思いは永遠に
冬休みになり今日から1ヶ月と半月これから学校には行かなくていい。慧十とアタシはアタシのプライベートな別荘に向かっていた。海辺の別荘よりも規模は小さいがアタシにとっては充実した造りになっている別荘だ。それにそこは実は慧十との思い出の場所でもある。アタシのプライベートだから家族や使用人さん以外はここに人が来ることは滅多にないし事実、アタシもここ三年は来ていないためかなり久しぶりな感じがする。
「クスクス……。慧十はさアタシと再開してから何ヶ月経ったか覚えてる?」
「4月4日。俺の誕生日から8ヶ月ってとこか?」
「そうそう。思えばいろいろあったよね。最初はなんて几帳面なヤツだ……って思ったけど今はその人が一番大事な人……。あんまり深い意味は無いけどさ、アタシも慧十と一緒に隣で戦ってたいってことは覚えててね?」
「あぁ、無事でいてくれれば何をしたって守ってやるよ。まぁ、聖が雲英と暴走した時は完全に騙されたけどな。守ろうとしてた相手が逃げるってけっこう切ないもんだぜ?探しても探してもいないからかなり混乱したんだぞ……。まったく……」
「エヘヘ……。アタシ、そういうときだけ悪知恵働くんだよねぇ。でも、なんで車に引かれたの?そんなに焦ってたの?」
「言っておくがさっきのは誉めてないぞ?事故の原因は相手が無灯火だったからで、けして俺が飛び出した訳ではないぞ」
そこで会話が途切れアタシはバイクを運転している慧十にもたれかかった。山路は起伏や傾斜が激しくアタシは車で登るのは好きではない。バイクなら慧十にいつも乗せてもらっているからあまり体に負荷がかからないので気分もいい。山の途中のに町よって休憩がてらに昼食を取り、その後も同じペースで山を登っていく。
「そこを右側に入るとすぐだよ。この辺りはお父さんの第2の故郷だからほとんどの土地が清名家の土地らしいよ?」
「おぉ……。経緯は知らないがやっぱり長い歴史と友好関係があると違うよな。これだけ沢山の土地がか……」
「多分違うよ……。お父さんが言うには綺麗な土地が寂れるのがいやらいの。それに関連して過疎化を防ぐためなんだって。仕事が有れば若い人はおのずと残るし。それにお父さんもアタシもここが好きだから来れる時は来ることにしてるの皆が頑張ってるのを見にね」
「そういえば今思い出した。俺達の荷物が異様に少なくていいのか?」
「うん、お父さんにお願いしといたから。使用人さん達が運び込んで今頃は部屋の模様替えをしてくれてるかな?」
別荘の門をくぐり慧十がバイクを車庫に入れる前にアタシはバイクを降りて山の上に向かう歩道を指差し先に歩いて行く。慧十はアタシの別荘の車庫にバイクをおさめてすぐに追いついて来きた。歩道は整備されていてよく見ると周りには沢山の人が草刈りやゴミ拾いをしている姿がある。それはお年よりや中年層、主婦の方々だけではなくアタシ達くらいの年齢の人達も作業着姿で多く見受けられる。その中の数人がアタシ達に気付いたらしくこちらに手を振っている。
「この下の街の人達なの。お父さんが大好きな町だからって自治会に席を置いててね。その提案の一つにこの町を綺麗にしようって言うのがあってさ。皆で手入れしてくれてるんだよ。凄いよねぇ」
「あぁ、だけど……さっきから皆さんの目は地面のゴミじゃなくて全部俺達の方を見てるが?」
「それはアタシが清名財閥の令嬢で慧十が緋皇財閥の現社長だからだと思うけど……。あ、そろそろ頂上だよ!早く早く!」
よく晴れた天候の中で下には街が数箇所あるのが見える。ここの地名は“クモの寝城”といわれ綺麗に区画された街が山を中心に八角形に並んでいるのが一部からでもよくわかる。そんな町の発展の度合いは人々の活気でわかるらしい。噂が立つのが早ければ早いほど町の人々の社会性が強く交流も深いと慧十がアタシに囁くようにして教えてくれた。
「聞こえた?今、お嬢様が言ってたこと……」
