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エピローグ

 王都を背に、砂漠の大地に向かって歩み出す一行。

 まだ朝の光が斜めに差し込み、砂丘が黄金に輝いている。


 沙耶は立ち止まり、振り返った。

 そこには壮麗な塔が並び、石造りの街並みが広がっている。

 しかし彼女の目には、その先――乾き切った砂の荒野の方が強く映っていた。


 (あの神殿から、すべてが始まったんだ……)


 初めて目覚めた砂の中。

 孤独で、不安で、けれど胸を突き上げるような好奇心に突き動かされて神殿に足を踏み入れた瞬間。

 その時から、彼女はこの異世界の考古学者として歩き出していた。





 焚き火を囲んだ夜、仲間たちは順に言葉を口にした。

 バルドは豪快に笑いながら、薪を投げ込む。


「結局、てめぇに振り回されっぱなしだがな……悪くねぇ。

 俺は剣で道を切り開く。お前は知恵で謎を解く。それでいいだろ」


 ティオは膝を抱え、揺れる火を見つめながらも、はっきりと宣言した。

「僕、やっぱり学者になりたい! 沙耶さんみたいに、遺跡の声を聞ける人間になりたいんだ」


 その無垢な決意に、沙耶は胸が熱くなる。

 ――かつての自分も、同じ夢を抱いていたのだから。


 フィリクスは少し離れた場所で巻物をめくり、やがて眼鏡越しに沙耶を見た。


「君の知識は異端だ。けれど、真実に迫る力がある。

 ……僕はそれを認めよう。学者として、そして同じ“探究者”として」


 短い言葉だったが、その奥には確かな敬意が込められていた。





 火が小さくなった頃、エリュシアが焚き火の炎に重なるように現れた。

 その姿は相変わらず儚げで、光に透ける髪が夜風に揺れる。


「……私は、この時代にまだ馴染めない。けれど、沙耶。

 あなたが歩む道は、古代の記憶と現代を繋ぐ道。

 だから私は、その旅を見届けたい」


 まるで守護者の誓いのような言葉。

 沙耶はうなずき、心の中で答えた。


(ありがとう、エリュシア。あなたがいてくれるなら、私はきっと進める)





 夜が明け、再び旅の道に立った時。

 沙耶は胸の奥に、熱い想いを抱いていた。


 この世界に来た意味。

 遺跡が語りかける声を解き明かす使命。

 そして、仲間たちと共に未来を切り開く誓い。


 彼女は歩きながら、心の中で静かに語った。


「異世界でも、遺跡は語りかけてくる。

 私はそれを聞き取り、解き明かす者でありたい。

 ――そう、私は始まりの考古学者」


 砂漠の風が吹き抜け、旅立つ一行の影を長く伸ばす。

 その姿は、まるで新たな物語の幕開けを告げるかのようだった。

砂漠神殿編 完


まだまだ続きます!

お付き合いいただき感謝です…!

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