第五話 光との遭遇 前編
オレが地球での暮らしで不安になったこと、嫌になったこと。
学校での「二人組を作りなさい」「課外活動での班分け」「昼休みの居場所」「お前の左手って暴走すんの?」「中二病キメェ」とか色々あった。
それらと「さよなら」できたのは正直に言ってうれしい。
今やオレは「忘れられた黄昏の女神」の神殿を探しだし、かの女神より「祝福」をえるための冒険にでたのだ。
そんなオレを悩ませることが一つ。
「空腹」とこのままだといずれ「餓死」するという事実だ。
女神は「加護があれば問題ない」みたいに言ってたけど、いまだに加護の恩恵を実感も体感もできていない。
それどころか、日本では感じることのなかった危機感を実感している。「餓死」って、現代日本なら、中々きけない状況だぞ。
崖から歩き続けて草原を横ぎり、今や森の中である。太陽は落ちて夜の帳が舞い降りた。今日はここで一泊する。
異文化との交流が未だないのは現状として問題ない。というか、期待していない。人の生活していそうな集落とか村とかは崖の上から見ていないから人に会わないことには納得できる。
問題はそれ以前に「生き物」を見てさえいないことだ。
ここはもしかしたら「生き物」の死に絶えた世界なのかもしれない。
そんな世界でどうしろっていうのさ。
生き物のいない世界なら、夜の森でも、歩かないなら危険もないだろう。コートについているフードを枕にしてとっとと寝よう。
そう思い木々の間、丁度良さげな窪みに身をおこうとしていると
視界の端に明かりが見えた。月明かりや星の明かりではない。白色光を作れる文明が存在する世界であることはわかった。そこで、今までなぜ生き物に遭わなかったのかという疑問が残る。
それにしても、なんて微妙なタイミングだろうとも思う。オレは今寝るところだったんだぞ。
まぁ、いいや。何にせよ、これはチャンスか。ここから始まる異文化コミュニケーション。
しかし、こちらから話かけるのはためらわれた。相手が友好的だとは限らない。
よし、相手がこちらに気がついたら異文化コミュニケーションだ。 そう思っていると白色の明かりはドンドン近付いてくる。逆光なのか、姿はいまだに分からない。 危険かもしれないものへの恐怖と友好かもしれないものへの期待が、緊張感を作り出す。
いつのまにか、相手がこちらに気がついたら、という条件は、相手が話かけてきたらにすりかわっていた。
相手は確実にこちらに気がついている。だからこちらに近付く。なぜ近付いてくるのかは、分からないが。物騒な展開にもしなったら、加護はオレを守ってくれるだろうか。