「うん!バッチリね。彼のことはどっかで見たことあると思ってたけどまさか緋皇財閥の緋皇 慧十社長って高校生だったなんてねぇ」
「びっくりだよねぇ。でもさ、そうするとけっこうお似合いじゃない?お嬢様は中学生ぐらいまでは男勝りでそういう空気はなかったけど今は……すごい色気だよねぇ。二年半でよくあれだけ成長したわね」
「確に。あれだったら普通の家柄ならどこの男子もほっとかないわよ」
最近は竹華の影響が更に増し慧十とイチャ付くのにも抵抗は全くなくなった。手を繋いだり腕をくんで歩くのにも慣れてきた。
「言われてるぞ?中学の時は男っ気も色気もなかったってさ」
「まぁ……。事実なかったけどね。慧十が最初で最後だと思うよ?色気は自分じゃわかんないよ」
「ハハハ。流石、聖だな。じゃぁ別荘に行ったら渡さなくちゃな」
「何を?」
「秘密」
「えぇ~~!」
慧十の趣味は独特であまり柄の入った服は好きではないようだ。大きなマークや単調な文字が入った物は着るが鮮やかな模様や派手な色の服、補色を使っている服などはアタシがいくら勧めても着ようともしない。
「実はねぇ……、アタシも有るんだぁ渡すもの」
「サイドに入れてあるアレか?」
「うん、今回は自信作だよ。なるべく慧十の趣向に合わせて作って見たし。プリント物も正装もね」
「服……ありがとな。俺も物だけ教えるよ、不公平になるしな」
「ヤリィ!で、なに?なに?」
「時計だよ。腕時計」
「うわぁ……。慧十ってそんなことも出来るの?」
「一応な」
頂上の少し平坦になった公園のような場所にある小屋で話をしていると小さな男の子が近くで泣いているのに慧十が気付いた。アタシにその話をし直ぐに周りを見回して探し始めた。
「泣き声?」
「あぁ、多分近くだと思うぞ。ん?雪か?」
「そうか……。この辺は豪雪地帯だから少しの雪でも皆警戒して直ぐに家に帰るのよ」
「なら、俺達もその子が居るのを早く探した方がいいな。何とかして見付けないとただでさえ寒い雪山だ……」
「探す必要はないみたいよ」
男の子がブランコの近くで泣いているのをアタシが既に見つけておりすぐになだめて泣き止ませた。
「僕?大丈夫?なんて名前なの?」
「お姉ちゃん……誰?」
「お姉ちゃんは聖って言うの。で、このお兄ちゃんが慧十っていうのよ。お母さんかお父さんは?」
「僕は鎧人。美紀姉と一緒に来てたのだけど途中ではぐれちゃって」
「わかった。お姉ちゃん達と来ない?これからどんどん寒くなるしもう日が沈むしね」
「うん……」
慧十は怖がられているらしくアタシが抱っこした状態で道を降りていく。確に慧十はハーフで日本人では一般的な黒髪ではなく白に近い銀髪に加えて白っぽい瞳なので何も知らない小さい子供には怖がられても仕方がないだろう……。彼は少しショックだったらしくうつむきかげんだがちゃんとアタシのすぐ後ろをついて来てくれている。
「よし、荷物も確に中にあるようだな。とりあえず飯にしよう」
「うん、賛成!サイドアタッシュからも取り出したしあとはこの子を預かっていることをどう町の人に伝えるかだね」
「それはぬかりない。俺のノートパソコンでこの町のホームページに書き込みをしておけばいいだろ?」
「あ!それ名案だよ!」
「それにこの町の人達はいい人ばかりみたいだしすぐに探しに来るよ」
アタシ達は直ぐに軍士、慧十の作戦を実行に移し街のホームページを検索書き込みをし直ぐにメールの受信画面に切り替えた。そのあとは慧十が鎧人君でも食べられそうなメニューを用意してくれた。オムレツなら小さな子供でも食べられるだろう。父親の性格は用意周到、完全確実だ。全てをぬかりなくやらなければ気が済まない完璧主義者だ。そのため慧十がこれまでアタシ達家族に振る舞ってくれた料理のレシピから必要なものは全て用意しているのだ。
「鎧人君、美味しい?」
「うん!とっても!」
果敢におおぶりなスプーンで掬い上げては口に運ぶ鎧人君を慧十は黙って眺めていた。慧十は意外と少食であまり沢山口にはしない。
