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killer elite  作者: 石田徹男
イントロクイズ
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会田誠はおもむろにセーラー服を

 小林一郎はドライブ中、なぜか早苗に白状したくなった。絶対、知られたくないヒミツなのに。


 「オレ童貞なんだ。今年21だけど」


 「ふーん、ワタシ処女だよ。17だけど」


 「いままで彼氏とか、いた?」


 「いないと思ってるっしょ。ブスだから」


 「ブスとか美人とか、あんま関係ないんじゃない」


 「関係あるよー。すごいコンプだもん」


 「でも、付き合ったことあるんでしょ」


 「ある。一回だけ、だけど」


 童貞と処女というキーワードは、小林と早苗の距離を近づけた。ハンドルを握る小林は、早苗の方を見た。会話しているときの早苗の表情は穏やかだ。ブス度が俄然低くなる。むしろ可愛いのではないか。見ようによっては女優の「水川あさみ」に似ている。水川しらない人のために言うとクールな感じの女。めっちゃひいき目で「水川2割」でなんとか許してくれ。頼む。


 小林は、今後二度と会うことはないであろう早苗にいろいろ告白したくなった。だって、水川似にだったら、恥部晒して蔑んでもらうのもコーフンするじゃん。ドMとしては。


 早苗は、おそらく小林が話したことを明日には忘れてしまうだろう。それがまた小林には、たまらなく好ましく甘美なことに感じられた。忘れられちゃう運命なのに懸命に意を尽くして語る、その有り様。


 「オレの恋ばな、しゃべってもいい?」


 「いいよ」


 「このまえまでサユリっていう女の子と付き合ってたんだよ。飯食いに行ったり、遊んだりして。1カ月くらいして、そろそろオレも童貞卒業かなと思って、エッチ寸前までいったけどやらなかった」


 「どして」


「オレ強度の潔癖症で、ノイローゼっていう診断受けてるんだ」

「キスとかペッティングまではまあ、順調。けどさ、サユリのあそこみて気持ち悪くなっちゃってね。がんばったけどムリでした」


 「小林くんそんな風にみえないけど。セックスを楽しめないのってつらいんじゃない」


 「んで、サユリとオレはエッチとかはムリってことで。親友の三宅クン、ああ三宅クンはサユリとも友達なんだけど、その三宅クンがサユリとできちゃって」


 「うわ、ヒサーン。かわいそすー」


 「三宅クンがオスとしては優秀ってことだろうね。2人が結ばれた翌日、三宅クンち遊びにったらベッドに日の丸が付いてた。サユリそんときまで処女だったんだ」


 「なんか、悲しいね。あんたなんか悟ってるみたいな変な境地に入ってるじゃん。21には思えないよ。どうなっちゃってんの」


 「サユリは別に悪くないよ。三宅君にくっつく前にオレに別れ話してきたし、振った理由もちゃんと言ってた。小林ってときどき凄い怖い顔をしているときがあるとかなんとか、それが無理なんだって」


 小林は、ちょっと気が楽になった。ブスの早苗も捨てたものではない。ある程度の言葉のキャッチボールができた。ほとんど一方的にぶちまけたんだけど。


 国道の看板によれば、街の中心地まであと2キロだ。


 県立美術館で現代アート作家展をやっていることを思い出した。小林は、早苗を連れていってみようと考えた。くだらない恋ばなの口直しにぴったり。高尚で、セレブっぽい。


 お目当ても一応ある。いくつか展示されているはずの「石田徹也」の作品が見てみたい。ったく天才って早世しちゃうよなあ。踏切事故で30かそこらで死んじゃった。残念。


 彼が描くのはほとんど全部が自画像。プラレール製の石田、トイレ便器製の石田、プロペラ飛行機製の石田。梱包されて山積みにされた石田…全部、自分がモチーフ。いっつも憂い顔の石田。


 自称天才の会田誠の作品もあるはずだ。巨大ジューサーで何千もの人間をぐちゃぐちゃにしてジュースを作る絵とか。セーラー服の女子高生と触手のあるなんかが交接してる変な絵とか。


 作品はともかくといして、会田本人は好かん。いい男過ぎる。追っかけのファンや美人アーティストを食いまくってるに違いないよ。アート活動とかいっちゃって。


 会田は100まで生きるタイプだね。別にどうでもいいか。


 


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