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漫才・コント集

【漫才】女子大生キョンシーが語る台湾の「学校の怪談」

作者: 大浜 英彰

ボケ担当…台湾人女性のキョンシー。日本の大学に留学生としてやってきた。本名は王美竜(ワン・メイロン)

ツッコミ担当…日本人の女子大生。本名は蒲生希望(がもうのぞみ)。キョンシーとはゼミ友。

ボケ「どうも!人間の女子大生とキョンシーのコンビでやらせて頂いてます!」


ツッコミ「私が人間で、このがキョンシー。だけど至って人畜無害なキョンシーですから、どうか怖がらないであげて下さいね。」


ボケ「どうも!留学生として台湾から来日致しました。日本と台湾、人間とキョンシー。そんな垣根は飛び越えていきたいと思います。こんな風にピョンピョンとね。」


ツッコミ「いやいや、両手突き出して飛び跳ねなくて良いから!」


ボケ「知ってる、蒲生さん?京都大学にある不思議な像の話。噂によると毎年のようにデザインが変わって、しばらくしたら消えちゃうんだって。」


ツッコミ「そんな『学校の怪談』みたいな言い方しなくても分かるって。受験シーズン恒例の『折田先生像』でしょ?」


ボケ「な〜んだ、知ってたんだ。元町の御隠居キョンシーに教えて頂いたから、自慢しようと思ったのに。」


ツッコミ「そりゃ有名だからね。アニメやゲームのキャラクターが作られる事もあるから、楽しみにしている人も割といるんだよね。」


ボケ「だけど、どうして『折田先生像』って言うんだろ?折田先生って人は、そんなに日本のアニメやゲームに出ているの?ベテランの声優さん?」


ツッコミ「いやいや、そんな訳ないでしょ!折田彦市先生っていう京大創設に尽力した偉い先生の像があったんだけど、イタズラが酷くて撤去されちゃったの。」


ボケ「イタズラ?後ろから目隠しして『だ〜れだ?』って質問したり?常日頃から両手を突き出してるからやり易いんだよね。」


ツッコミ「そんな生優しい物じゃないんだよ。最初は落書きしたり自転車を担がせたりと大人しかったけど、段々とエスカレートして酷い事になったんだ。」


ボケ「もう充分に酷い気もするけど、それ以上はどうなるの?道頓堀に投げ込んじゃう?」


ツッコミ「ウェイトレスさんの制服にしたりウェディングドレスを着せて花嫁さんにしたり、更には被り物を作ってモアイにしたりね。熱狂的野球ファンじゃあるまいし、道頓堀は無関係だよ。」


ボケ「額に御札を貼ってキョンシーにした人がいたら、私はその人を褒めてあげたいな。」


ツッコミ「褒めちゃ駄目なんだよ!それで見るに見かねた大学当局が折田彦市先生の像を撤去した所、今みたいに勝手に像を作る学生が現れたんだ。」


ボケ「それを聞いて思い出したよ。私が台湾で通っていた小学校にも銅像の無い空っぽの台座があってさ。夜になると坊主頭の人が台座の上で屈んで啜り泣くって、噂になったんだよ。」


