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「ねっ名演技だったでしょ?」
「名演技だったでしょ?じゃなくて大丈夫なんですか?」
「う〜ん。たぶん?」
「たぶんって…」
「だって本当にだめならだめって言うはずだわ。でもお父様が言ったのは考えさせてくれ。つまりまだ考える余地はあるってこと。大丈夫よ」
「本当ですかねぇ」
「さぁ私達はお花の手入れをして図書館に行きましょう。他国の情報を集めなくちゃ」
そんな呑気なことを言っているお嬢様に呆れつつも一緒に庭へと向かった。
庭師と一緒にゆったりお花の手入れをしていると
「我が愛しの妹よ〜元気にしてたか?」
背後からお嬢様に抱きつく男がいた。
「ちょっと?なにしてるんですか?」
お嬢様がその男に声をかける。
「あれ?愛しのお兄様のこと忘れちゃった?」
「お兄様?」
私達は困惑した。
「ああ記憶喪失になったんだってね。じゃあ改めてミール・フェルソニー。君のお兄様だよ。みんなに内緒でちょっと間、帰国したんだ」
「良いのですか?」
「う〜ん。まぁ大丈夫。それよりお父様に旅に出たいって言ったんだって?」
「なんでそれを?」
「お兄様をあまり舐めないで。妹のことはなんでも知ってるよ」
物語にもあまり書かれていなかったのでミール家の肖像画でしか見た事がなかったが、この人はたぶんシスコンだ。
「ふふふっ。あははっ」
私とお嬢様が同時にフェルソニー様を見た。
「いや、ふふっ。ごめん。王子婚約破棄されて数日で今度は旅に出たいってカトリナもかなり大胆だね。面白い。ふははっ」
「お兄様、そんなに笑わないでくださいませ」
「ごめんごめん。で?どうなったの?」
フェルソニー様は涙目になるくらい大爆笑していた。
「お父様は数日考えさせてくれと…」
「そっか。カトリナは許しが欲しいんだよね?」
「当たり前です」
「分かった。ちょっと待ってて」
そのままどこかへ行ってしまった。
「なんだったんでしょう?」
「分からないわ。でもあの人が肖像画の人よね?」
「はい」
お花の手入れが終わるとお嬢様が図書館へ向かうというのでお供する。
馬車に乗ろうとしたちょうどその時。
「どこ行くの?」
「これから王立図書館に行くんです」
「なんで?」
「旅に出るための準備です」
「えーせっかくこれからカトリナとゆっくりお茶しようと思ったのに」
「それは魅力的なお誘いですが、また今度」
「じゃあ僕も行く。エスコートしますよ。お嬢さん」
フェルソニー様はお嬢様に手を差し出した。
「お父様達にはご挨拶したのですか?」
「したよ。すごく驚いてた」
「そうでしょうね」
「それより外国の事なら僕に聞いた方が早いのに」
「お兄様はお忙しいでしょう」
「全然。妹のためなら時間作るよ」
そんなやり取りをしながら王立図書館に到着した。
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