「よかったね!慧十!」
「あぁ、喜んで貰えてなによりだよ。でも……」
鎧人君の皿の隅にはグリンピースの小山が出来ていた。確に苦手な人が多い緑の豆に鎧人君も苦戦しているようだ。
「鎧人君?……実はねぇ。お兄ちゃんもグリンピースが大っ嫌いだったんだ」
「え?ホントに?でも今は食べれてるよ……」
「お兄ちゃんが大きく成れたのはね。グリンピースとかピーマンとかのおかげなんだよピーマン嫌いでしょう?」
「うん」
「お肉は好き?」
「うん」
「お肉はね。野菜と一緒に食べると力を発揮してくれるんだよ。お肉だけ!魚だけ!少ないと思うけど野菜だけ!なんて人は大きくなれないんだ」
「ホントに?」
「あぁ、お兄ちゃんもお兄ちゃんのお母さんに教えてもらって食べれるようになったんだ。鎧人君も大きくなりたいよね?」
「うん。なりたい」
「なら、勇気を出して食べてみな?確にあんまり美味しくないけど体にはとてもいいから」
いつもとは別人のような慧十を頬杖を突きながら眺めていると玄関の呼び鈴が鳴った。アタシが玄関を開けると中学生くらいの女の子が息を切らしてアタシに鎧人君のことについて聞いてきた。
「鎧人がここにいるって本当ですか?」
「はい。美紀さんですか?」
「はい……。姉の荻原美紀です」
「寒いですし取りあえず中に入ってください。今、いい感じで鎧人君とアタシの連れが和んでるとこですから」
「は、はぁ……」
迷子の鎧人君事件はその日の夕方幕を閉じた。姉の美紀さんがホームページを見て雪の中ここまでたどり着き、鎧人君を引き取って帰って行った。アタシとしては慧十の別の顔が見れて少し満足した夜だった。その後もアタシと慧十のやり取りは続き12時を回った辺りで寝室で静かな夜を迎えた。
……………………
次の日
……………………
「慧十っ!慧十っ!起きて!早く!」
「んん?何だ?」
「外凄いよ!雪で一面真っ白!」
ジャージで寝るらしい慧十の腕を引っ張り窓辺に立った。辺りは一面の銀世界だ。傾斜も丁度よくリフトがないがスキーやスノーボードをするには持ってこいだった。
「一つ聞いていいか?」
「なに?」
「聖は滑れるのか?」
「無理だよ」
「…………」
「何よ……。その目は」
「いや、絶対滑れるようにしてやるよ……と思っただけだよ」
慧十のスパルタぶりはかなりの物だ勉強もその他の物も全てやるなら完璧にやらなくては意味がない。……と言うような感じで春から料理を教えてもらいかなり上達した。アタシとしてはもう少し優しさをもって教えてもらたいと思ってしまう。その時に玄関の呼び鈴がなり慧十がでて行った。
「はい……。お、鎧人君じゃないか、どうしたの?ぁあ、えぇと~~」
「昨日はありがとうございます。海外の両親も感謝の気持ちでいっぱいだそうで、お礼にうちのスキー場に来ていただけませんか?」
「あ、美紀さん。鎧人君も!今日はどうしたんですか?」
「美紀でいいですよ。昨日のお礼に私たちのスキー場に来ていただけませんか?」
「ちょうどいいから行こうぜ」
「え、うん。アタシホントに滑れないよ?」
二人の家は近くのスキー場らしい。昨日の騒動で両親にも連絡が回って騒ぎはかなり拡大したが街の掲示板に『男を預かっています。名前は鎧人君と言うそうです。保護者の方は明日か今日の十時頃まで清名家の別荘でお待ちしてます。音沙汰無い場合は公民館に届けます』という言葉が書き込まれていたことが電話で連絡として伝わり姉の美紀さんが無事に連れて帰ることが出来たようだ。一時、騒然とした迷子事件はそうして幕を閉じた。今は雪が降って路面が濡れているため車両での走行は危険だ。そこで街のいたるところを走る小さな列車のような荷物を移動させるための乗り物を利用して動いていく。速さは観覧車のゴンドラよりも少し速い程度だが元々は荷物用の運搬車なので馬力はある。アタシ達四人が乗ってもさほど変わらない速度でゆっくりと進んでいく。