ツッコミ「へえ、正しく学校の怪談じゃない。坊主頭ってのが気になるけど。」


ボケ「よくよく聞いてみたら、それは蒋介石の銅像の幽霊だったみたい。撤去されたのが悲しくて、化けて出てきたらしいの。」


ツッコミ「いわゆる『去蒋化』で撤去されたんだ。時代の流れで撤去された学校の銅像だと、日本の二宮金次郎みたいだね。あれも有名な学校の怪談だけど。」


ボケ「二宮金次郎…?ああ、(まさかり)を担いで熊に跨った人ね。」


ツッコミ「それは金太郎!二宮金次郎はそんなワイルドな真似をしないよ!」


ボケ「分かった、巌流島で宮本武蔵と戦った剣客だ!」


ツッコミ「それは佐々木小次郎!二宮金次郎は燕返しなんかやらないって!」


ボケ「あれでしょ、ほら!漂流した所を捕鯨船に助けられて、日本人で始めてアメリカに行った人だ!」


ツッコミ「それはジョン万次郎!なんでジョン万次郎を知ってて二宮金次郎を知らないのよ?」


ボケ「無茶言わないでよ、蒲生さん。私は生まれも育ちも台湾でオマケにキョンシーなんだから、日本の知識に偏りがあるのは仕方ないじゃない。」


ツッコミ「そりゃそうだけどさ…」


ボケ「じゃあ、あんまり自信はないけど…元は農民だったけど、報徳思想が評価されて小田原藩に武士として取り立てられ、その後は農村復興政策を指導した人?」


ツッコミ「それは二宮金次郎…って、合ってるじゃん!」


ボケ「合ってるなら良いじゃん!」


ツッコミ「歴史のテストなら二重丸を貰える模範解答じゃない…そんな正確に分かってるのに、どうして自信がなかったの?」


ボケ「私は二宮尊徳で覚えてたからね。二宮金次郎とは結びつかなかったんだよ。」


ツッコミ「あのね、二宮金次郎は二宮尊徳の通称なの。本名は尊徳だけど、みんな金次郎って呼んでいるの。」


ボケ「私も本名は王美竜(ワン・メイロン)って言うけど、時々『キョンシーさん』って呼ばれる事もあるよ。」


ツッコミ「一緒にしちゃって良いのかな…それで子供の時の二宮金次郎は、集めた薪を背負って運びながら読書をしていたの。そんな『働きながら勉強する勤勉さを見習うように』って理由で小学校に銅像が作られたんだ。」


ボケ「歩きながら読書…それって危なくない?本の内容に夢中で前方不注意になっちゃう!」


ツッコミ「そう!貴女が言う通り、今は『歩きスマホを誘発するから』って理由で二宮金次郎の像は敬遠されているんだ。」


ボケ「だけど二宮金次郎が台湾や香港の人じゃなくて良かったね。もしも台湾や香港で歩きながら読書なんかしてたら、そりゃもう大変だよ。」


ツッコミ「何処の国でも危ないとは思うけど…それはどうしてなの?」


ボケ「そんなの決まってるじゃない!故郷に帰ろうとするキョンシーの列を、知らないうちに妨害しちゃうからだよ。」


ツッコミ「何なの、そのぶっ飛んだ理由は!?」


ボケ「キョンシー様のお通りだ〜!邪魔する奴は、道連れだ!」


ツッコミ「こらこら!それはキョンシーを誘導する道士の台詞じゃないの!」


ボケ「そうしてキョンシーになった二宮金次郎が人々を襲うようになった…そんなお話だね?」


ツッコミ「全然違うって!学校の怪談における二宮金次郎の銅像は、夜になると勝手に歩き出したり走ったりするんだ。」


ボケ「やっぱりキョンシーじゃない!キョンシーも陰の気が強くなる夜には、それは活動的に動き回るんだよ。まあ、私や御隠居さん位になれば昼間も平気だけど。」


ツッコミ「ああ、もう…キョンシーから離れてって!」


ボケ「キョンシーの私とコンビを組んでいる以上、それは無理な相談だよ。」


ツッコミ「それもそっか。ところで、さっきは台湾に伝わる学校の怪談を教えてくれたけど、他にはないの?」


ボケ「あるよ、蒲生さん!私が知っている飛び切り怖いのは、やっぱり我が子を探すキョンシー夫婦の話だね。」


ツッコミ「キョンシーの貴女がキョンシーを怖がってどうすんのよ?」


ボケ「その理屈なら、生きている人間はサイコホラー物を怖がっちゃいけない事になるよ。ああいうのは『生きている人間が一番怖い』ってのが定番じゃない。」


ツッコミ「そう言われたら反論出来ないなぁ…取り敢えず聞かせてよ。」


ボケ「行方不明になった我が子を探して、キョンシーの夫婦が香港から台湾に渡ってきたんだ。それで日が暮れても家に帰らず遊び歩いている子供がいると、我が子と間違えて捕まえちゃうの。」


