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それから2日後。
お茶の時間に旦那様についている執事がお嬢様を呼びにきた。
「失礼します。お嬢様、旦那様がお呼びです」
「分かったわ。すぐ行く」
お嬢様は一瞬キョトンとした顔をしたがすぐにそう返事して椅子から立ち上がった。
私はお嬢様の後ろについて行き旦那様の執務室に入るとそこには旦那様の他に奥様もいた。
私は礼をして壁際で待機する。
「カトリナ、来たか」
「お父様、どうなさいましたか?」
「殿下との婚約破の話がまとまったよ。陛下からも謝罪を受けた。それとカトリナが出した条件についてもご対処頂けるとの事だった。さらに今回の件に対する謝罪金も頂いたよ」
「そうですか。ありがとうございます」
「ここにサインしたら完全に婚約は破棄される。いいかな?」
旦那様は再度確認した。
「はい」
「それではここにサインを」
そうしてお嬢様は婚約破棄の書類にサインをした。
「それじゃあ新しい婚約者を探さなきゃね」
後ろのソファに座っていた奥様が言う。
「その件でお話があります」
「なんだ?」
旦那様と奥様は真剣に耳を傾けているようだった。
するといきなりお嬢様が少し涙声になった。
「大丈夫?ゆっくりでいいのよ」
奥様が心配そうに声をかける。
「私は婚約破棄されたばかりで結婚など考えられません。今回の件で私の心は深く傷つけられました。その心を癒やすためにも私は旅に出たいのです…」
「旅?」
旦那様と奥様は驚いた顔をしていた。なんならその場にいた執事さえも驚いていた。
そりゃそうだ。今まで箱入り娘のように大切に育ててきて他国にも出た事がない娘がいきなり旅に出たいと言い出したらそりゃ驚くだろう。
お嬢様はさらに続ける。
「さまざまな国を旅し見た事のない景色をたくさん見たいのです。私はすでに学園を卒業しております。なにも縛るものはありません。なにより元婚約者がいるこの国から少しの間だけでも離れたいのです」
お嬢様は后教育もあったため学園を飛び級で同級生よりも2年早く卒業していると他のメイドから聞いた。
ちょうど私達が転生する少し前だったそうだ。
「そうは言ってもあなたはもう結婚適齢期なんですよ」
「私は結婚には向いておりません。今回の婚約破棄でそれを自覚いたしました」
「そんな事言ったって…」
「もしもの場合はご留学なさっているお兄様に継いで頂く選択肢もありますし甥っ子のジェイニーもおります。それに養子を取る事もできます。万が一私が結婚しなくてもミール家は途絶えません」
「あの子は…」
実はカトリナには上に兄がいた。
その兄は現在他国に留学中だが自由奔放で旦那様と奥様は頭を悩ます事もあったらしい。
「あなたには結婚して子供を産み育て、女性としての幸せを歩んで欲しいのです」
奥様がお嬢様の手を握り説得する。
だがお嬢様も引かない。
「お父様とお母様のご期待に添えず申し訳ございません。ですが、私は本気です」
お嬢様がそう宣言した時。
「数日考えさせてくれ」
それまで静かに聞いていた旦那様がそう言った。
「分かりました。今日はこれで失礼します」
私も頭を下げてお嬢様と一緒に部屋を出る。
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