガジン3個)


・M1911コルト・ガバメント

(45ACP弾×7発入りマガジン2個)


補助兵装

24型柄付手榴弾×2

銃剣




「ちぐはぐな装備選択になったけど、まぁいいか。これでひとまず大丈夫だな」


[ステータス]を確認し能力のお陰で自分の手足のように意のままに扱うことの出来る九九式狙撃銃に弾を装填しタクティカルスリングでPPSh-41を肩に吊り下げた和也が一息ついた時だった。


「冬華!!急ぐんだ!!」


「ハァハァ……で、でも、夏樹兄様……私はもう足が」


「ん?――誰だ、この2人?」


ガサガサと草むらを掻き分け、2つの影が和也の前に飛び出して来る。


影の正体は16〜17歳程で和也と似た身長に利発的な顔立ちをした少年と12〜13歳程で腰の辺りまで伸びた艶やかな黒髪を持ち儚げな雰囲気を漂わせる小柄な少女だった。


「っ!!そこの人!!貴方も早く逃げなさい!!」


「え……俺?」


「っ!!冬華!?


「ハァハァ……夏樹兄様……私はもう走れません……兄様だけでも逃げて……」


「冬華!!お願いだから立ってくれ!!」


「おい、大丈夫――なっ!?嘘だろ、おい!?」


足を押さえて地面に座り込む妹と、その妹に手を貸して一刻も早くどこかへ行こうとする兄。


そんな風に何かから必死に逃げようとしている兄妹に手を貸そうとカズヤが前に出た時だった。


兄妹の後を追って虫を巨大化したような化物達がぞろぞろと姿を現した。


和也が初めて見る化物――虫の妖怪に度肝を抜かれ固まっている間にも妖怪達の数はドンドンと増えていき遂には妖怪達に取り囲まれてしまった。


「くっ、最早これまでか……」


そう言いながら妹の前に立ち塞がり、腰に差していた日本刀を抜き放つ少年。


「こりゃあ不味いな……おい、ゆっくりと後ろに下がるぞ。そんなもん早くしまって妹さんを抱えろ」


訳の分からぬうちに面倒事に巻き込まれ窮地に陥ってしまった和也は奇声を上げて威嚇を繰り返す妖怪達から距離を取ろうと兄妹に声を掛ける。


「……何か策でもあるのですか?」


いやに落ち着いているように見える和也の指示に従った方が良いと判断したのか、1度は抜いた刀を収め言われた通りに妹を抱えた少年は和也に問う。


「策は無いが戦う術はある」


少年の問いにそう答えた和也は2人を庇いつつ、ジリジリとゆっくり後退し背後にあった大木まで辿り着くと九九式狙撃銃を消し新たな武器を召喚した。


って軽っ!!なんだこれ!?身体強化でもされたのか、俺!?………………この分だと精神も弄られていそうな気がするな。


第二次世界大戦時にドイツ軍が製造しヒトラーの電動のこぎりとも呼ばれていたグロスフスMG42機関銃を両手に召喚した和也は、そのMG42機関銃の余りの軽さに驚きそこで初めて自分の身体能力が以前とは比較にならないほど向上している事を知る。


「に、兄様……」


「大丈夫……大丈夫だ、冬華。何があってもお前は守ってやるからな」


「って、要らんことを考えている場合じゃないな……おい!!2人とも耳を手で塞いでおけ!!」


「えっ!?あ、はい!!」


「分かりました!!」


だがそんな発見をしている間に妖怪が徐々に距離を詰めて来ていた事に気が付いた和也は、慌てて背後で身を寄せ合い震えていた兄妹に耳を手で塞ぐように言って兄妹が耳を塞ぐのを確認した後、MG42機関銃の引き金を引いた。


「うおおぉぉーーーらぁあああああぁぁぁ!!」


雄叫びを上げながら発砲の反動でぶれる銃口を和也は何とか制御しつつ両手に握ったMG42機関銃を左右に薙ぐように振り回し、ビリビリと布を引き裂くような発砲音と共に毎分1200発の発射速度で放たれる7.92mm×57弾で妖怪達を次々と蜂の巣にした。


「はぁ……はぁ……」


ドラムマガジンに入っていた弾を全て撃ち尽くした和也は、連射のしすぎで熱せられ赤くなりシュウシュウと音を出している銃口や銃身を冷ましながら一息ついていた。


その視線の先では身体中から体液を垂れ流し死んでいる妖怪達が地面の上に横たわっていた。


「ふぅ……大丈夫か?」


敵の殲滅を確認してからMG42機関銃を消し、額に浮かんでいた汗を拭った和也は兄妹に声を掛ける。


「は、はい。大丈夫です」


「なんという破壊力なんだ……」


一瞬で周りを取り囲んでいた妖怪達を蹴散らしてしまった和也に兄妹は尊敬と畏怖の眼差しを送っていた。


「とりあえず話をする前に場所を変えよう。コイツらの仲間が他にいるかもしれん」


「……はい」


「……そうしましょう」


和也が死んでいる妖怪を指差して言うと兄妹はブルリと身震いし一も二もなく賛同して首を縦に振った。



「ほら、水だ」


兄妹と共に移動し場所を変えた和也は水の入った軍用の水筒を2つ召喚すると、未だに恐怖で体を震わせている兄妹にその水筒を手渡した。


「ありがとうございます。……えっと」


「感謝いたします。……あの、これはどうやって飲むのでしょうか?」


礼を言って和也から水筒を受け取った兄妹は水筒の開け方が分からず互いに顔を見合せた後、和也に縋るような視線を送った。


「貸してみろ。ほれ」


「そこを捻るんですね」


「すみません、何しろ初めて目にする品だったもので」


和也が水筒の口を開けて再度兄妹に手渡すと兄妹は2人して水筒をまじまじと眺めた後、喉をゴクゴクと鳴らしながら水を飲んだ。


「ふぅ……」


「はぁ……」


「落ち着いたか?」


「はい、ありがとうございます。……えっと、あなた様のお名前は?」


「長門和也だ。和也でいい」


「そうですか。和也殿、私と妹を助けて頂き改めてお礼申し上げます」


「どういたしまして。で、お2人さんの名前は?」


「これは失礼しました。私は黒羽城が城主、黒羽康隆の息子である黒羽夏樹と申します。こちらは私の妹である黒羽冬華です」


「黒羽冬華です」


「……」


城主の息子と娘?………………若様とお姫様じゃねぇか!?


目の前にいる兄妹がれっきとした若様とお姫様だということを知り和也は間抜けな顔を晒しながら固まっていたのだった。

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