「いい彼氏さんですね。清名さん」
「聖でいいよぉ。そうかなぁ?アタシにはよく意地悪するけどね」
「それも愛情表現の一つだと思いますよ?鎧人は人見知りが激しくてあまり人にはなれない性質なんですけど慧十さんには心を許せるようでああやって笑っています」
事実上、鎧人は慧十に遊んでもらい楽しそうに笑っている。慧十も優しい笑みを浮かべ相手をしている。幼稚園の年中らしい鎧人は姉と年が離れすぎていて相手をしてもらえていなかったのだろう。再び美紀ちゃんが口を開き質問を繰り返してくる。
「慧十さんと聖さんっていつ頃から付き合い始めたんてますか?」
「正しく言えばまだ付き合ってはないよ。慧十が目標を達成して余裕が出て来たらかな?」
「へ?てっきり付き合ってるとばかり……。じゃ……じゃぁ、アドバイスとか出来ますか?」
「う~ん……。慧十なら出来るかも知れないけどなぁ」
「何か解るきがします……。それ」
列車は二つの山の谷間に差し掛かりスキー場に着いた。そこには先客が一人滑っていた。途中でターンしこちらを見上げてくる。
「雪夫!連れてきたよ!」
「サ~ンキュ~!」
既にスキーウェアに着替えていた慧十がスノーボードで滑り始めたそして、下でスキーのストックを片手に持っている少年の目の前に止まった。
「初めまして……かな?だけどお互いのことはよく知ってるよな?柊 雪夫君」
「はい、折り入って話がしたくて。実はお願いしたいことがありまして」
「わかってるよ。好きな人についてだろ?」
「流石は慧十さん。お願いしたいことは美紀についてで相談したいことは家のことです」
慧十には雪夫という少年が相談しに行っているようだ。アタシのところでは美紀ちゃんがアタシにアドバイスを求めてくる。アタシとしては解りきったシチュエーションなので少し意地悪したくなる。
「慧十の方はどうだった?」
「そっちと同じさ。葛城 美紀、柊 雪夫か。葛城さんはこの近くの大地主。対する柊は…………。面白いな」
「は?何か知ってるの?」
昼間はスキー場で慧十に手を取られながら滑り続け美紀ちゃんの憧れの眼差しを背中に受け続けていた。夕方になり慧十が帰ろうというと。
「ご一緒していいですか?」
と逆に問われかなりビックリした。そこでアタシは慧十にも相談せずにいろいろと企てはじめ今、別荘の前にいる。
「入って」
「お邪魔します」
「お邪魔しますね」
「只今」
慧十がアタシが用意していた部屋に向かった時に。
「ごめん慧十!二人が来たからアタシの部屋に荷物を置いてくれない?」
「あぁ、問題ない。いつもの生活に戻るだけだしな。移動しとくよ」
慧十が一通り荷物をアタシが使っている部屋におくと何やら不振に思ったらしい二人の声が聞こえ階段を上って来る音が聞こえた。その雰囲気からして美紀ちゃんのようだ。アタシはとっさに慧十を引き寄せ身構え美紀ちゃんが上って来たであろう瞬間を見計らい慧十の首の後ろに手を回し顔を近づけキスをした。それを見てしまい後ずさって階段を急いで降りて行く美紀ちゃんは見れなかったが効果はあった気がする。少し荒い方法だがアタシも慧十に甘えたかったし、その後の変化やアタシのいじめ的な攻撃をまともに受けている正直な二人。特に美紀ちゃんは……。
「美紀ちゃん……。さっきアタシと慧十がキスしてたの見てたでしょ?」
「え、……えぇと、その、み、見てないですよ?。やだなぁ!」
「じゃ、もう少しいじめるかな?」
慧十はやっぱり料理が上手い。種類も様々、手早く、手際もいい。美紀ちゃんはアタシににこやかに見つめられずっと下を向いている。そして、とどめとは行かないだろうが食べ始める前に再び抱きつき二人の見えるところでキスをした。早くも慧十はことの主旨に気づいたらしく。アタシに同調してくれている。雪夫君はあまりわかっていないようで『派手だなぁ』というように少し顔を赤らめて見ている程度だ。アタシとしては美紀ちゃんに効果があればそれでいいのだ。
