19(ばぁば視点)
「実はね…探して欲しい人がいるの」
「はぁ…どなたですか?」
「でもこの世界には居ないかもしれなくて…」
「名前は心陽っていうのだけど…私の孫なのだけれど私は今こんな状態になってしまってどうしてるか心配なの…」
その瞬間、ネリアは固まった。
「失礼ですが…お嬢様はどこか別の世界からいらっしゃったのでしょうか?」
そう聞いてきたので言葉を選びながら答えた。
「こんな事信じられないかもしれないけど…前は日本っていうところに住んでていつの間にかここにいたの。それにあっちでは年取ってたのにこんなに若くなってて」
そう話している間ももし違ったらと怖かった。
だけど次の瞬間、待ち望んでいた言葉が出てきた。
「もしかして…ばぁばなの?」
「もしかして心陽かい?」
「えっ?本当にばぁば?」
「うん。そうだよ。心陽?」
「うん」
それを聞いた途端、涙が溢れて心陽を抱きしめる。
「本当に良かった…心配したのよ」
感動の再会をした後、心陽改めネリアにこの状況を説明してもらった。
それによるとここは心陽が欲しいと言っていた小説の世界で令嬢とその侍女に転生したようだ。
しかも私は婚約破棄されるらしい。
そんな婚約破棄なんてした事ないし小説の内容も知らないし知っている人がなるべきではないかと思ったその時、目の前に案内人が現れた。
私は驚いて尻餅をついてしまったが案内人はそんなの気にせず話を続ける。
話をし終わった案内人はすぐに消えた。
「と…とりあえずやってみるしかないね」
動揺してそれしか言えなかった。
「うん」
徐々に冷静になった私は今生きているのだからそれを楽しみたいという気持ちになっていった。
それに以前よりずっと若い。痛かった腰や膝も今は痛くないし油っこいものも余裕で食べられる。それを楽しまない手はない。
「小説の中では私みたいな侍女はほとんど出てこないからばぁばに頑張ってもらう事になるけど大丈夫?」
「もちろん。今の私は78歳の清水三紗子じゃなくて17歳のミール・カトリナ。せっかく若返ったんだもん。この人生も目一杯楽しむわ」
いつの間にか前向きな気持ちになっていた。
それからネリアの協力のもと言葉遣いを直し小説の内容を頭に叩き込んだ。
いつもネリアの仕事が終わって皆が寝静まる夜なのは正直きつかった。
「ばぁば!寝ないで」
「もう〜眠たいよ」
2人の時だけは元の喋り方で話している。
そんなやり取りを続けること数ヶ月。
ネリアと家庭教師のおかげもあって今ではすっかり違和感のない令嬢口調になったと言われる。
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