表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/65

4

 盗掘団の数は思った以上に多かった。

 松明を掲げて押し寄せる彼らの怒号が、崩れかけた広間に反響する。

 しかし――沙耶たちは退かなかった。


 バルドは荒々しい呼吸をしながらも、大剣を振り続ける。

「来るなら来いッ! 何人まとめてでも斬り伏せてやる!」

 剣が唸りを上げるたび、盗掘団員が次々と弾き飛ばされる。


 フィリクスは壁際に移動し、冷静に呪文を重ねた。

「〈束縛の鎖〉!」

 光の鎖が床から伸び、敵の足を絡め取る。盗掘団員が転倒し、仲間同士で折り重なる。


「くそっ……魔術師までいやがるのか!」

「退くな! 封印の宝は俺たちのもんだ!」


 その叫びに、フィリクスの瞳が鋭く光った。

「……お前たちに学術的価値が理解できるものか」

 彼は滅多に見せない激情をあらわにした。

「これは文明の遺産だ! 強欲な略奪者の手に渡すくらいなら――」


 詠唱がさらに強まる。砂塵が舞い上がり、光の奔流が広間を駆け抜けた。

 眩い閃光に盗掘団員たちは怯み、次々と武器を落とす。


「こ、こんな奴らに敵うか! 退け!」

 やがて盗掘団の首領が撤退を叫び、残党たちは慌ただしく広間の奥へと逃げていった。


 静寂が戻る。

 瓦礫が崩れ落ちる音だけが、広間に響いていた。


 バルドは剣を肩に担ぎ、深く息を吐く。

「ふぅ……手強かったが、まぁ大したことはねぇな」


 沙耶はすぐにティオのもとへ駆け寄った。

「ティオ、大丈夫!? 怪我は……」

 少年の頬には血が滲んでいた。だが彼は強く首を振る。

「平気だよ。僕、守れたから……!」


 沙耶は思わず胸に彼を抱き寄せた。

「……ありがとう。無茶しないで、って言いたいけど……その気持ち、すごく嬉しい」


 その光景を横目に、フィリクスは表情を険しくしたままつぶやいた。

「知識が踏みにじられる……それが、これほどまでに腹立たしいとはな」


 沙耶は静かに彼を見つめる。

「フィリクス……あなたも同じなんだね。

 私と同じように、遺跡を“宝物”じゃなくて、“真実”として見ている」


 フィリクスは前髪を払い、ふっと目を伏せる。

「……そうかもしれん。だが僕は君を認めたわけじゃない。まだな」

 だがその声音には、わずかな柔らかさが混じっていた。


 戦いを終えた仲間たち。

 だが神殿の奥では、まだ封印の気配が脈動している。

 砂漠の夜を越え、さらなる試練が彼らを待ち受けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