「オイシい!」
「ホントだ。慧十さん!勿体無いですよ。こんなにいい腕してるのにどこの店にも出入りしてないんでしょ?」
「あぁ、この際だから宣伝しとくが、俺はこの町から少し離れた街にあるnight-knightのオーナーだ。二人ともよければいつでも来てくれ。歓迎するよ」
その後もアタシの美紀ちゃんへの猛攻撃が続く。ついに美紀ちゃんと二人きりになるチャンスの風呂の時間帯になり慧十にそのことを告げこの別荘で一番金がかかっているらしい温泉の大浴場に二人で向かった。
「聖さん!絶対ちゃかして楽しんでるでしょう!」
「うん、美紀ちゃんが可愛くてつい……」
「やめてくださいよ。恥ずかしくて死にそうなんですから」
「それくらいがいいと思う……あんまり鈍いのもだめなのよ。これからする話は事実だし気をつけて欲しいことなの。だからといってあせっちゃダメより?アタシはそれで慧十に傷つけちゃったし」
「へ?」
今となっては懐かしい思い出だけど結局はアタシの暴走によって慧十が車にはねられてしまいけっこう大きな騒動となったあの事件だ。それを美紀ちゃんに話すと真剣に聞いてくれた。
「まぁ、そんなことも沢山あったのよ。だけど、今はもと通りだし一緒に手を繋げるくらい親密になったの。アタシが美紀ちゃんにアドバイスできることは『自分に正直になること』。でも!あせっちゃダメ。暴走すればいいことは一つもないからさ」
「は、はい!頑張ります」
「それからキスはアタシ達が図ったことだからあんまり人前ではしない方がいいと思うよ?」
「え……あ、はい」
その頃の慧十たちは。
「かたをつけるなら早めにつけた方が良いぜ?俺はこう見えてあんまり恋愛ごとは得意じゃないのさ。普通の事業を遂行したり第三者として関与するならまだいいが。恋愛ってのはマジでガラスみたいな物で手際よくかつ心配りをしながら磨けばキラキラ宝石みたいに光り出す。だけど力を入れすぎたり間を開けすぎると落としたり、傷をつけちまう。俺も一回落としかけてすんでのとこでなんとか止めた部類だからな。頑張れよ。もっとも、向こうのことを理解しよとするよりも感じ取る方がいいかもな?」
「ありがとうございます。聖さんとそんなことがあったんですか……。慧十さん必ず成功させます」
アタシ達が温泉から帰ってきて入れ替わりで慧十と雪夫君が向かった。四人揃って居間で少し談笑したあとアタシと慧十、美紀ちゃんと雪夫君の組み合わせで寝室に向かい就寝した。
「慧十は何を雪夫君に言ったの?」
あたしは慧十の腕を枕に抱きつくような形で寝ている。まだ目が冴えていて寝付けないアタシに慧十が答えてくれた。
「空気を読めって言っていたよ」
「フフフ。慧十らしい遠まわしな言い方ね。アタシもアタシが体験したことを教えてあげたわ。寝れないのはお互い様みたいね?」
「これだけ密着してるのは初めてだろ?まぁ、寝ようと思えば寝られるがそれで終わらせる気はないんだろ?」
「うん。アタシだってもう我慢する必要はないわけだしね。前みたいに誰かさんが一番重要なことを秘密にしてたせいでアタシがどれだけ気持ちを押し込めてたかわかる?」
「悪かったな。だけどな、俺もそうとう押し殺してたんだ。今からでも遅くないと思うが?お互いが同じ気持ちなんだから」
「うん」
その夜はアタシにとって忘れられない夜になった。慧十もそれは同じだと思う。冬休みの前半はお互いに思いを伝えて朗らかに話している二人を見ているとこちらも暖かくなる。二人はすぐに帰って行ったがアタシ達はその後数日間はアタシは美紀ちゃんにアドバイスしたことで少し自分のことにも目を向けることが出来有意義だったことには変わりないと思う。クリスマス数日前までにはアタシ達のアパートに帰りアタシは父親にある計画を話した。実は今、清名家は大きく揺れていた。その理由は大坂財閥だ。アタシにも大きな決断の時が迫っていた。