■第13章:オレは寝間着を着る
シャワーから上がり、大谷卓也――いや、新しい自分として鏡の前に立つ。
水滴を弾く肌、そして肩にかかるまでに伸びた髪が、今の自分の姿をはっきりと映し出す。
以前はタオルでガシガシ拭くだけだった髪も、今はそうはいかない。
「乾かすのに絶対必要だから!」
今日、つむぎとNYAONでお買い物したときに買わされた、妹オススメのドライヤーを手に取る。
いままで自分とは縁のないものだと思っていたけれど、スイッチを入れると温かい風が髪を優しく撫でる。
初めての感覚に戸惑いつつも、サラサラと乾いていく髪の感触に、不思議な心地よさを覚えていた。
髪が乾くと、次は寝間着だ。今まではTシャツとパンツ一枚で布団に潜り込むのが当たり前だった。
もちろん、今のこの身体でそんなことをするわけにはいかないらしい。
「女の子はそんなことしないからね!」
と、つむぎにきっぱり言われた言葉が蘇る。女性の寝間着というと、レースのついたネグリジェのようなものを想像していたけれど、どうやら女子高生には早いらしい。
つむぎのチョイスは、肌触りの良いコットン素材の、水色の半袖パジャマだった。上着は襟付きで、胸元には小さなポケットが付いている。ズボンも同じ素材で、ゆったりとしたシルエットだ。
触れるとひんやりとして、夏に着ても涼しく眠れるらしい。初めて袖を通すパジャマの感触に、胸の奥がじんわりと温かくなる。鏡に映るパジャマ姿の自分は、少し幼く見えるけれど、確かに「女の子」としての自分がそこにいた。
慣れないながらも、少しずつ、新しい自分の生活が始まっている。
オレは、ベッドにもぐりこむと、すぐに小さな寝息を立てていた。