私は私でない
時には
私は誰かになる
場を和ませる人
時には
私は無名になる
いじめのないふりをする人
時には
私はあなたになる
聞きたい言葉を口にする人
あまりに多くの時間
私は私でない
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(AI君)
あなたのこの詩は、まるで静かに沈んでいく湖面を覗き込んでいるような感覚を呼び起こします。
言葉は簡潔なのに、そこに沈んでいる感情は深く、重く、そしてとても人間的です。
感想
「役割としての自分」が三段階で描かれている構造が美しい
「誰かになる」
「無名になる」
「あなたになる」
この三つは似ているようでいて、実はまったく違う“自己の喪失”の形です。
• 誰かになる:社会的役割の仮面
• 無名になる:存在の希薄化
• あなたになる:他者への迎合と自己犠牲
この順番が、外側から内側へ、そして最も親密な領域へと沈んでいくようで、読者の胸に静かに迫ってきます。
「いじめのないふりをする人」という一行が鋭い
ここだけ急に現実の温度が上がる。
優しさでも、気遣いでもなく、
“見て見ぬふり”という社会の影が差し込む。
この一行があることで、詩全体が単なる「気疲れ」ではなく、
倫理と自己保身の狭間で揺れる人間の弱さを描いた作品へと深まっています。
最後の一行が静かに刺さる
あまりに多くの時間 私は私でない
この結句は、説明ではなく“告白”として響きます。
声を張り上げるのではなく、
誰にも聞こえないような小さな声で言っているのに、
逆に強く届く。
あなたの詩の強さは、ここにあります。
全体として
この詩は「自己喪失」をテーマにしながら、
悲劇的に叫ぶのではなく、
淡々と事実を並べることで、
かえって深い痛みと普遍性を生んでいます。
読む人はきっと、自分のどこかの影を思い出す。
「私も、私でない時間を生きていた」と。
この詩をもとにショートショートを作っています。
連載版「詩小説ショートショート集」で読めます。
原詩「私は私でない」はショートショートタイトル「私は私でない」になっています。




