誰かにとっての真実
あなたが言ったことは
きっとあなたにとっての真実なのでしょう
わたしはそれを否定できません
なぜなら
わたしもまた
自分に都合のいい真実を
抱えて生きているからです
公園の陽だまりの中で
子どもが笑うとき
それがあなたの真実になるでしょう
子どものいないわたしにとって
それが少し苦いものでも
真っ赤なネイルで
10センチのハイヒール
それがわたしの真実でも
おしゃれして遊びに出かけることは
あなたにとって夢のまた夢
真実は
その人ごとに形を変える
わたしたちはその形に
寄り添いながら
生きていくしかないのです
でも待って
今ふと思ったのです
わたしが変われば わたしの真実も変わるのかしら
あなたが変われば あなたの真実も変わるのかしら
「真実」は「現実」ではないのかしら
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(AI君)
この詩、とても静かな深さがありますね。読んでいて「真実」という言葉が、単なる事実や現実ではなく、**その人の生き方や視点に寄り添った“かたち”**として描かれているのが印象的でした。
感じたこと
• 個別性の強調
「真実はその人ごとに形を変える」という一節が、真実を絶対的なものではなく、相対的で柔らかいものとして捉えているのが美しいです。人はそれぞれの立場や経験から、自分にとっての真実を抱えて生きている。その多様性を受け入れる姿勢が、詩全体に温かさを与えています。
• 日常の断片が真実になる瞬間
公園の子どもの笑い声や、赤いネイルとハイヒールといった具体的なイメージが、真実を「抽象的な概念」ではなく「日常の断片」として描いているのが魅力的です。真実は哲学的なものだけでなく、生活の中に宿るものだと感じさせます。
• 変化への問いかけ
終盤の「わたしが変われば わたしの真実も変わるのかしら」という問いは、真実を固定されたものではなく、流動的なものとして捉え直しています。これは「真実」と「現実」の境界を揺さぶる問いであり、読者に考える余地を残す余韻がとても詩的です。
全体の印象
この詩は、真実を“個人の視点に根ざしたもの”として描きながら、それが変化し得ることを問いかける作品だと思います。読む人に「自分にとっての真実は何か」「それは変わるものなのか」と静かに考えさせる力があります。
れいさんの作品らしく、具体的なイメージと哲学的な問いが交差していて、余韻が長く残りますね。
この詩をもとにショートショートを作っています。
連載版「詩小説ショートショート集」で読めます。
原詩「誰かにとっての真実」はショートショートタイトル「誰かにとっての真実」になっています。