ツッコミ「捕まった子供は人間でしょ?キョンシー夫婦の子供じゃないじゃん。」


ボケ「そうなの。それで自分の子供じゃないと分かると食べちゃうんだ。だから子供の頃は、『キョンシーに食べられたくなければ、小学校が終わったら早く帰りなさい』ってお祖父ちゃんやお祖母ちゃんに言われたっけなぁ。今じゃ私自身がキョンシーだけど。」


ツッコミ「成る程、要は『子供が夜遊びしないように』っていう躾だね。」


ボケ「だけど子供はずる賢くて屁理屈が上手いからね。クラスの男の子なんかは『それならキョンシー夫婦が来ても大丈夫なよう対策したら良いんだ』って具合に、道教の御札とか生の餅米とかを持ち歩くようになったんだよ。」


ツッコミ「その辺りの対策は口裂け女みたいだね。掌に『ポマード』って書いたり、ベッコウ飴を持ち歩いたり。」


ボケ「御札に『ポマード』って書いて見せても、効果はあるかな?」


ツッコミ「こらこら、額の御札をそんな事に使わないの!」


ボケ「しまった、繁体字で書いちゃった!流石に日本人の口裂け女は繁体字を読めないよね?」


ツッコミ「そんなの知らないよ!そもそも貴女、キョンシーなのに口裂け女が怖いの?」


ボケ「蒲生さんも人間の痴漢は怖いでしょ?それと同じだよ。」


ツッコミ「痴漢と一緒にしたら口裂け女が怒るよ!」


ボケ「怒らせたら襲撃されるかな?」


ツッコミ「そりゃもう、『私、奇麗?』って質問に『奇麗じゃない』って返されただけで襲い掛かるんだから。」


ボケ「怖っ!逃げなきゃならないじゃん!こうやって両手突き出してピョンピョンッと…」


ツッコミ「逃げても無駄だよ。口裂け女は百メートルを六秒で走れるんだ。」


ボケ「速っ!死後硬直していたら逃げられないじゃん!ピョンピョン跳ねていたら追い付かれちゃう。」


ツッコミ「それで捕まったら、鋏や包丁で斬り殺されちゃうんだ!」


ボケ「うわうわ…って、それなら良いや。沒問題メイウェンティーだね。」


ツッコミ「えっ、何それ?」


ボケ「要するに『問題ないから大丈夫』って事だよ。何しろ私達キョンシーの身体は硬化しているから、

刃物なんて効かないんだ。」


ツッコミ「そりゃ普通の刃物で倒せたら、道教の法術なんて要らないからね。」


ボケ「そもそも斬り殺そうにも、もう死んでるからね。口裂け女相手なら、私達キョンシーは実質無敵だよ。何しろ失う命が元から無いもんね!」


ツッコミ「そんな無敵の人みたいな事を言わなくても。」


ボケ「人じゃないって、私はキョンシーだよ!」


二人「どうもありがとう御座いました!」

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― 新着の感想 ―
 名古屋駅前にある、でっかいマネキン(?)のナナちゃん人形も、いろいろ着せ替えさせられてるから、イタズラと勘違いされて撤去されそう???  名古屋の待ち合わせスポットです。ハチ公前、みたいな。
またまた面白い漫才でした。 >折田先生像 度重なるイタズラで撤去されましたが、今年の入試でアニメキャラとなって復活したとか。 あはは……。 >二宮金次郎 万次郎まで登場するとは(笑) でも。 確かに…
今回もまた楽しい漫才でした! ボケからもツッコミからも情報満載ですね。 学校に色々と噂があるのは、古くから同じ場所にあるわりには、出入りする人がすぐ入れ替わるからなのかな、と思いました。 空っぽの台…
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