第三話
その2はありません。
異世界に行く話での、というか漫画やアニメ、非現実な作り話につきもの。
「言葉の壁」
これは、なかったことになったり、ちゃんと消化しきっていたり色々あるがそれでも、ストーリーの展開に支障を来たさないものがほとんどだ。もしかしたら、「言葉の壁」がテーマの話もあるかもしれないし、「言葉の壁」が一つの要素になっているものもあるかもしれない。
さて、オレは異世界にきたわけだが、加護によってそれを乗り越えることができるらしい。
あまり疑問に思わなかったが、こちらに「移る」以前から、女神さまたちとはコミュニケーションは取れていた。その時点で加護が働いていたかどうかは不明だが、すでに「お約束」な展開があったのか、なんて考える。
日本語は日本という文化があって成り立つ。
では、その日本というものが成り立つためには、なにが必要なのか。
それら必要なものがおそらく存在しないだろう世界で日本語しか使えないオレは果たして本当に「言葉の壁」を乗り越えることができるのか、それは大いに問題である。
だけど、今の状況はそれ以前の問題にある。加護でどうにかできないだろうか。
少し時間をさかのぼる。
世界間の移動は物理的な殴打によって意識がないうちに終わったのか、殴打そのもので意識ごと世界を飛び越えたのか、オレには判断できない。
ただ言えることは、気がつけばむき出しの地べたの上で横になっていたということだ。口の中で血の味がする。殴られたときに口の中を切ったようだ。
なんだろうね。ニートと変わらない生活をしていた人間にはちょっと辛い仕打ちじゃないか。
あの女神さまは人のこと殴りすぎじゃないか。喋れば長いし、わりと自己完結してたし。言いたい放題で本当に参る。
辺りを見渡す。どうやら崖の上にいたようだ。遠くを見れば青々とした山と森が確認できる。
崖の端に寄って近くを見る。怖いので端といっても端っこから一メートルくらいの場所だが。崖下から森までは木々も疎らな草原が続いていた。自分の倒れていた近くには細長い黒い光沢をはなつ石柱があった。何かの記念碑なのだろうか。花さえ添えられていない。しかし、石柱は風化している感じはしない。人が来るのかこないのか、よくわからないがどこか寂しさを感じさせる場所だった。
まぁ、どうみても人工物であるこのオブジェクトはここに人が、少なくともオブジェクトを建造する文明をもつ存在がいたことを示している。今も存在するかは別だが。
もし、今もいるなら、ここで待っていれば誰か通るかもしれない。
よし、しばらくはこの辺りを、具体的にいえば、この崖の上の石柱の見える範囲をウロウロしていようかな。
遮蔽物がないから、見通しはきくし、問題ないだろう。
三分しないうちに現状に問題ありだと認識をあらためる。
今いる場所は陸の孤島というか、なんというか、石柱を中心として半径10メートルくらいのひらけた場所がり、そこから先は崖となっている。崖の高さは落ちればまぁ、死んじゃうよね、ていうくらいはある。
飛べる生き物でなければこんな所にはこれないだろう。
では石柱をこんな場所に作ったやつは飛んで来たのだろうか。
なんにせよだ。今おれはここから動けない。一体どうしろっていうんだ。
まったく、こんなの聞いてない。